2021年4月18日 (日)
「二階から毒薬」は五輪赤信号を示唆
4月16日、米国ワシントンで日米首脳会談が行われた。
会談後、日米首脳の共同記者会見が開かれた。
懸案の東京五輪について日米共同声明には
「バイデン大統領は、今夏、安心・安全な大会を開催するための菅総理の努力を支持する」
と表現された。
事前報道では、菅首相が東京五輪にバイデン米大統領を招聘する方針が伝えられていた。
バイデン大統領が東京五輪開会式に参加することは、バイデン大統領が東京五輪開催を前提に行動することを意味する。
バイデン大統領は東京五輪について「科学的に判断」することを明言しており、「科学的に」東京五輪開催の正当性が判断されるのかどうかが注目されてきた。
日米共同声明の表現は、バイデン大統領が東京五輪開催を「科学的に」正当化できない現状を明示するものになった。
菅首相は共同記者会見で
「世界の団結の象徴として、大会の開催を実現する決意であることを大統領に伝えた。
大統領からは、この決意に対する支持を改めて表明してもらった」
と表現した。
菅首相が述べてきた
「人類がコロナに勝った証としての東京五輪」
の言葉は消えた。
バイデン大統領は
「東京五輪開催を支持する」
と述べない。
菅首相の「東京五輪を実現するための努力」を支持しているだけ。
その東京五輪開催の環境が日増しに悪化している。
日本におけるワクチン接種も五輪開催までにはほとんど進展しない。
感染そのものは第4波に移行しており、週明けにも「緊急事態宣言」発出が具体的に検討される。
大阪府で感染爆発が観察されているが、感染急増をもたらしているのがN501Y型の変異株。
N501Y型ウイルスが東日本でも感染の中心に置き換わりつつある。
東京都の新規陽性者数は1000人に到達していないが、今後、感染の中心がN501Y型になれば、1000人を突破してくると考えられる。
ゴルフの国内トーナメント初戦では韓国から来日した選手が2週間の隔離措置のあと、感染が確認された。
「隔離措置」が取られていたにもかかわらず、国内で感染したと考えられる。
五輪を安全・安心に開催することが不可能である一つの重大な証左である。
バイデン大統領と菅首相による共同記者会見でロイター社の記者が、コロナ感染が拡大するなかでの東京五輪開催について、
「公衆衛生の専門家から開催の準備ができていないという指摘がある。
無責任ではないか」
と質問した。
ところが、菅首相はこの質問を無視した。
さらに、日本側の共同通信記者から、五輪について大統領から具体的にどのような支持が得られたのかの質問があったが、菅首相は
「改めてご支持いただいた」
とだけ述べた。
記者会見で記者の質問に対して明確な回答を示せない。
日本国内での記者会見では事前に記者から質問を提出させ、官僚が回答を準備して、首相はその回答を朗読するだけ。
しかし、米国での共同記者会見では「学芸会方式」を活用できない。
その結果、このようなお粗末会見になる。
バイデン大統領は東京五輪について、極めて厳しい判断をしていると考えられる。
菅首相の訪米前に自民党の二階俊博幹事長が
「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなきゃいけない」
と発言した背景に、東京五輪に対する米国の極めて厳しい対応があったと考えられる。
五輪中止が具体的に検討され始めたと判断できる。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます