余白のメモ

詩と短歌と好きな本
指の上で四季はほほえむ

ディフェンス

2023-06-23 23:35:19 | マイブック(あ)
「ディフェンス」
      V・ナボコフ 著
         若島正 訳

チェスの物語。
ディフェンスとはチェスの戦法のこと。
ひとつの才能を持った男、ルージンの幼少から終わりまで。
ひとつの才能しか持たなかった、いや持てなかったルージン。
この小説の終わりは自らの死で終わる、
結末を知ってもこの本の面白さは損なわれず。
チェスというものに呑まれる業、そこに蔓延る美しき枡目。
将棋、囲碁と共になぜか魅了される孤高の盤上。
好きになるという天性があり、そこは光で覆われる。
ときに眩暈として眩みながら。

ちなみにナボコフは”ロリータ”を執筆。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

土に贖う

2023-06-23 22:46:39 | マイブック(か)
「土に贖う」
      河﨑秋子 著

どの短編も北海道が舞台。
繫栄しやがては衰退していくその物語たち。
養蚕農家からはじまり、毛皮にするミンク、ハッカの香り、アホウドリの羽、
馬の蹄鉄、日増しに作るレンガ、そして自問自答の陶器。
どの職業も繁栄のなかには誇りがあり、
衰退していく現実のなかにも胸に宿るものは消えず残る。
印象深く刻まれる人の歩みの一片は、土に触れることで、
空や海が翻り実存であることを理解していくのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする