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「ユダの山羊」 ロバート・B・パーカー 菊池光訳 早川書房

2016-09-09 | 読書



スペンサーが本棚にいたので読んでみた。調べてみたら1978年刊行の5作目だった。

ストーリーは単純で分かりやすいが、なんと言っても会話の応酬が気が効いているうえに、今回も相棒のホークが参戦する。
この頑固で、出来る黒人はこのシリーズのハードボイルド部分の必須アイテムで頼りになる。しばらく読んでいて見つからないと頁をめくってみたくなる。

スペンサーは相変わらず
一一一 インド人の女が(…)私には目もくれなかった。この頃、女がますます私に関心を抱かなくなったのに、気がついた。女性の好みが、二枚目タイプから離れつつあるのかもしれない。一一一 
と本気か冗談かぬけぬけと思っている。しかしフェミニストだ、憎めない。

老富豪からの依頼が来る。イギリスで家族と食事中に、テロリストが投げた爆弾で下半身が動かなくなり、娘と妻は即死だった。そのテロリスト9人を探し出して欲しいと依頼される。調べつくして似顔絵もある。殺しても生かしていても報酬は一人2500ドル。いい話だ。

そこでイギリスに飛び、広告でおびき寄せ3人は射殺。リーダーが2人を殺し、女を残して逃げた。その女を囮にして、ホークと尾行を始め。本拠地のあるコペンハーゲンで2人を、リーダーを追ってアムステルダムからオリンピック開催中のモントリオールに異動する。

因みにモントリオールオリンピックは1976年の夏、その後この作品が書かれたのか。すでに40年前になる。

そして観客席や、通路を駆け巡って、ついにリーダーと対面。ホークと2人で格闘の上、おとりにされた女がライフルで撃った。

富豪というのはいい、経費におまけつきでポケットからぽんぽん封筒が出てくる。鶴の一声でオリンピック全日入場券が届く。満員の飛行機の搭乗券もファーストクラスで手配してくれる。

スペンサーとホークは命がけの分、経費はふんだんにある。

ホークは一件落着後、一日150ドルの契約分しかどう勧めても受け取らない。これが彼のポリシーで解決後はさっさと別れれていく。ただ囮で同行したリーダーの女に好かれて腕にぶら下げているが気にしていない。
ホークは 彼女を刑務所か病院に入れるべきだと思っているが、スペンサーは言う「彼女は<ユダの山羊>だったが、俺の<ユダの山羊>だった。それを、屠所へ送る気にはなれない、彼女は、お前さんと暮らせるかも知れんな」
何処までもスペンサーはスペンサーなのだ。

「きみたちは、立派な男だ。いかなる場合でもわしの助力が必要な時は、必ず力になる」と老人は行った。
こういうことも書ける人なのだな、パーカーは。

なんとも言えず愉快な話だった。でもこれはどう見ても男性読者向きに書かれたに違いない。
恋人のスーザンといい、囮の女性がスタイル抜群で美しいところといい。





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