栗野的視点(No.709) 2020年10月8日
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「Go toキャンペーン」は喜ぶだけでいいのか。
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10月1日、「Go to トラベル」キャンペーンに東京発着の旅行が加わったことで
各地の観光地は大賑わいになり、宿泊業をはじめ観光需要を当て込んでいた業者は
皆「一息つけた」と顔をほころばせていた。
「Go to」はトラベルだけに限らず、この後様々な業種向けのものも用意されているという。
消費者にとっては安く旅行できたり、安く食べられたりするのだから大歓迎に違いないが、
この「Go to キャンペーン」、素直に喜ぶだけでいいのだろうか。
宿泊料がタダ同然になる
(略)
「Go to」は高級宿ほど恩恵
(略)
ほぼタダになった民宿料金
(略)
「Go to」は税金の無駄遣い
こう見てくると「Go toトラベルキャンペーン」は利用者にとってはいいことずくめの
ように思えるし、このキャンペーンを利用して旅行しなければと多くの人が考えるに違いない。
しかし「待てよ」と言いたい。いいことずくめに思えるキャンペーンだが、喜んでばかりでいいのだろうか。
35%の割り引きにしろ、地域クーポンにしろ、「打ち出の小槌」のようにカネが湧いて
出てくるわけではない。どこかで誰かが割引額を補填しなければならないのはちょっと考えれば分かる。
では、旅館やホテルなどが35%値引きした料金で提供してくれているのか。
それとも旅行会社のサービスか。あるいは旅行関係業者が分割負担しているのか。
今回のCOVID-19騒ぎで売り上げが大幅に落ち込み、中には倒産の危機に瀕しているところも
ある中、その可能性はまずないだろう。
となると「打ち出の小槌」を振って大盤振る舞いしているのはどこなのか。
このキャンペーンを仕掛けた政府である。それなら安心だ、と喜べるか、喜んでいいのか。
無から有を作り出す「打ち出の小槌」など世の中には存在しない。
どこかから原資を持って来なくてはいけないのは「灰色の脳細胞」でなくても分かることだ。
いや、いや、そんなことは簡単だ。日銀に言って紙幣をどんどん刷ればいいだろうって。
そんなコンビニエンスに行ってコピーするのとは訳が違う。
紙幣をどんどん刷れば市中に金が溢れ、ハイパーインフレになる。
ハイパーインフレになると物価はどんどん上がり、国民一人一人が持っている資産価値は
ガタ減りになる。これでは経済活性化どころか、その逆になる。故に紙幣の乱造は考えられない。
ところで今春以降、政府は「新型コロナウイルス」関係でかなりの資金を投入している。
そして今また「経済対策」という名の下に「Go toキャンペーン」を仕掛けている。
その金はいずれも国庫から出ているわけで、元をただせば税金だ。
税金である以上、入って来る金と出ていく金はきちんと管理されなければならない。
収入と支出のバランスを取るのが本来の姿だが、短期的には支出の方が多いこともあるだろう。
個人でも会社でも国でも同じだが、「財布」に金がなくなれば借金をせざるを得ない。
しかし、借りた金は時期は別にしても必ず返さなければならないが、まずどこから借りるのか。
企業の場合は銀行等から、国は赤字国債の発行という形で当座の資金を手当てする。
我が国は健全財政とはいえず借金まみれと言っていい状態になっている。
借金返済を未来に先延ばししながらやってきているわけだ。
そこにもってきて今回の「新型コロナ」である。休業補償だ、一律給付だと予定外の支出が増えている。
与野党ともに国の財政のことは後回しにして、人気取りでどんどん、速やかに支給しろと
いう論議ばかりが罷り通る。たしかに出血している怪我人を前にすれば、まず止血する必要がある。
それは分かるが怪我をしていようがいまいが関係なく、とにかく薬を与え包帯をグルグル巻きに
する必要があるのだろうか。それではいくら金があっても足りなくなるし、
不足した資金を補うためにまた借金を重ねるということになる。
もちろん、現在の支出は一時的なもので経済が好転すれば税金として国庫に入って来る金が
増える、というのも分かる。
それは今行っている政策が有効な場合だが、「Go toキャンペーン」がそれほど有効とも思えない。
というのは、皆すでに自粛疲れで外出したがっているわけで、キャンペーンがあろうが
なかろうが、外出自粛が解禁されれば旅行に行っているだろう。
もちろんキャンペーンで旅行代金が安くなれば旅行に行く人の数は増えるだろうが、
そのための支出分と、キャンペーンで増えた人の支出分を計算すれば後者の方が圧倒的に
多いとはならないのではないか。むしろ前者の支出の方が多いのではないかと考える。
その辺りのことはきっちり検証する必要があるし、ムダに税金を使ったのでは
逆に国民の負担が増えるだけだ。
このところ政権の人気取り政策ばかりが目立つように思うが、
我々国民の側も旅行代金が安くなると喜ぶだけではなく、
収支決算や将来も見据えてしっかり考える必要があるだろう。
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