セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「三つ数えろ」

2012-06-23 14:15:20 | 外国映画
 「三つ数えろ」(「The Big Sleep」1946年・米)
   監督 ハワード・ホークス
   原作 レイモンド・チャンドラー 「大いなる眠り」
   脚本 ウィリアム・フォークナー
       リイ・ブラケット
       ジュールス・ファースマン
   出演 ハンフリー・ボガート
       ローレン・バコール
       ジョン・リッジリー


 DVDでよかった、もし、映画館で観てたら「何となく解ったような気になっ
ちゃう」映画でした。
 元々、名前を覚えるのが苦手なので何度もDVDを戻して確認、「ヤベ~、
俺、頭悪いんだな・・・」と再認識。
 で、映画終わって真っ先にした事は、wikで自分のストーリー認識が間違
ってなかったかの確認作業。
 良かった!間違ってなかった。おまけに、「プロットが大変込み入ってる映
画として有名」って書いてあって、一安心。(笑)
 マーロウさんは読んだ事なくて、お会いしたのも「ロング・グットバイ」(197
3年 R・アルトマン監督 E・グールド)、「さらば愛しき女よ」(1975年 D・
リチャーズ監督 R・ミッチャム)の二回だけ。
 詳しいストーリーは忘れたけど「さらば愛しき女よ」のロバート・ミッチャム
と雰囲気は凄く良かった記憶があります。
 今回、宵乃さんの「忘却エンドロール」で企画されてる「ブログDEロードシ
ョウ」のお題で、ようやく最も有名なボギーのマーロウを見る事が出来ました。

 ラバーン・テラスの一軒家でホームズなら床を這いずり回って「ワトソン君、
ここには色々、興味深いものがあるよ」
 或いはポワロなら「ノン、ノン、ノン、君は何も解ってませんねぇ」(笑)
 まあ、両御大にお出まし願わなくても、指紋、弾痕、足跡、髪の毛、科学
捜査というヤツに掛かれば、突っ込み所は満載でしょうね。
 でも、この映画は、そういう野暮は言いっこなしというか、取り合えず脇へ
置いとけなので、緻密で齟齬のない物語じゃないと許せない方には向かな
いと思います。
 あくまで、裏世界の犯罪を題材にして作ったノワールの雰囲気、マーロウ
のハード・ボイルド、バコールのミステリアスぶりを楽しむ為の映画。
 そういう映画と割り切って観れば、凄く面白い作品だし、この雰囲気に浸り
たくて見直していけば、雰囲気の後ろで起きていく数々の出来事も正確に理
解していって、より楽しい作品、好きな作品になっていくんだと思います。
 多分、1回目では気が付かなかった事も沢山有るでしょう。
 「午後2時に、俺を起こす奴は誰だ」
 そういう世界に生きている男、酒と煙草が絵になる男、この作品には出て
こないけれど「タフじゃなければ生きていけない、優しくなければ男じゃない」
の台詞が似合う男を演じさせたら、やはりボギーの右に出る男は居ないんじ
ゃないか、そう思えて納得してしまう存在感が僕から見ると堪らないですね。
 マーロウとしては、気だるい疲労感漂うR・ミッチャムの方が良い気もする
けど、モノクロ画面を支配するボカートのマーロウは一つの型を完成させた
点で秀でていると思います。
 ただ、「カサブランカ」のボギーと何処が違うと言われると窮してしまうんで
すが。(笑)
 L・バコールは、親近感が持てるタイプの女優さんではないのですが、名家
の令嬢からくるプライドで、闇世界の泥沼へ落ち込み掛けてるのをオクビに
も出さない気丈な女を好演しています。
 マーロウが、ぶっきら棒な男で世界はハードボイルドだから、相手役も可愛
げのある女より気の強い大人の女が似合う。
 そんな意味でもヴィヴィアン役のバコールは打って付けだったと思います。
 他には、ボブ・スティールが演じた殺し屋カニーノが、冷血な爬虫類を思わ
せる演技で印象に残りました、背が低いのが、かえって狡猾なイメージを強
調してるようで良かったです。

 一点、後半、ボカートとバコールの絡みシーンで流れる音楽が「レベッカ」
(A・ヒッチコック・1940年)のオープニング・メロディとそっくりだったのが凄
く気になりました、音楽担当が同じ人かと思ったのですが違いました、あれは
一体何だったんでしょう、謎です。(笑)
 それを除けば、かなり面白い作品でした。
 良い映画に巡り合う機会を作ってくれた企画に感謝しています。

