くまわん雑記

時々問い合わせがありますが、「くまわん」というのは、ある地方の方言です。意味はヒミツです。知る人ぞ知るということで。

胡散臭い「川島芳子ブーム」

2008年12月07日 | Weblog
ブームというほどではないかもしれないが、今年になって川島芳子という名を耳にすることが多くなった。昨晩もドラマをやっていた。

川島芳子とは言わずと知れた「男装の麗人」、「東洋のマタハリ」と呼ばれた、人のことだが、どの番組もおおよその描き方は歴史に翻弄された悲劇の人。

そしてここでいう「歴史」とは「日本の中国侵略の歴史」ということになる。

昨晩のドラマもひどかった。中村トオル演じる甘粕は、かつての映画「ラスト・エンペラー」で同人物を演じた坂本龍一にもまさる「悪党」ぶりであった。

それよりも毎回芳子関連の番組に出てきて気になっているのは、「川島芳子=中国人」という図式である。この図式には、説明を加えないと、大いなる誤解が生じかねない。言うまでもなく、芳子は漢民族ではない。満族である。しかも、親族かつ宗家にあたる溥儀同様、彼女は事実上漢民族の支配下にある中華民国という「中国」を憎悪していたのだ。つまり、彼女が認識するところの「中国」ないしは「中国人」と、当時そして今日の大陸の大多数の中国の国民が抱く認識との間には、差異があるのだ。

ましてや、彼女は、満州という歴史的に見て漢民族の土地ではない土地を中国すなわち中華民国から切り離し、満州王朝である清朝の復僻をもくろむ運動に加担した、一人なのだ。中国人の大方をなす漢民族とは異なった方向を志向した「中国人」だったのだ。

それら点をほとんど理解していないであろう視聴者に向けて、芳子役を演じる女優たちに「中国人」を語らせるのは、あたかも、悲劇の人物芳子と「日本の中国侵略」による中国の悲劇を二重写しのイメージを発信しかねない。

それは上述の事実を看過した正確さに欠ける歴史認識である。

こうしたいい加減な番組作りは、制作側の無知によるものなのか、それとも・・。
もしかりに、川島芳子をして「日本の中国侵略」の犠牲となった悲劇のヒロインとして描こうとする明確な意思を制作側が持っていたとしたら・・・・。

今年で芳子が刑死して60年(替え玉説も最近再びかまびすしいが)、そういこともあってのTVでの「芳子ブーム」なのかもしれないが、果たしてそれだけなのだろうか。

数年前にも芳子の娘をなのる中国人女性がTVに出ていたが、つい最近も彼女を見た。つまり60年前に顔面を打ち抜かれて死んだ芳子は、替え玉で、その後結婚した本物の芳子が、その女性を産んだというものである。ただ、その後の芳子の消息は明確ではなく、1950年代初めに複数の何者かによって夫ともども殺害されたという説もあれば、30年前まで生きていたという説もある。

いずれにせよ、満州在住の娘を名乗る女性がTVに出てくるということは、中国側が日本人TVクルーの取材を許可したということだが、ここで、中国側の思惑を勘ぐるというのはゲスのなんとかだろうか?日本のメディアと中国側が結託をして「川島芳子ブーム」を、とまでは言うまい。そのような証拠もない。しかしながら、60年というだけで、ここまで立て続けに芳子を取り上げる理由は一体どこにあるのか。歴史認識をめぐる世論操作的なもの、そうした思惑が背後にある、というのはこれまたゲスのなんとかというものだろうか?

コメント
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