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余白のメモ

詩と短歌と好きな本
指の上で四季はほほえむ

巨人

2021-03-27 00:16:58 | 天秤の詩
うずくまったまま動かずに
霧に包まれた詩を引き寄せ
感性と感情を高ぶらせ
思いもよらない声で歌う
薄暗い少しの暖かな光の中
複雑と単純の境目
うずくまった体は心を縛りあげ
動けなくなり妄想を呼ぶ
見えない人がこちらへ来る
見えない人が見詰めている
いや見えない人は自分なのか
水平線が蜃気楼に取って代わり
溜め息が知らぬうちに欠伸に変わる
幻が現実になり
夢が空から落ちてくる
強烈な目眩に襲われながら
それでも止まることはしない
それでも想いという強さを手から離さない
いつの間にか砂になっているとも知らずに
強く握ったこぶしから零れていく

諦めていた甘い果実が呼んでいる
味を忘れた儚い者に向かって呼んでいる
ふとよぎる滅裂で交錯する布越しの暖炉
困惑する記憶の断片が
甘酸っぱい蜜を欲しがって
遠い近い未来へと鼻をきかせる

西日

2021-03-27 00:15:00 | 天秤の詩
眠れぬ夜の続く中
何に打ち震えているのだ
後悔 愚行 孤独 欲望 創造
様々な異様な心の高ぶりは
どうにも押さえつけておくことができず
止まらない螺旋のうねり
次々に出て来るのは
声にならない叫びと
破壊という荒れ狂う衝動
悪の面を見ては嫌悪感をあらわにし
自分の手を見ては流れる血を思い返し
死にゆく自分を想像し
それでも生きると願う心の隅
曖昧な天秤の憂鬱は
きっと誰にも動かせられない
存在している事実と事実に対する理由
立っていることが
走っていることが
見ているものが
全て不思議な光景
病んでいく魂は
暗い深海へと変貌し
たゆたいながらほうけとなる
わずかな光だけが正気を取り戻させ
埃の粒が導いてくれる
きっとここは幻影なのだと
さらに心は闇に色を添えていく

走る

2021-03-27 00:12:53 | 天秤の詩
行く手を阻む壁が一つ二つと建てられていく
終わりのない行く道をひたすらまじめに走る
風を切っていくあまりの速さに
見るものはトリックなのだと思うほど
それほど速く走ったために残像が残り
数えきれない自分自身ができていく

溶け込んでいく言葉
言葉に隠されたもの

ごちゃまぜになった心の拠り所は
消えそうになるほどか細い光
一直線に追い求めて
無我夢中で走って
体は泥まみれで枝やらトゲやらで切り傷を作り
走る体に電気が走る

ビリビリ ビリリ
ビリビリ ビリリ

そのショックは電気と汗が混じり
さらに加速をつけていく
止まることが許されない
走ることしかできなかった本能
誰にも言えなかった夢の跡は
走るための踏み台になり
水を欲しがる指先を涙で湿らす
日の光で焦げていく肌を瞬きで誤魔化し
振り向けば渦巻きの中心に氷った足跡
長い髪を躍らせて
リズムの良い間隔で息を弾ませ
苦しくもあり 思い出でもある
そんな夢の通り道を
かき消されないようにおもいきり走る
散らばりそうな細胞の熱を
名残惜しく未練を背中に走りきる

旅人

2021-03-27 00:10:33 | 天秤の詩
次第に色を失っていく

飛び方を忘れた鳥は必死にもがき
諦めることを微塵も知らない
白くて綺麗な羽をばたつかせ
遠い色の無い空を憧れの眼差しで見る
歩くことすら忘れ
鳴くことも忘れ
惨めで悲恋な一つの場面
鳥は赤い涙を流していた

走れなくなった馬は大地を見て
途方のない時間の中をひたすら歩く
走るように歩くその姿に
滑稽さと悲哀の曖昧な一つの場面
黄金色に輝く肌の眩しさが
いつしか闇に溶け込まれていく
歩くように走る懸命な瞳
風によってなびくことのない
毛並みを持て余し
馬は青の声を響かせた

色を失った旅人は温もりの希望に
色を求めた
現実味を失っていく世界の日常
忘却の彼方に置き去りにした美しいもの
涙は枯れて過ぎていくものをつぶさに見る
まどろんでいく意識を揺り動かし
正気と幻が色を奪っていく
思い出せるのは色の無い世界
思い出せるのは単純な光と闇
空と大地を見渡して
気付けば地平線に優しい光の幻
日に焦げた肌が一瞬だけ
色の世界を蘇らせる
一度見たような錯覚を覚えながら
隠れていた美の嵐が頬を撫でる