(怒涛の更新で失礼いたします。初めて映画を見たのが8月1日のくせになんで今になって…と思いますが、要は、今までに書き溜めていたものを放出しているということでしてね…。それだけ腹に貯めてるってことなんです。はい。)
映画「シン・ゴジラ」には古事記に纏わる様々な言葉が登場している…ということで、久しぶりにパラパラと古事記をめくってみました。
(読んだのは、むかしむかーしの学生時代以来のことでございます。そして好きなだけで詳しい訳ではありません。間違ってたらゴメンナサイm(_ _)m)
矢口蘭堂たち巨災対チームが血液凝固剤を用いてゴジラを凍結させるプランは「矢口プラン」と呼称されますが、実行に移す際の作戦名は「ヤシオリ作戦」と呼ばれ、凝固剤を投与する特殊建機小隊(特に高圧ポンプ車)は「アメノハバキリ」と呼ばれます。
既に多くの方々が指摘されている通り、ヤシオリやアメノハバキリの出典は古事記の須佐之男命(スサノオノミコト)による八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の退治の章です。
須佐之男命が八岐大蛇の退治する際に使用した八塩折の酒(ヤシオリの酒)がその由来であり、八岐大蛇を退治した刀である天羽々斬(アマノハバキリ)がその由来である…ということで、原文ではどんな感じだったかなとページを捲ってみた訳です。
それを読んで思った感想を自分のtwitterアカウントでツイートしたものを基に以下に再構成しました。
+++
天照大御神の弟という尊い身であるにも関わらず、自身の狼藉により高天原を追い出された須佐之男命は出雲の地にあって、ある老夫婦と娘に出合います。
彼らは悲しみに暮れて泣いていました。須佐之男命がその理由を尋ねると娘を八岐大蛇に捧げねばならないからだと答えます。
彼らにとっての脅威である八岐大蛇については、以下のように語られます。
「その目は赤かがちの如くして、身一つに八頭八尾あり。またその身に苔と檜すぎと生ひ、その長さは谷八谷峡八尾にわたりて、その腹を見れば、悉くに常に血爛れつ」
(その目は赤いホオズキのようで、一つの胴体に八つの頭と尾をもっている。また、その身には苔と檜と杉が生え、長さは幾つもの谷や峰にわたるほど長い。その腹は常に血が流れ出して爛れている。)
「」内:岩波文庫「古事記」より一部抜粋
()内:ガバ鳥的てきとー現代語訳
興味深いのは、彼らが語った八岐大蛇の形です。8つに分かれた大蛇であることは記憶にあったのですが、さらに「その腹を見れば、悉くに常に血爛れつ(その腹は常に血が流れ出して爛れている)」状態であるとは古事記を今回の件で見返すまで知りませんでした。
常に腹が血に爛れている…という表記で思い出すのは、ゴジラ第二形態(いわゆる蒲田くん)の歩いている様子です。
鰓らしき所から血液を大量に流出させながら蒲田駅前の通りを行進をしていた、あの場面です。
これを見て、あれ、、、もしかしてゴジラってやっぱり八岐大蛇なのかしら、と益々思うわけです。
周知のように、ゴジラの画面1つ1つには沢山の情報(もとい、ネタバレ案件)が詰まっています。矢口の副長官執務室にあった鉄道模型や、検察庁長官の執務室に飾ってあった書も、それに該当することでしょう。
とすると、蒲田くんのこの描写と矢口プランの内容(凝固剤の経口投与)を併せると、矢口たちが須佐之男命よろしく、神の化身であるゴジラに対応しようとしていたことが浮かんでくるのかなと。
さて、古事記の話に戻ります。
八岐大蛇の話を聞いた須佐之男命は大蛇の退治を請け負います。その際に老夫婦に用意するように命じるのが八塩折の酒という訳です。
「汝らは、八塩折の酒を醸み、また垣を作り廻し、その垣に八門を作り…(略)」
(あなた方は八塩折の酒を準備し、垣をつくり、垣には8つの門を作り…)
「」内:岩波文庫「古事記」より一部抜粋
()内:ガバ鳥的てきとー現代語訳
面白いのは、八岐大蛇を酔わせた八塩折の酒が、8回醸造されたとても強いお酒(アルコール分が高い酒)という点です。
地上に住むものの手により手間をかけて作られたお酒を大蛇に飲ませ、脅威であった大蛇を酔わせてついには退治してしまうのには、凝固剤の精製過程と重なり、「ああー..。」と声を出してしまう所です。
また、それを実行したのが、高天原から追い出されてきた天照大御神の弟である須佐之男命という所も、3世議員であり若き官房副長官である「やんちゃ・世渡りが下手」な矢口や個性豊かな巨災対メンバー(霞が関のはぐれ者、一匹狼、厄介者、オタク等:ただし、難関の公務員第1種試験を突破したエリート官僚)が想起されます。
さて、八塩折の酒で酔った八岐大蛇を帯びていた十拳剣(とつかつるぎ;元は伊佐那岐命が帯剣しており、息子である火之神・香具土を斬った刀である)で斬った須佐之男命は、八岐大蛇の蛇身からひとふりの刀を見つけます。須佐之男命はこの刀、臭蛇太刀(くさなぎのつるぎ;臭い蛇の剣の意。蛇=なぎ)とし、姉である天照大御神に献上します。
この刀が後に草薙剣(くさなぎのつるぎ)と呼ばれ、今に至る皇室の3種の神器の1つとなる訳です(現在、熱田神宮に奉られている)。
ゴジラが人類の脅威でもあると同時に人類に希望をもたらす福音でもある、と言ったのは映画の主人公である矢口蘭堂ですが、まさに、古事記にあっても同様に、脅威であった大蛇から宝を得ることが出来たというわけです。
ちなみに、十拳剣は大蛇を斬った刀ということで、後に天羽々斬(アメノハバキリ)と呼ばれます。羽々というのは、大蛇を意味する言葉だそうです(現在、石上神宮に奉られている)。
ということは、アメノハバキリ01と言われた特殊建機第一小隊(高圧ポンプ車群)は正しく八岐大蛇に挑む十拳剣/天羽々斬であるといえるのでしょう。
さて、見事に大蛇を退治した須佐之男命は、老夫婦の娘である櫛名田比媛(くしなだひめ)と結婚します。この時に彼は宮殿を築き、有名な八雲立つから始まる有名な詩をうたいます。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣をぞ。」
(幾重にも雲が立ち上る、その名も出雲の国に、八重の玉垣のような垣を私の妻のいる新居の周りに作っている。雲は立ち、八重にも幾重にも垣をつくっている。)
「」内:岩波文庫「古事記」より一部抜粋
()内:ガバ鳥的てきとー現代語訳
この歌は、もともと須佐之男命が妻との新婚生活を送るための館を建てる時の歌なのですが、一説によると、須佐之男命による出雲の国の統治宣言でもあるということで、赤坂秀樹官房長官(臨時)と矢口蘭堂がヤシオリ策戦後の練馬駐屯地で話し合った内容がスルッと思い出されるわけです。
赤坂「せっかく崩壊した首都と政府だ。まともに機能する形に創り変える。」
日本が民主主義国家である以上、赤坂が日本を統治する訳でもありませんし、古事記で語られる国の統治と日本の統治とが直接結びつけられる訳でもありません。
ただ、赤坂が国を一から建て直すべく議員(閣僚)の立場から奮闘するのだろうな、というのが想起されるのです(この時に、もちろん矢口も共に道を同じくすることでしょう。両輪のように。)。
また、赤坂はこうも言います。
「スクラップ&ビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる。」
これセリフも含めて考えると、矢口や巨災対のメンバー、そして赤坂や泉たち、協力した民間会社職員などを含んだ多くの日本人は、須佐之男命よろしく、八岐大蛇であるゴジラに立ち向かい、草薙の剣のような福音(新元素)を得て、八重の垣根に囲まれた宮のように強固な国を作っていくのだろうな…と思う訳なのです。
Ref.
