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「代官山コールドケース」 佐々木譲 文藝春秋

2014-05-25 | 読書


「警官の血」が面白かったので、この本を読むのをとても楽しみにしていた。
予約が多くて長く待ったがやっと昨日順番がまわってきた。

 私の中で「コールドケース」と言う言葉が先行していたが、それは前に見ていたアメリカのドラマが面白かったので、勝手に作品のイメージをつくりあげていた部分もある。
あのドラマでは、未解決事件を再調査するちょっと変人の女性刑事とスタッフが面白かった。毎回同じパターンのシーンが繰り返されるが、今の事件を解決するために過去の迷宮入りの事件を再調査する、時間を遡った当時の事件が起きたシーンと、同じ人物が年を経て現れるシーンでは過去と現在の人物が重なる、若い頃ああだった人が年をとってこうなったのかと、楽しみだった。
勿論意外な犯人が見つかったり、隠された悲劇が露わになることもあって毎回が面白く、さすがにヒットメーカーのブラッカイマー監督だと得心した。

 さて、日本版「代官山コールドケース」はあのドラマと比べても仕方が無い。映像の力というものがあるし、読書は読み手の理解力や想像力にかかる部分もある。

そんなことを思うとなんにも言えなくなるのでちょっと棚にあげて(笑)

17年前、代官山で若い女性が殺された。女性と付き合いがあったカメラマンを取り調べたが容疑は確証がなく一旦帰宅させた後、自殺されてしまった。 
容疑は濃厚と見られていたので、被疑者死亡で不起訴になり事件は一応解決していた。

川崎で一人暮らしの若い女性が殺されて、17年前の事件と重なる遺留品が見つかった。

連続殺人だとすると前の事件は勇み足ではなかったか。間違えば大きな不祥事になる。そこで隠密に特別捜査を受け持つ警視庁特命捜査対策室に、水戸部と朝香が任命される。出来る若手の水戸部と少し年上のこれもできる女性とのコンビが再調査を始める。

川崎の事件を調べる神奈川県警には、17年前の事件で捜査に当たった時田警部補がいた。かれも当時の捜査結果に満足していながった。
だが、お互いに所轄が違い表立って情報交換ができない立場にある。

神奈川署が先に解決してしまえば、17年前の事件は、遺族補償の問題まで発生する。十七年前は、あのオウム真理教の事件、国松長官の狙撃のあとだった。捜査員は大きな渦に巻き込まれていて人手もなかった、と言うのも今では言い訳になるほど時がたっている。

しかし、現代になって優秀な科捜研は、見つかった遺留品を当時より数倍も進んだ技術で解明している。

当時の代官山は、不動産の狙い目で、小さな木造アパートの並ぶ地区は出来るだけ早く整理され、現在の形に向けて早いスピードで大きく変貌していく過渡期だった。今では様変わりしてしまって、当時の様子は地図がたよりだ、しかし当時事件の関係者が溜まり場にしていたカフェバーは残っていた。

旧地図をコツコツ調べ、確実に真相に近づいていく。代官山事件捜査組。
また今の事件を捜査する、神奈川県警の進展の様子、時田の捜査状況が、交互に書かれて緊張感がある。

殺された女性たちと関わった男をDNA鑑定にかけてふるい落として行く、これも骨が折れるが、容疑者も確定し、再訊問で17年前の事件に近づいていく。
前の事件の被害者、夢破れた地方出身者、それにつけこんだ容疑者たち。

駒は揃っているが、容疑者の背景は事件以外は語られない。妻の存在や、仕事場位で背景はあまり必要ではなかったのか。
容疑者達は見るからになにか後ろ暗い。女性に持てる医師達は、軽い遊び用で女を手に入れ、深入りはしない割り切った付き合いだと言い切る。


代官山の犯人と、川崎に残っている手がかりの慰留物とはどうつながるのか。
聞き込みと、時田の記憶、警視庁の威信を任された優秀なコンビがPCを駆使し、関係資料を読みこなし、手がかりに沿って歩いて調べを入れる、さすがに優秀で抜擢されただけはある。

縺れた紐がほどかれる楽しみはあったが、縺れ方も緩く、期待したような盛り上がりもなかった。
時間の経過が17年、極端に深い心理描写などを省いた、ダイジェスト版に近い印象を受けた。


ハードカバーでページ数にしては重い、定価は税抜きで1850円 紙質が厚いためか、上質製本だからか分厚すぎる。少し待ってもやはり図書館で借りる。
珍しく机の前に座って読んだ。
少し期待はずれ。

予約数が多いので早く返すように言われた。出掛けるついでに持っていく。


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