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「ほかならぬ人へ」 白石一文 祥伝社

2014-12-09 | 読書

第142回直木賞受賞作


初めての作家だし、直木賞というので読んでみた。題名が優しそうで、内容も楽しみにしていた。
それが余り読まない恋愛小説の形で、マァそれでも構わなかったのだが。いささか深みのない小説だった。

「ほかならぬ人へ」

生まれも育ちも恵まれた明生が、「ほかならぬ一人の女性」を求める話で、自分は家族や係累の優秀さの中で、自分は生まれそこなった凡庸な人間だと思っている。それでもコネで、世間に知られた会社に入り、真面目に仕事に精を出している。
だが、初恋の相手には「普通の生活がいい」と言って振られ、次に美人だと評判のキャバクラ嬢と結婚する。だが明生の思いとは別に彼女は初恋の人のところに逃げてしまう。
結局、頼れる上司と一緒になるのだが、彼女も肺がんで逝ってしまう。
文章も明生の言葉にすれば相応の単純さだが、直木賞作家の作品なら、少し浅すぎる。
ぴったり来る相手と結婚したというのはよくわかるが、家庭を持ち生涯を共にするという展望はない。目先の出来事を安易に受け入れ、それに振り回される様子は、読み応えがない。仕事を通した出来事も、特に必要も感じられないくらい長く挿入されておるが、社会情勢に敏感な作者の関心のあるところを述べたのだろう。
えもいわれないいい香りがするという、年上の上司と落ち着くが、先立たれてしまう、このあたりでは明生は落ち着きが感じられていい。
残された明生の悲しみが素直に伝わってくる。
この年上の、上司がさっぱりとした人柄で仕事もでき、明生を引き立てている。


「かけがいいのない人へ」

主人公の「みはる」も裕福な家の出である、頭はいいが顔立ちは平凡なのだが、社内でも人気の男性と結婚の約束が出来ている。
しかし、野生的な上司と付き合っている。彼は「みはる」に結婚相手がいることを知っているが、リュック一つで転がり込んできたり、夜になってふいに部屋に来たりする。彼はバツイチで結婚の意志はない。
ただ仕事は出来る男で、社内の主流にいたが、引きであった役員の退職で、立場を考えなくてはならなくなっている。
ここでも社内の力関係などが挿入されている。業績が不振になり赤字に転した末、吸収合併という選択をしなくてはならなくなってしまっている会社の事情が、役員の異動や進退問題、それにつながる部下の行く末などページを割いている。
こういう、男女の微妙な関係や、結婚を控えた年頃の女性の気持ちを書くのなら、相手の男性の仕事には深入りしなくてもいいように思う。背景としてあっさり書き流して欲しい。
まして、結婚相手でない男性とのアダルトまがいの性描写は、繊細さを感じさせる題名には全くそぐわない。悪趣味に感じられた。


作者は書きたいことをまとめるのに苦労したのではないか、この題名に沿ったもう少し深い男女の心境を掘り下げ、何か別のものを作り出そうとしたのではないかという気もする。

先入観があったのもしれないが、、題名にふさわしくない、手ごたえのない作品だった。





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