セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「泥棒成金」

2015-05-06 23:38:30 | 外国映画
 「泥棒成金」(「To Catch a Thief」、1955年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   脚色 ジョン・マイケル・ヘイズ
   原作 デイヴィッド・ドッジ
   撮影 ロバート・バークス
   音楽 リン・マレー
   衣装 イーディス・ヘッド
   出演 ケーリー・グラント
       グレース・ケリー
       ジョン・ウィリアムス
       ジェシー・ロイス・ランディス
       ブリジット・オーベエル

 引退した宝石泥棒ジョン・ロビー。しかし、彼と同じ手口の新手が現れ、警
察に追われるハメに。
 自らの潔白を証明する為、保険調査員の助けを借り、ターゲットになりそ
うな資産家夫人に近づく・・・。

 この作品、最初の30分位は、つまらなくは無いけど、正直それ程、面白
くもない。
 それが30分過ぎて、資産家夫人の娘としてG・ケリーが登場した途端、パ
ッと画面が華やかになり話が面白くなる。
 彼女がスクリーンに登場し、C・グラントと顔を合わせ、母親らと共に食事
をする。何でもない、たったそれだけの事なのに、スクリーンが一気に「映画
という夢の世界」に一変する。
 映画スターとは正にこの事で、久々に「映画スター」或いは「大スター」とい
う言葉を実感しました。

 話自体は、それ程緻密に出来ていないというか、あくまで二人のスターを
魅せる為に大きな破綻さえ無ければいいという感じ。
 フランス警察は、あの頃のハリウッドがステロタイプで描くおマヌケで、賊
が屋根から侵入するのを知っていながら屋根に警官を配置しない大らかさ。
 でも、そんな事はどうでもいいんです。
 ヒッチコックがG・ケリーの美貌に「めまい」を起こしたのか、多分、生涯に
只1本作ったG・ケリーとC・グラントの為のスター映画なんですから。
 我々も無駄な事を考えず、お洒落な雰囲気の中、二人のスターが織りな
す世界とダイヤのハラハラを存分に楽しめばいい。
 映画の楽しさの原点に戻ればいいんです。

 C・グラントの安定感、演技は達者で女優を光らせる才能が有る。
 名立たる女優達が相手役に望むのも当たり前のクソッタレ。(笑)
 G・ケリー。ハリウッドが生んだ最高のクール・ビューティ。
 フォーマルも、カジュアルも、水の中さえ・・・、ちょっと反則の世界にいらっ
しゃいます。(笑)
 個人的には、今日観た「ダイヤルMを廻せ」のケリーが一番好きだけど、
美貌を生かしたゴージャス感を見るのなら、この作品でしょう。
 よく解らないけど、あのゴールドのパーティ・ドレスを着こなせるのは余
程の美貌と才能が要ると思います。
 彼女の魅力を引き出す、イーディス・ヘッドの才能もまた特筆すべきなの
は言うまでも有りません。
 メインディッシュの肉とソースが幾ら絶品でも、それだけでは彩りに欠けま
す。
 絶えず「剣が峰」に立たされる不憫な保険調査員のJ・ウィリアムス、根性
の座りっぷりが「椿三十郎」の奥方に通じる資産家老夫人ジェシー・ロイス・
ランディス 。
 この二人のコメディ・リリーフが居て、主演二人が一層輝くコントラスト。
 その辺のバランスの妙は「手練れ」の一言でしょう。

 理詰めで観ず、肩の力を抜いて見ましょう。
 楽しさにかけては「ファミリー・プロット」同様の魅力が有ります。

 ラストの鐘は、祝福の鐘?
 いやいや、あれは優雅な独身貴族に別れを告げる弔鐘。(笑)

※スタンリー・ドーネンの「シャレード」(1963年)、ブレーク・エドワーズの
 「ピンクの豹」(1963年)のエッセンスは、ここに有ったのかもしれません。

 2015.5.4
 DVD
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ファミリー・プロット」

2015-05-06 01:00:20 | 外国映画
 「ファミリー・プロット」(「Family Plot」、1976年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   脚本 アーネスト・リーマン
   原作 ヴィクター・キャニング
   撮影 レナード・J・サウス
   音楽 ジョン・ウィリアムス
   出演 カレン・ブラック
       ブルース・ダーン
       バーバラ・ハリス
       ウィリアム・ディヴェイン