1)古事記(倉野憲司 校注、岩波文庫)
2)新潮日本古典集成 古事記(西宮一民 校注、新潮社)
3)日本国民文学全集 第1巻 古事記(訳者 福永武彦、河出書房)
4)古事記を旅する(三浦佑之、文芸春秋)
映画「シン・ゴジラ」には古事記に纏わる様々な言葉が登場している…ということで、久しぶりにパラパラと古事記をめくってみました。
(読んだのは、むかしむかーしの学生時代以来のことでございます。そして好きなだけで詳しい訳ではありません。間違ってたらゴメンナサイm(_ _)m)
矢口蘭堂たち巨災対チームが血液凝固剤を用いてゴジラを凍結させるプランは「矢口プラン」と呼称されますが、実行に移す際の作戦名は「ヤシオリ作戦」と呼ばれ、凝固剤を投与する特殊建機小隊(特に高圧ポンプ車)は「アメノハバキリ」と呼ばれます。
既に多くの方々が指摘されている通り、ヤシオリやアメノハバキリの出典は古事記の須佐之男命(スサノオノミコト)による八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の退治の章です。
須佐之男命が八岐大蛇の退治する際に使用した八塩折の酒(ヤシオリの酒)がその由来であり、八岐大蛇を退治した刀である天羽々斬(アマノハバキリ)がその由来である…ということで、原文ではどんな感じだったかなとページを捲ってみた訳です。
それを読んで思った感想を自分のtwitterアカウントでツイートしたものを基に以下に再構成しました。
+++
天照大御神の弟という尊い身であるにも関わらず、自身の狼藉により高天原を追い出された須佐之男命は出雲の地にあって、ある老夫婦と娘に出合います。
彼らは悲しみに暮れて泣いていました。須佐之男命がその理由を尋ねると娘を八岐大蛇に捧げねばならないからだと答えます。
彼らにとっての脅威である八岐大蛇については、以下のように語られます。
「その目は赤かがちの如くして、身一つに八頭八尾あり。またその身に苔と檜すぎと生ひ、その長さは谷八谷峡八尾にわたりて、その腹を見れば、悉くに常に血爛れつ」
(その目は赤いホオズキのようで、一つの胴体に八つの頭と尾をもっている。また、その身には苔と檜と杉が生え、長さは幾つもの谷や峰にわたるほど長い。その腹は常に血が流れ出して爛れている。)
「」内:岩波文庫「古事記」より一部抜粋
()内:ガバ鳥的てきとー現代語訳
興味深いのは、彼らが語った八岐大蛇の形です。8つに分かれた大蛇であることは記憶にあったのですが、さらに「その腹を見れば、悉くに常に血爛れつ(その腹は常に血が流れ出して爛れている)」状態であるとは古事記を今回の件で見返すまで知りませんでした。
常に腹が血に爛れている…という表記で思い出すのは、ゴジラ第二形態(いわゆる蒲田くん)の歩いている様子です。
鰓らしき所から血液を大量に流出させながら蒲田駅前の通りを行進をしていた、あの場面です。
これを見て、あれ、、、もしかしてゴジラってやっぱり八岐大蛇なのかしら、と益々思うわけです。
周知のように、ゴジラの画面1つ1つには沢山の情報(もとい、ネタバレ案件)が詰まっています。矢口の副長官執務室にあった鉄道模型や、検察庁長官の執務室に飾ってあった書も、それに該当することでしょう。
とすると、蒲田くんのこの描写と矢口プランの内容(凝固剤の経口投与)を併せると、矢口たちが須佐之男命よろしく、神の化身であるゴジラに対応しようとしていたことが浮かんでくるのかなと。
さて、古事記の話に戻ります。
八岐大蛇の話を聞いた須佐之男命は大蛇の退治を請け負います。その際に老夫婦に用意するように命じるのが八塩折の酒という訳です。
「汝らは、八塩折の酒を醸み、また垣を作り廻し、その垣に八門を作り…(略)」
(あなた方は八塩折の酒を準備し、垣をつくり、垣には8つの門を作り…)
「」内:岩波文庫「古事記」より一部抜粋
()内:ガバ鳥的てきとー現代語訳
