セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ブルックリン」

2016-07-10 14:57:24 | 外国映画
 現在、決算仕事で大バテ中、来週末も上映してるか解らないので土曜に映画館、日曜は完全休養としました。
 今月の「お題」は、来週以降とさせてもらいます。

 「ブルックリン」(「BROOKLYN」、2015年、アイルランド・英・加)
   監督 ジョン・クロウリィ
   原作 コルム・トビーン
   脚色 ニック・ホーンビィ
   撮影 イヴ・ベランジェ
   音楽 マイケル・ブルック
   衣装デザイナー オディール・ディックス=ミロー
   出演 シアーシャ・ローナン
       エモリー・コーエン
       ドーナル・グリーソン

 一言で言えば「女性映画」でしょうね。(汗)
 1952~54年辺りの話だから僕の親の世代の物語。
 アイルランドからNYブルックリンに単身移住してきた女性が一回り成長
し、その地で生きていく覚悟を決めるまで、その揺れる女心を結構シビア
に描いています。
 アイルランド版「リップヴァンウィンクルの花嫁」という感じ。
 只、あの映画の七海ほど弱くはない。(笑)

 映画のヒロインは大概、(美人ほど)強い意志を持っていて「流れ」に立
ち向かっていきます。
 でも、「リップヴァン~」や本作のヒロインは、結構、流されちゃう存在。
 エイリッシュ(主人公)なんて、あっちでラブ、こっちでラブ、おいおい、そ
れでいいのか?と。
 こっちのラブに踏ん切りを付けたのも外部要因が原因で、それで自ら決
断したのだけど、アレがなければ、どうなっていた事やら。(笑)
 でも、僕もそうですが、映画のような生き方をせず、日々の流れに流され
ながら右往左往し悩むのが多くの人達の実像なんじゃないでしょうか。
 そして「答え」はいつも綺麗事とは行かず、人を傷付け、自分の人生の為、
最も近しい人さえ見放してしまう。
 倫理や理屈では「NO」かもしれないけど、生きていくのに割り切れないも
のは沢山あるし、その為の取捨選択も定期的にやって来る。
 それに欧米では「親の人生と子供の人生は別モノ」というドライな考え方
が基本と聞いてます、日本人からすれば得手勝手に見えても、向こうは向
こうの考え方が有るのでしょう。
 そんな等身大の一人の女性エイリッシュが上手に描かれてると思います、
「リップヴァン~」の黒木華さんも上手かったけど、この女優さんも上手い。
 アイルランドの垢抜けない娘から、大都会での田舎娘感、ホームシック、
そして色々な経験の末、一人の「女」になっていく。
 美人タイプと違うから、それをちゃんと演技力で表現しています。
 気分的に不満はあるけど、作品として良く出来てるし、何より、あの「終わ
り方」がズルイ。
 何か、あれで全てチャラにされちゃう。(笑)
 2016年アカデミー賞作品、主演女優、脚色賞ノミネート作品。

 予告編
 https://www.youtube.com/watch?v=I768tXFAI5I

※「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」の舞台もブルックリンだったけど、
 本作でブルックリンがアイルランド人の主な移住先になってたと知りました。
※僕は「ルーシー・ショウ」や「奥様は魔女」で育ったから、1950年代の欧米
 家庭ではTVも電話も当たり前と思ってたけど、そうでもなかったようで。(汗)

 2016.7.9
 日比谷シャンテ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 海を越え すべてを捨てて 身ひとつ
  わたしは帰る あなたのもとへ

 
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「寒い国から帰ったスパイ」 | トップ | 「カリフォルニア・ドールズ」 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
gumrieさん、こんばんは! (鉦鼓亭)
2016-07-12 00:34:50
 コメントありがとうございます!
 映画の話をしたい人間ですから、何時でも歓迎です。

「女神は二度微笑む」
>多神教のヒンドゥ教と八百万の神々は親戚というか本家分家みたいなものだから、日本人には違和感が少ないのじゃないでしょうか。
僕の記事は、ちょっと「?」が強調されてますが、大好きな作品です、DVDも買いましたよ。

「めぐり合わせのお弁当」
>この監督、小津さんのファンと何処かで読みました。
初見の時、僕も小津さんのリズムを感じたから、「やっぱり」と。(小津さんは苦手(汗))
只、この作品、その時、設定を勘違いしてしまいまして、DVDで再見するハメになった汗タラタラの作品なんですよ、お陰で、より深く案感じる事が出来ましたけど。(笑)

「きっと、うまくいく」
>最後の方で踊りありましたか?
僕はミュージカル好きだから、どっちにしろ気にならなかったと思います。
僕の中では、この作品が今の所、インド映画最高点で一番好きです。

「バルフィ!人生を唄えば」
>観終わった時、こんなに時間軸をいじくり廻す必要が有ったのか?と思いました、それは、今でも疑問なのですが、
シュルティがジルミルの存在をバルフィに教えるシーン。
彼女の短い葛藤の後、きっぱりと決断した素晴らしい場面。
1回しか観てませんが、今でもクッキリ脳裏に焼き付いています。
控えめながらインド映画らしい色彩を織り込んでるのもいいです。
(シュルティが身に着けていたサリーはベンガル・サリーだとか、インドのサリーも地方色があるんですね)