 巨匠アルフレッド・ヒッチコック、最後のプレゼント。
 「フォロー・ミー」が遺作になったキャロル・リードといい、遺作の出来が良いと「い
い監督人生」だったと素直に思えるので、実に羨ましいです。

インチキ霊媒師ブランチは資産家の老女から、1万ドルで行方不明の甥の所在
を見つけるよう依頼される・・・。

 この作品、今迄、観てきた作品の中で一番コメディ色が強い。
 ドタバタ喜劇一歩手前くらいなんだけど、コメディ担当のインチキ霊媒師&タクシ
ー運転手コンビ、シリアス担当の宝石商&愛人のバランスが絶妙で、楽しいサス
ペンス・コメディになっています。
 「フォロー・ミー」のリード監督と同じで、巨匠の肩書を降ろしチカラを抜いた作りで、
映画作りが心底好きな感じが出てる、だから、観てるこちら側までリラックスして楽し
めます。
 本格サスペンスを期待したら裏切られるかもしれませんが、軽くても中身まで軽い
訳ではないので充分にヒッチコックを楽しめると思います。
 (ヒチコック印の階段シーンもちゃんと有ります)

 気が付いたのは、この作品1シーンが長い、最初の交霊シーンだけで10分近くあ
るし、他にも10分くらい続くシーンが多数。
 でも「汚名」と違い、全然飽きない。
 長くても、この作品には物語を語るリズムが崩れてないからでしょう。
 この物語は二組のコンビを交互に描きながら、しだいに絡み合わせていくのですが、
その最初のバトンタッチ、リアルから見れば酷い偶然かもしれませんが、映画として
は流れるような主役交代で、流石のテクニックと感じました。

 でも、この作品は、そんな細かい事を気にせず観るのが最良の観方でしょう。
 人を怖がらせる事、楽しませる事に執念を燃やし続けた老巨匠の作品を、一本の
映画として存分に楽しみましょう。
 ラストシーン、ヒッチコックらしい「最後の挨拶」のユーモアを受け取れた事は、映画
ファンとして感慨深く、幸せな一瞬でした。

 K・ブラックは苦手中の苦手なので、観る前はかなり不安だったけど、上品にしてれ
ばアクセントの強すぎる顔立ちも、それ程、気になりませんでした。
 そのK・ブラックを含め、演技陣は申し分なし。
 中でもクレジット3番目ながら実質主役だったB・ハリスが特に素晴らしく、相方のB・
ダーンも負けずに好演でした。
 ブレーキ効かなくなった車中でのB・ハリスには大爆笑。

 個人的には、人に薦めるヒッチコック作品として、かなり上位の作品。
 お薦めです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 さて、ここからは超個人的な感想

 生前のヒッチコック監督のコメントを見ると、黒澤監督については、「畑違いだから、
それ程、興味はない」感じでした。
 この作品の、車が横転してブランチがジョージの頭を踏み台にして脱出。
 踏まれたジョージの顔が思いっきり「イテテッ」。
 これ観た瞬間、
 「椿三十郎・・・」
 まァ、ああいうシチュエーションではよく有る事なのですが、そう感じたのは事実。
 で、観終わった後、つらつら考えてると、これって「隠し砦の三悪人」も入ってる気
がしてきて。
 貧乏で金蔓を離さない為なら危険も何のそのの小市民ブランチとジョージが、金
300貫の為なら何でもしますの百姓又七と太平(後のC-3POとR2-D2)。
 真面目組のアーサーとフランは「隠し砦~」と違って敵側だけど六郎太と雪姫。
 何となくキャラが被ってるような気がしました。

 上記は個人的妄想ですが、もう一つ、これは結構、確信。(笑)
 (もしかして有名?でも、余り聞いたコトない)
 宝石商のアーサーって、「ルパン三世 カリオストロの城」の伯爵そっくり。
 上下に圧縮したようなガッシリした体型、四角い顔、前歯だけ見せて笑う。
 途中からアーサーが出てくる度に、集中力乱れました。(笑)

 2015.5.5
 DVD
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする