個人の恥、家庭の恥、組織の恥、広く国家の恥。
他人の恥は知るほど面白く、家庭の恥は命がけで守ることもある。そしてつまるところ、とかくこの世は生き難い。
となるのかも知れない。
「銀行総務特命」これは銀行という組織の中で起きた不祥事を、外にいもれる前に調査しできるだけ内部処理で済ませよう、銀行の信用を守ろうということで設置された部署である。
総務特命調査の内容ごとに短編にして8編、どれも企業融資に絡めば、現実に起こりうるかもしれない、起きているかもしれない不祥事がテーマになっている。
「漏洩」
融資先の詳細が漏洩した。「評価」「格付け」などの重要事項が記載されている。それを、わずか500万円で買えといってきた男が居た、内部に共犯者が居るのか割り出せ。
「煉瓦のよう」
融資先の建設会社が、会社更生法の適用になるという、抵当は見合ったもので損失はないはずが、再建策が進んでない。使途不明金が10億ほど出てきた、この金はどこへ流れていったのか。ダミー会社も見えてきた。
「官能銀行」
女性行員がAVに出ている、これを足がかりに女優になるといっている。そんな恥さらしは誰だろう。銀行内部が揺れる。
「灰の数だけ」
支店長の妻子が誘拐された。恨みか。醜聞がもれる前に調査しなければならない、妻子は無事で居るのか。
「ストーカー」
女子行員がストーカーの被害者になった、犯人を捕まえたが、その後もその行員が自宅に持ち帰って処理していたパソコンのデータが見られていた気配がある。
「特命体特命」
総務部特命の指宿の調査にクレームがついた、人事部特命は、指宿を排除するために動く。
部下の唐木は短い上下関係に馴染みきれなかった。
人事部からきた彼女の葛藤も。
「延長稟議」
期限ぎりぎりで融資稟議を出した行員はジリジリしながら待っている。決済が長引いている。決済が承認される時間が近づき、倒産を目の前にした社長と融資担当は。
「ペイオフの罠」
遺産と預金で暮らしている老女に、担当の銀行員の男は自行に預金の付け替えをさせた。ペイオフは知らされていなかったのか、1000万を超える金はどうなるのか、不安を感じた老女は、昔世話になった唐木に相談する。
どれも面白いテーマだが、銀行の内部を少し知っていればこのような暗部は当然、眼にし耳にし想像できる。
特命の仕事に新味はないものの、人間関係の面白さがある。
人間の持つ弱さや、社会情勢、金で動く組織での立場が欲望を呼ぶこともある。
昔の自分の仕事を思い出して少し重かった
読書
46作目 「銀行総務特命」★3