いよいよ東京都の新しい顔が31日に決まる。誰が都知事になるのかはまだ分からないが、事前予想に反し、野党統一候補の鳥越俊太郎氏が都知事になることはまずなさそうだ。
ちょっと気が早いが、鳥越氏の敗因分析をしてみよう。
1.準備不足の立候補
「究極の後出しジャンケン」と小池候補から言われたように、ギリギリになっての立候補宣言はプラスではなくマイナスに働いた。
マイナスの最大要因は準備不足で、そのことが選挙戦を通じて最後まで響いたようだ。
「準備のない戦いはしない」というのは戦いの基本である。仮に立候補の意志を固めていても、周囲にそのことを覚られず密かに準備をし、立ち上がったら一気呵成に攻めるのが戦いの極意と孫子は説いている。
そういう観点ではギリギリの立候補宣言は奇襲にも似て、相手陣営に打撃を与えるに充分なものだが、それも準備あってのことだ。
ところが鳥越氏の場合、その後の会見を見聞きしても、以前から準備していたとはとても思えず、なんの準備、志しもなく突然立候補を「思い立った」ようにしか見えない。実際、本人も参院選の結果を見て、このままではいけないと立候補を決意したと言っていた。
問題は彼の危機感に都民が共感できるかどうかであり、それは立候補に至る動機を都民が理解・納得し、共感できるどうかだ。残念ながら鳥越氏の動機を共有できる都民はそれほど多くはなかったようだ。
2.都政と国政を混同した動機
最も重要なのは立候補の動機だが、鳥越氏の場合「安倍政治にノー」という反アベ。たしかに現在の政治情勢に対し危機感を抱く人は少なくない。ひたすら戦争への道を突き進んでいるという見方はあながち間違いではない。大きな変化は常に小さな変化から起こるし、それを見過ごすか、そこで警鐘を鳴らすかは国の将来を左右する重大な問題である。
としても、それは国政の問題である。もちろん都政も無関係ではないというのもよく分かる。ただ、その危機感を都民が共有してくれるかとなるとかなり疑問だ。
多くの都民はもう少し目先の、都政をどうするかを語って欲しいと思っている。ところが、その点が鳥越氏には欠落している。選挙戦の後半、追い込みになってやっと都政の具体論を語り始めたが、すでに時遅しだ。
もし彼が都知事選でなく、先の参院選に現在のスローガンを掲げ立候補していたならほぼ間違いなく当選していただろうが、都知事選という地方行政のリーダーを選ぶ選挙ではあまりにも抽象的に聞こえる。
抽象的に聞こえるということは政策の中身がない、具体的な政策を考えていないということであり、それは弱点になる。
3.選挙戦術のミス
鳥越氏は事前準備なく選挙戦に入ったから、本来なら選挙戦前にやるべきことを選挙戦突入後も続け、そのことで他候補と違った戦い方、鳥越氏の個性を際立たせようとしたが時間がない中での戦い方としては他の戦術的戦いの方を優先すべきだったと思われる。
個別施設訪問を優先し、街頭立会演説が他候補より極端に少なかったのは知名度アップと、具体的な政策の中身を聞きたいと思っていた有権者の期待に充分応えられたとは言い難いだろう。
4.真剣さで他候補に負けていた
上記選挙戦術のミスと関係し、鳥越氏の演説、動きをTVで観ても、他候補、とりわけ小池氏、益田氏に比べ真剣さに欠ける嫌いがあった。野党連合という組織戦の力を過大評価したのかどうか分からないが、浮動票は案外候補者の熱意、真剣さで動くものでもある。
とにかく熱意・真剣さでは他の2候補に圧倒的な差を付けられたのは間違いない。
5.知名度を優先した野党共闘のミス
野党共闘ができたのは選挙戦ではプラス要因だったが、民進党の一致団結、真剣さが欠けているように映ったのはマイナス面だ。
短期決戦ということから知名度優先で候補者選びをしたのだろうが、その過程でも二転三転フラフラしている印象を都民に与えた。
また都民が今回の都知事選で求めた新リーダーに対する期待を読み間違えたようだ。いままでのように知名度が高い人より、しっかりと都政を担ってくれる人を今回は選びたいと考えていたにもかかわらず、知名度にこだわったのは野党の失敗だ。
具体的な政策、真面目そうな人柄という点では宇都宮健児氏を野党連合候補として応援した方がよほどよかったのではと思うが、後の祭りか。
さて、接戦と伝えられ、開票も行われず、結果も明らかになってない中で、結果予想をし、敗因分析を勝手にしてみたが、結果はどうなっているだろうか。大外れか、それとも予想通りに鳥越氏敗北で終わったか--。