面白いのは、八岐大蛇を酔わせた八塩折の酒が、8回醸造されたとても強いお酒(アルコール分が高い酒)という点です。
地上に住むものの手により手間をかけて作られたお酒を大蛇に飲ませ、脅威であった大蛇を酔わせてついには退治してしまうのには、凝固剤の精製過程と重なり、「ああー..。」と声を出してしまう所です。
また、それを実行したのが、高天原から追い出されてきた天照大御神の弟である須佐之男命という所も、3世議員であり若き官房副長官である「やんちゃ・世渡りが下手」な矢口や個性豊かな巨災対メンバー(霞が関のはぐれ者、一匹狼、厄介者、オタク等:ただし、難関の公務員第1種試験を突破したエリート官僚)が想起されます。
さて、八塩折の酒で酔った八岐大蛇を帯びていた十拳剣(とつかつるぎ;元は伊佐那岐命が帯剣しており、息子である火之神・香具土を斬った刀である)で斬った須佐之男命は、八岐大蛇の蛇身からひとふりの刀を見つけます。須佐之男命はこの刀、臭蛇太刀(くさなぎのつるぎ;臭い蛇の剣の意。蛇=なぎ)とし、姉である天照大御神に献上します。
この刀が後に草薙剣(くさなぎのつるぎ)と呼ばれ、今に至る皇室の3種の神器の1つとなる訳です(現在、熱田神宮に奉られている)。
ゴジラが人類の脅威でもあると同時に人類に希望をもたらす福音でもある、と言ったのは映画の主人公である矢口蘭堂ですが、まさに、古事記にあっても同様に、脅威であった大蛇から宝を得ることが出来たというわけです。
ちなみに、十拳剣は大蛇を斬った刀ということで、後に天羽々斬(アメノハバキリ)と呼ばれます。羽々というのは、大蛇を意味する言葉だそうです(現在、石上神宮に奉られている)。
ということは、アメノハバキリ01と言われた特殊建機第一小隊(高圧ポンプ車群)は正しく八岐大蛇に挑む十拳剣/天羽々斬であるといえるのでしょう。
さて、見事に大蛇を退治した須佐之男命は、老夫婦の娘である櫛名田比媛(くしなだひめ)と結婚します。この時に彼は宮殿を築き、有名な八雲立つから始まる有名な詩をうたいます。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣をぞ。」
(幾重にも雲が立ち上る、その名も出雲の国に、八重の玉垣のような垣を私の妻のいる新居の周りに作っている。雲は立ち、八重にも幾重にも垣をつくっている。)
「」内:岩波文庫「古事記」より一部抜粋
()内:ガバ鳥的てきとー現代語訳
この歌は、もともと須佐之男命が妻との新婚生活を送るための館を建てる時の歌なのですが、一説によると、須佐之男命による出雲の国の統治宣言でもあるということで、赤坂秀樹官房長官(臨時)と矢口蘭堂がヤシオリ策戦後の練馬駐屯地で話し合った内容がスルッと思い出されるわけです。
赤坂「せっかく崩壊した首都と政府だ。まともに機能する形に創り変える。」
日本が民主主義国家である以上、赤坂が日本を統治する訳でもありませんし、古事記で語られる国の統治と日本の統治とが直接結びつけられる訳でもありません。
ただ、赤坂が国を一から建て直すべく議員(閣僚)の立場から奮闘するのだろうな、というのが想起されるのです(この時に、もちろん矢口も共に道を同じくすることでしょう。両輪のように。)。
また、赤坂はこうも言います。
「スクラップ&ビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる。」
これセリフも含めて考えると、矢口や巨災対のメンバー、そして赤坂や泉たち、協力した民間会社職員などを含んだ多くの日本人は、須佐之男命よろしく、八岐大蛇であるゴジラに立ち向かい、草薙の剣のような福音(新元素)を得て、八重の垣根に囲まれた宮のように強固な国を作っていくのだろうな…と思う訳なのです。
Ref.
1)古事記(倉野憲司 校注、岩波文庫)
2)新潮日本古典集成 古事記(西宮一民 校注、新潮社)
3)日本国民文学全集 第1巻 古事記(訳者 福永武彦、河出書房)
4)古事記を旅する(三浦佑之、文芸春秋)