ふわふわ気分で

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「失踪者」観ました

2007-11-30 | 演劇

松本修さん演出で、以前、読売演劇大賞作品賞や毎日芸術賞・千田是也賞を受賞した
「アメリカ」が「失踪者」とタイトルを改めて再演されました。


「失踪者」
原作 :フランツ・カフカ
訳  :池内紀
構成・演出:松本修
振付 :井手茂太
出演 :石母田史朗、笠木誠、福士恵二、大崎由利子、太田緑ロランス、ともさと衣ほか
11月29日、三軒茶屋シアタートラム ソワレ観劇

あらすじ
17歳のカール・ロスマンはドイツからアメリカへの長い船旅で、おじのいるニューヨークに着いた。
しかし不可解な理由で家から追放されてしまい、放浪が始まる。



演劇賞受賞作って、どんなのだろうって、ミーハー気分でしたが、
3時間50分(休憩時間15分含)を長いと感じさせませんでした。

シアタートラムの狭さをいかした不思議な舞台でした。
いつもの客席を取り払って、舞台の位置に入口に向かって、階段状に席を設置。
開演時間が来ると、入口はシャットアウト。
入口前の通路も2階の部屋になったりします。
階段が全部で5本あったかな。
出入り口は多数ありました。
出演者は総勢20名。ひとりで多くの役をこなします。
主演のカールも5人の方が交代して演じます。

劇場空間全体を使っている感じ。
舞台はすぐそばだし、横の通路を役者が出入りします。
サラミ・ソーセージをかじったら、匂いがするし・・・
小さい劇場って、臨場感がイイね。

大勢の人が、ダンスのような動きで舞台を移動。
20名の人が、右往左往するってのも何度もあるけど、
洗練された動きで、とってもきれいでした。

長期間のワークショップを経て、舞台を作るってのが、演出家の松本さんの方法だそう。
こなれた動きや多彩なアイデアも、その成果のようです。
階段の使用もとても多いけど、間延びした感じがしませんでした。
動きに無駄がなく、なめらかで観ていて気持ちいいです。

お稽古沢山しているので、ややこしい動きもオッケーなのでしょうね。
それが、皆さんの自信となって、
さらに、グレードアップしていくというのかな。

ホテルの場面では、舞台の真ん中にエレベーターが出てきます。
扉を開閉してエレベーターを使い、昇降します。
上半分しか見えない扉で、人が下に降りて行ったみたいな動き。
途中まで、本当に下に降りれるセットだと思ったくらい。
あんまり何度も利用するから、ちょっとボロが出てきたけど、
おもしろかったね。

赤いドレスを着た人が、床に寝そべるところでは、
アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」のイメージ。
ヘアスタイルの感じもそっくりで、きれい。
あ、あれもアメリカだったなぁ、って思いました。

この舞台は、言い過ぎないというか、みせすぎないという感じがしました。
観客のイマジネーションにおまかせしますよ。
って感じね。
人それぞれがイメージをふくらませて、観るって気がしました。

ラスト近くの劇場の俳優募集の、ラッパを吹く天使も登場するハッピーな場面。
列車に導かれるカールたちに奇妙な既視感を覚えたら、
ユダヤ人収容所へ導くというブラックな終わり方。

上着を脱いで柵にかけたり、靴を脱ぐ動作で、
ユダヤ人収容所から終末へ向かう道筋を暗示する最後。
表現方法が、高度でしゃれていましたね。
最後の暗示が、胸に重かったです。

文句なしにオススメの舞台です
皆さま、ステキでした。ありがとうございました。
お疲れさま~





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