(この原稿は31日10:30メルマガで配信したもの。ブログへのアップは投票が締め切られた直後にした)
ちょっと気が早いが、鳥越氏の敗因分析をしてみよう。
1.準備不足の立候補
「究極の後出しジャンケン」と小池候補から言われたように、ギリギリになっての立候補宣言はプラスではなくマイナスに働いた。
マイナスの最大要因は準備不足で、そのことが選挙戦を通じて最後まで響いたようだ。
「準備のない戦いはしない」というのは戦いの基本である。仮に立候補の意志を固めていても、周囲にそのことを覚られず密かに準備をし、立ち上がったら一気呵成に攻めるのが戦いの極意と孫子は説いている。
そういう観点ではギリギリの立候補宣言は奇襲にも似て、相手陣営に打撃を与えるに充分なものだが、それも準備あってのことだ。
ところが鳥越氏の場合、その後の会見を見聞きしても、以前から準備していたとはとても思えず、なんの準備、志しもなく突然立候補を「思い立った」ようにしか見えない。実際、本人も参院選の結果を見て、このままではいけないと立候補を決意したと言っていた。
問題は彼の危機感に都民が共感できるかどうかであり、それは立候補に至る動機を都民が理解・納得し、共感できるどうかだ。残念ながら鳥越氏の動機を共有できる都民はそれほど多くはなかったようだ。
2.都政と国政を混同した動機
最も重要なのは立候補の動機だが、鳥越氏の場合「安倍政治にノー」という反アベ。たしかに現在の政治情勢に対し危機感を抱く人は少なくない。ひたすら戦争への道を突き進んでいるという見方はあながち間違いではない。大きな変化は常に小さな変化から起こるし、それを見過ごすか、そこで警鐘を鳴らすかは国の将来を左右する重大な問題である。
としても、それは国政の問題である。もちろん都政も無関係ではないというのもよく分かる。ただ、その危機感を都民が共有してくれるかとなるとかなり疑問だ。
多くの都民はもう少し目先の、都政をどうするかを語って欲しいと思っている。ところが、その点が鳥越氏には欠落している。選挙戦の後半、追い込みになってやっと都政の具体論を語り始めたが、すでに時遅しだ。
もし彼が都知事選でなく、先の参院選に現在のスローガンを掲げ立候補していたならほぼ間違いなく当選していただろうが、都知事選という地方行政のリーダーを選ぶ選挙ではあまりにも抽象的に聞こえる。
抽象的に聞こえるということは政策の中身がない、具体的な政策を考えていないということであり、それは弱点になる。
3.選挙戦術のミス
鳥越氏は事前準備なく選挙戦に入ったから、本来なら選挙戦前にやるべきことを選挙戦突入後も続け、そのことで他候補と違った戦い方、鳥越氏の個性を際立たせようとしたが時間がない中での戦い方としては他の戦術的戦いの方を優先すべきだったと思われる。
個別施設訪問を優先し、街頭立会演説が他候補より極端に少なかったのは知名度アップと、具体的な政策の中身を聞きたいと思っていた有権者の期待に充分応えられたとは言い難いだろう。
4.真剣さで他候補に負けていた
上記選挙戦術のミスと関係し、鳥越氏の演説、動きをTVで観ても、他候補、とりわけ小池氏、益田氏に比べ真剣さに欠ける嫌いがあった。野党連合という組織戦の力を過大評価したのかどうか分からないが、浮動票は案外候補者の熱意、真剣さで動くものでもある。
とにかく熱意・真剣さでは他の2候補に圧倒的な差を付けられたのは間違いない。
5.知名度を優先した野党共闘のミス
野党共闘ができたのは選挙戦ではプラス要因だったが、民進党の一致団結、真剣さが欠けているように映ったのはマイナス面だ。
短期決戦ということから知名度優先で候補者選びをしたのだろうが、その過程でも二転三転フラフラしている印象を都民に与えた。
また都民が今回の都知事選で求めた新リーダーに対する期待を読み間違えたようだ。いままでのように知名度が高い人より、しっかりと都政を担ってくれる人を今回は選びたいと考えていたにもかかわらず、知名度にこだわったのは野党の失敗だ。
具体的な政策、真面目そうな人柄という点では宇都宮健児氏を野党連合候補として応援した方がよほどよかったのではと思うが、後の祭りか。
さて、接戦と伝えられ、開票も行われず、結果も明らかになってない中で、結果予想をし、敗因分析を勝手にしてみたが、結果はどうなっているだろうか。大外れか、それとも予想通りに鳥越氏敗北で終わったか--。
(この原稿は31日10:30メルマガで配信したもの。ブログへのアップは投票が締め切られた直後にした)