鳥の巣頭の世迷い言

読書音楽観劇、ハゲタカ廃人、そしてアラシックライフをエンジョイしている三十路のお気楽会社員・ガバ鳥のblog

NTL マクベスの鑑賞記録

2019年03月13日 21時02分48秒 | 舞台・コンサート感想
さる2月21日、NTL(National theater live)「マクベス」を観てきました。
NTLはいわゆる映画館で観るお芝居なんですが(ゲキ×シネ的な)、都内勤務都内在住の利点を最大限に生かし、仕事終わりにピョピョイと日比谷TOHOへ足を伸ばして観てまいりました。

マクベスはご存じの通り、シェイクスピアが原作のお芝居になるのですが、今回のお芝居では1600年代のコスチュームではなく、荒廃した近未来的な(北斗の拳とかマッドマックスみたいな空気)ものでした。舞台装置も同様です。とはいえ、舞台がスコットランドであることは間違いないのですが。
ベン・ウィショーさんが出演していた「ジュリアス・シーザー」もそうですが、むしろ1600年代のコスチューム+セットで芝居をする方がもう珍しくなってるのかな?

そんな世紀末的な世界で、ロリー・キニア演じるマクベスが登場し、いきなりの戦闘シーンへ。誰かと斬り合い、勝利して首を取るという勇ましいマクベス将軍。
そのマクベスが「マクベスは王になる」という魔女の予言と妻の扇動により主君であるダンカン王を殺害し、自身が王となるのですが。
魔女の予言も成就し、めでたしめでたし…とはならない。
猜疑心にかられたマクベスは、同じく魔女に「子孫が王となる」と予言された僚友のバンクォーを殺害し、その後も次々と有力者やその家族を手にかけていく…という悲劇。

マクベスが疑心暗鬼になって亡霊を見て狼狽える様、あるいは、マクベスの妻が良心の呵責にさいなまれて城内をさまよい歩く様(夢遊病のようになっている)に同情しながらも、「なんだよ、気張れよ!イングランドを見ろ!」と勝手に憤慨もしたり。
魔女の予言に縋り、また魔女に予言を聞きにいったりして「女から生まれた者にはマクベスを倒せない」という新たな予言を得て安心をしてみたりする姿には涙がさそわれるというか。
敵に取り囲まれたマクベスは城から打って出ますが、遂にはマクダフに打ち取られる訳です。
「女から生まれた者にはマクベスは倒せない=不死身だ」と彼が思っていた予言が打ち砕かれてショックを受けている様もまた良かった。
←彼の予言に対する解釈が間違っていたというのが適切?マクベスを討ち取ったのは帝王切開によって生まれたマクダフ。決して不死身ということではなかった。

そしてまあ、キニアさん演じるマクベスの死体がまた良くて。遂には討ち取られたり!という感じなんですが、妙に哀愁が漂ってるんですよね。「ざまあみろ!」という感情よりも、「ああ、討たれてしまったのか」という感じで。

台詞もいちいちカッコ良かったな。マクベスの「人生はしょせん歩く影、憐れな役者..」というセリフなんて、手帳に思わずメモをしておきたいくらい。
今回はNTLのマクベスを観ましたが、他の人が演じたり演出したマクベスも観てみたいなと思いました。
やっぱ凄いねシェイクスピアということで。

そういえば、ふと思い出していたのですが。
マクベスは実在のスコットランド王マクベスをモデルに作られたんですねえ。
戯曲では魔女の予言と野心家の妻の唆しによってスコットランド王を殺し、自分が王になったマクベスですが、後に友人のバンクォーを殺害してます。そして実在のバンクォーも、マクベスに殺害されています。バンクォーの息子もまた殺害されるのですが、孫ウォルターは後にスコットランド王室の娘と結婚し、その息子がスコットランド王ロバート2世となって、これがステュアート朝の始まりとなわけで。
戯曲のマクベスはバンクォーの亡霊と8人の王の幻を見るが、実際にステュアート朝は8人の王を輩出。
イングランド女王エリザベス一世と争うメアリー女王(メアリー・ステュアート)や、エリザベス一世の後に英国王としても即位したスコットランド王ジェームズ六世(スコットランド王としては6世、イングランド王としては1世)、ステュアート朝最後の君主となったアン女王もここから。
3月公開映画の「ふたりの女王」や、今公開されている「女王陛下のお気に入り」は、このステュアート王朝のお話であり、ものすごく歴史や文化の繫がりを感じるなあ、と1人で感動をしておりました。
そういえば、「女王陛下のお気に入り」に登場するサラ(マールバラ公爵夫人)、ウィンストン・チャーチルのご先祖だったんですね。チャーチルが生まれたブレナム宮殿はアン女王から下賜されたもの。しかも、分家のスペンサー伯爵は後にダイアナ妃を輩出して現在へと続いている。

歴史は過去から今へ、縦横斜めでつながってるんやなあ、と妙に感動した次第。

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