参考
http://blog.goo.ne.jp/leatitia55/e/5190b2d9905c5275ebbb516a79b817e9
僕の記事中、中段、---の上、「ボリウッドのスター達が競演」
の項目(youtube)で「女神は~」のヴィーディヤ・バランと「バルフィ!~」でジルミルを演じたプリヤンカー・チョープラーがちょこっと顔見せしています、最後の方(ダンスシーンから本筋へ繋がる手前)にもチラ見せしてます。(笑)
※プリヤンカの一人前だったか、ホワイトシルバーの衣装の女優さんは「きっと、うまくいく」のヒロインのお姉さん。(顔、似てます)

「マダム イン ニューヨーク」
>シュリディヴィの魅力が凄い。
流石、「インドのオールタイム№1女優」という感じ。
NYの、あの教室、いいですよねぇ。
「何事も初めては一度だけ、その一度だけを楽しみなさい」とアドバイスした方が(ゲスト出演~冒頭、献辞を奉じられてたアミダーブ・バッチャン)、「女神は二度微笑む」でラストのナレーションと歌を唄ってましたね。

女の哀しみは表面張力しきるまで続く
一度溢れてしまったら、引き返せない…
>これは「ブルーバレンタイン」のシンディに当て嵌まりますね。
女性は我慢強いけど、限界を超えると「許す」とか「再考」とかは一切無く、後戻りしないとか。
あのリアリティ、忘れようにも忘れさせないものが有ります。
僕にとっては、すぐ前にある未来って感じなので一層。(笑)
40年以上、鷲掴みにされていた暗い映画は「ひとりぼっちの青春」(原題「廃馬は撃つんだろ?」でしたが(大好き)、今は絶望的映画№1は「ブルーバレンタイン」に変わりました。

リンクのご承諾、ありがとうございます。
こちらへのリンクも、勿論、大歓迎です。
宜しく、お願いいたします。
返信する
インド映画 (gumrie)
2016-07-11 02:27:35
再びコメントさせていただきます

最近のインド映画は秀逸で上質なものが多いですね。

「女神は二度微笑む」上映館がほとんど無く、
遠くの辺鄙な映画館でやっと観れた映画です。
深い哀しみと憎悪は思いを果たしたとしても
心の闇を拭えない、、
宗教観を感じた映画でした。

「めぐり合わせのお弁当」は
鏡を見ながら匂いに気付くシーンに
恋心が
足元から勇気が抜け気後れしてしまう。
最後までストーリーが明かされず、
いつまでも気持ちが迷走してしまう映画です(苦笑)

「きっと、うまくいく」は最後のダンスがなければ良いのに、、日本人の発想でしょうか

「バルフィ!人生を唄えば」
こんなに清らかで美しい映画はなかった!
この言葉しか浮かばないほど。。

「マダム イン ニューヨーク」
女の哀しみは表面張力しきるまで続く
一度溢れてしまったら、引き返せない…
女だからよく分かる話しです
女優の美しさと声に、かなり魅了されましたけど。

「ブルーバレンタイン」
いっつもどこか頭の隅っこに張り付いてる
困った映画です
忘れてたのに思い出してしまったーーーーー

PS
リンク宜しくお願い致します( ´ ▽ ` )ノ
こちらも貼らせて貰って良いでしょうか?








返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2016-07-10 23:12:18
 gumrieさん、はじめまして、鉦鼓亭と申します
 初コメントありがとうございます!

「女神は二度微笑む」
>ミステリーとしては問題アリですが、サスペンスとして1級品だと思うし、エピローグ部分の哀感が実に素晴らしい。
特にドルゥガー神の山車が海に沈んでいく所の無常感、祭りの後の欠落感に惹かれました。
「めぐり合わせのお弁当」
>サージャンがイラに会おうとして鏡に向かっていた時、
「父親と同じ匂いを感じた、年寄りの匂いだ・・・」
(ウロ覚え)
あの独白は自分の言葉のように切実なモノがありました。
インド映画らしくない静かな作品でしたね、印象深い作品でした。

今年、3週間くらいインド、マサラ映画「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」にド嵌りしてました、他にも「きっと、うまくいく」、「バルフィ!人生に唄えば」、「マダム・イン・ニューヨーク」も大好き、インド映画は大らかでエネルギーが溢れてて興味深々なんです。(アクション映画は、現在、国籍問わず余り興味なしですが)

「ブルックリン」
釈然>それは僕も感じました(笑)、でも、少し後で「それが人間だよなァ」と思い直しました。
まぁ、イタリア男がDNAの異端児なのか、「他の女に手を出さなくて良かったね」とも思いましたが。(笑~その辺が女性映画かなと)

「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」
>ウチら夫婦は、あれ程、固く結ばれてないので(「ブルーバレンタイン」2,3歩手前というか~でも、ようやく「腐れ縁」にはなれたかな(笑))
、悪くはないけど、何だか他人事でした。(汗)
人種間の偏見の中、誇るべき素晴らしい人生だとは感じましたけど。

こんなレスしか出来ませんが、宜しければ、気軽にお立ち寄り下さい。
返信する
女神は二度微笑む (gumrie)
2016-07-10 16:13:55
初めまして
インド映画「女神は二度微笑む」を推奨されてて
思わずコメント書いてます
至る所が布石だらけで
かなり秀逸な映画です
私のオススメは
「めぐり合わせのお弁当」
セリフもそう
表情も凄く深く刺さる哀しさがあります


余談ばかりですいません
「ブルックリン」観ました
映画のラストで釈然しない思いが残ったのですが
貴方のブログでなるほどね。。。と
まさにその通りです

「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」は
二人の覚悟が身につまされますが
二人にしか分からない年月の積み重ねに
自分もこうありたいと心に刻む映画でした

s
返信する

コメントを投稿

外国映画」カテゴリの最新記事