 蛇足ですが「レベッカ」のOPシーン。
 http://www.youtube.com/watch?v=IG5XfyRaoTM&feature=topics
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4 コメント

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こんばんわ! (宵乃)
2012-06-23 19:40:03
今回も参加して下さって嬉しいです!
DVDでよかったですよね~。わたしも顔と名前を覚えるのが苦手で、あんまりよくわからなかったです。しかも根気もないから巻き戻し確認も中途半端に終わらせてしまいました(笑)
というか、「さらば愛しき女よ」と同じ主人公だったんですか。どうりで聞いたような名前だと思った!
この作品もよくわからなかった記憶が…あはは。

わたしは割と科学捜査とか興味津々なタイプなんですが、この作品では気になりませんでした。犯人を捕まえる気がまったくないとことか。わからないなりに雰囲気に浸れたって事かな。
ボギーもとくに好きでも嫌いでもなかったんですが、マーロウはかっこよかったですね~。ビビアンに「あなたが好き」と言われるシーンとかもよかった。
音楽はどうなんでしょう。偶然なのか、意識したのか…微妙なところですね~。

では、告知記事にリンクを張らせていただきます。
皆さんの記事もお楽しみに~!
アメリカにもウイスキーの水割りがあったんだ・・・ (鉦鼓亭)
2012-06-23 23:12:20
 素敵な企画とコメントありがとうございます。

歳のせいか、最近、DVD観ると、最初の状況設定が頭にスッと入らないんですよ。
これなんか、温室のシーンでマーロウが老将軍に「ジョー・ブローディは何者です?」って聞いた瞬間、「え、ジョー・ブローディって名前出てきたっけ・・・」(笑)
そんな調子だったから、マースとマーロウが始めて会うシーンが終わった所で、一度止めて、記憶を整理しました。
(やっちゃイケナイ事なんですが・・・汗)

犯人を捕まえる気がまったくないとことか>マーロウはともかく、警察は何をしてたんでしょうかね。(笑)

一度も見た事ないのに、フィリップ・マーロウといえばハンフリー・ボガートというイメージがインプットされていて、他の人のを見ても本家がどうなのか知らないので、今まで比較しようにも出来ませんでした。
ボガートのマーロウは、想像してた通り、期待通りでした。
ハンフリー・ボガート、マーロン・ブランド、ジャック・ニコルソン、三船敏郎、代わりの居ない唯一無二で強烈な個性を持つ男優は観てるだけでお酒が進みます。(笑)
こんにちは☆ (miri)
2012-06-24 09:01:00
昨夜はコメントを頂き、有難うございました☆

>あくまで、裏世界の犯罪を題材にして作ったノワールの雰囲気、マーロウ
>のハード・ボイルド、バコールのミステリアスぶりを楽しむ為の映画。
>そういう映画と割り切って観れば、凄く面白い作品だし、

仰るとおりですよね~。

>この雰囲気に浸り
>たくて見直していけば、雰囲気の後ろで起きていく数々の出来事も正確に理
>解していって、より楽しい作品、好きな作品になっていくんだと思います。

そうかもしれませんが、それは男性だけではないでしょうか?
まぁ一部・女性にもいるかもしれないけど、ここまで分かりにくい映画は、
たいていの女性は「・・・さ、次いこ」となると思います(笑)。

私は昔から見たかったので、やっと見られて嬉しかったけど、
一回で結構ですって感じでした。

皆で一緒に見る企画にご参加下さり、記事も書いて下さり、
有難うございました。ご一緒できて嬉しかったです♪
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2012-06-24 20:15:16
コメント、ありがとうございます。

仰る通り、これは男向けの映画でしょう。
その中でも、こういう雰囲気が好きな人が、どんどん嵌っていく映画だと思います。
(僕の場合、これに当たるのがルネ・クレマンの「狼は天使の匂い」)
H・ボガートという人も、ハンサムという訳でなし、背は低いし、声もほんの少し甲高いし、一つ一つピックアップすると問題ばっかりなんですけど、その集合体となったH・ボガートという役者は、男からみると非常に魅力的なんです。
男にとってボガートは、男が望む「格好良さ」の一つの形を理想的に具現化してくれる存在なんだと思います。
(宝塚と同じで生活臭と無縁な世界)
そういう意味でも、今回のボガートは印象的でした。

僕も、この作品は何十年も「見るべき作品リスト」に、ずっと載りっぱなしの作品でした。
よい機会を与えて頂き、感謝しています。
こちらこそ、「ありがとうございました」です。

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