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「水滸伝 一 曙光の章」 北方謙三 集英社文庫

2012-10-15 | 読書




各所に暮らしていた豪傑やさまざまな天才たちが集って体制に反旗を翻す、王国を建てる、仇を討つというような物語が好きで、類するものを読んだり映像で見たりしてきた。
「南総里見八犬伝」もそうで、考えてみれば、仲間が増えてくる経緯や、それぞれの個性や育ってきた歴史が、ひとつの物語に縄を綯うように、カラフルな紐を組むように次第に太く強くなっていく構造が楽しめるということでもある。

赤穂の浪士がそれぞれ辛苦の中で流浪していても、行き着く先がすでに決まっていても、毎年同じ様なドラマになっても飽きないように、この種の物語は、サイドストーリーを含めて楽しむことが出来る。

この本を読んでみようとした切っ掛けは
最近のドラマで「孫子の兵法」「孔子」「三国志」を続けて見たからで、特に三国志は膨大な予算のせいか見ごたえがあり、孔明が消える「五丈原」で終わらず「司馬懿」に政権が移るところまで見せてくれた。次々に英雄が病に伏し、ついに老いて亡くなっていく、どの国でも、誰にしても人間として生まれれば、時には勝てない現実が、自ら進んでであっても、闘いに明け暮れることよりも、さらに残酷に思える。

アニメの「銀河英雄伝説」が面白かったのと同じように、金庸の「射雕英雄伝」など、中国、香港映画なども娯楽を求めて、見る機会があった、かって小学生の頃、少年少女向けの小説で読んだ「水滸伝」を、気の向くままに北方さんのもので読んでみようかなと思った。ほかに気になる本もあって何冊も併読しているので、やっと「一」が終わった。



【前巻までの梗概】より

中国,北宋末期。腐敗混濁の世を糺すために、済州鄆城県の役人・宋江は檄文を書き、同志を募る。その檄文を持って、花和尚・魯知深は全国を巡っていた。最初の同志は、禁軍の豹子頭・林冲、放浪する武松、青州の花栄、鄆城の雷横、江州の戴宗である。
 一方、済州東渓村の名主・晁蓋も呉用らと世直しを計り、兵を養うとともに、慮俊義に闇塩の道を作らせていた。蜂起の日のための財源である。
 禁軍の武術師範・王進は上司の高俅と衝突して、叛乱の嫌疑をかけられる。老母とともに開封府から逃亡した王進は、華州史家村にたどり着く。そこで、九紋竜・史進に武術を教えたあと、子午山に籠もって修行に励む。史進は少華山を拠点にして、朱武、陳達、楊春と官に反旗を翻した。
 林冲は、禁軍監視官の李富に疑われ、獄に落ちる。過酷な拷問にも沈黙を守り、滄州に流罪となった。妻が凌辱の末に縊死したと聞かされた 林冲は、絶望の底から這い上がり、医師の安道全、盗っ人の白勝らとともに滄州の牢獄を破り、柴進のもとに庇護される。
 梁山湖に浮かぶ山寨には、王倫を首領とする一団が籠って、官に反旗を翻している。
しかし王倫はすでに世直しの志を忘れ、ただの盗賊集団になり果てていた。宋江と晁蓋は、湖を見下ろす丘で出会い、血盟を誓った。そして、叛乱の拠点として、山寨を奪うことを決める。--。


全国を行脚して同志を募る魯知深でさえ信頼できる同志を見抜くには時間をかけている。心を許せる友人もおいそれとは出来ないものだ。
中でも王進が天才的に武術に長けた史進(九紋竜)を鍛え、恵まれた才だけでなく、傲慢な史進に武術の真の意味を教えるところがいい。その上、親に捨てられ野人のように育った男に、名(飽旭)を与え人間らしく育てて行く経緯もいい。
朱貴の抜けめのない商人振りや、青燕という蘆俊義の従者も得体が知れない、悪役の李富、大将の権限をふりかざす高俅らとどう関わり、梁山泊の集団がどのように形を成すのか、豪傑たちの動静を期待して、たのしみ。
 

 

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