NH*のセミナーにて、ハゲタカが取り上げられたそうな。
鷲津の中の人や西野旅館の主の中の人やディレクター陣が揃ってそのセミナーに出演したんだって。
で、その話を聞いた瞬間に、ボワワワワーッとハゲタカ熱が再燃してしまい、うっかりまたDVDを再生してしまいました。
勿論、最後まで見れずに再生したまま就寝でございます。
(オイラの帰宅時間は毎夜3時くらいです。研究室所属の大学院生の毎日なんて、こんなもんよ。誰だよ、大学生が暇って行ってるヤツらって!!<怒)
ま、とにかくも、そのお陰で、またしても妄想産物がムラムラとよみがえってきたのでした・・・。
というわけで、今回は芝野さんの妄想をば。
EBO成立から社長就任後、くらいの心証を少し。
物語はどちらかというとメデタシメデタシ系で終わっていましたが、勿論、人間たちのストーリーはこれからも続いて行く訳でして。
EBO成立して社長になって忙しく働いて充実感を覚えていても。忘れられない、忘れちゃ行けないものがあることを、時折噛み締めているのではないかと思います。真面目で優しい人だから。
アウトサイダーの立場からインサイダーの立場になったことで、改めて自分のしてきたものが見えてきたこともあるんじゃないかと。残酷なまでにはっきりと。
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[ヒバリは唄う]
ヒヨヒヨと鳥の鳴く声がする。
軽やかな春の音に促されて芝野は書類から目を上げた。
時計を見やると、早くも12時を過ぎている。
彼は背伸びをして社長室を大股で出て行った。 歩いて行く時に肩をまわして、ゴキリという生々しい筋肉疲労の音が室内に響いたが、悲しい事にそれを不自然な音と咎めるべき若さは彼にはなかった。
芝野自身、まだまだ現役のサラリーマンではあるが、さすがに頭には白いものが混じり目尻にははっきりとした皺が刻まれていた。
芝野は苦笑しながらゆっくりとエレベーターに向かった。
従業員たちの様子を見に行くのだ。
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エレベーターのドアが開けた途端に、春の日差しが彼の眼にまぶしく刺さった。
盛夏の光の強さには負けるが春の光も中々に目に痛い。光を静止できずに目を眇めた彼に、作業着の従業員が気安く朝の挨拶を社長の芝野に声をかけてきた。
「芝野さん、おはようございます!」
「朝からご苦労様です。」
「ああ、おはようございます。」
「生産ラインの調子ははどうですかですか?」
「お蔭様で、順調です。」
芝野は従業員たちに、穏やかに律儀に、挨拶をそれぞれに返していく。彼が社長を勤めている会社はやや小さい。殆どの従業員たちの顔を、芝野は覚えるようにしていた。
従業員たちと言葉を交わした後に、再び社長室に戻り、芝野はロッカーのドアをおもむろに開けた。
ドアを引くとギギィと金属のこすれる音が起こる。 かつて勤めた銀行や役員待遇だった企業とは段違いの環境に内心苦笑しつつ、芝野はスーツを取り出し袖を通した。
間もなく取引先との会議が始まるのだ。身なりは整えなくてはならなかった。
サラリーマンになってから何回やったか解らないくらいの同じ動作を、芝野は無意識に繰り返し、ネクタイを締めた。
ロッカーに付いている鏡で軽く髪の毛を撫で付けると、芝野はテーブルの上に置いていた会議の資料に目を通し始めた。
アケボノにとって、ほぼ初めてとなる大口の取引先との会議である。
プレゼンテーションをする部長共々、穴のないように気を引き締めて情報を取得していなければならない。
ぱらり、ぱらり。
書類をめくる音だけが、社長室に響く。
ドラマティックな展開だったと、誰しもが賞賛しやっかみ敵対視し警戒するような、そんなEBOから何年かたっていた。当事者として協力者としてアケボノ立ち上げに関わった事はまだ記憶に新しい。
ハゲタカと罵られたかつての部下と会合して、そして自らアウトサイダーからインサイダーに転換させたあの出来事から、同じだけの年月が立っていた。
かつては首切りやと罵られた芝野が社長となったアケボノは今、工場には人が戻り、活気がそれを覆っている・・・。
風がソヨソヨと吹いて、木の葉がそれに舞う。耳に届いてくる従業員たちの笑い声に陽気な足音たち。
芝野は工場に起こる様々なものの響きに耳を澄まして眩しい青色の空に眼を眇めた。
そして自分は今、確かに此処で社長として生活をしていることを実感した。それは今までのとはまた異なった充実した生の実感を感じるのだった。
・・・ヒヨヒヨと雲雀の声が響いた。
唐突に、芝野は自分の愚かしさを思った。今自分が考えていることは所詮自己満足でしかなかった。 そんなことは十分に分かっているはずなのに、自分はそれに身をゆだねていた。
ここは大空電機から独立した会社であり、そしてフェニックス計画からまだ数年しかたっていない。 首切りの臭いがまだ消えていないのだ。リストラで職やポジションを失ったのだろう元部長や元秘書たちの姿は至る所に溢れていた。
それなのに、それを引き起こした一因である芝野自身は溢れ出てくる彼らに対して無力だった。
そして自分はその矛盾やエゴを忘れるために、昨日も今日もこれからも、全身全霊で会社を切り盛りしていくのだろうと思った。
ヒヨヒヨ、ヒヨヒヨ
外では相変わらず雲雀が何も知らずに歌っていた。
「社長、そろそろお時間です。取引先の方が玄関に到着されたとの連絡がありました・・・。」
End
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なーんちゃって。