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居酒屋さすらい 0404 - 滅びゆく屋台にて - 「丸美屋」(仙台市青葉区あおば通)

2011-01-17 12:30:43 | 居酒屋さすらい ◆地方版
「呑ンベエ」を出ると時刻はもう23時近くになっていた。
さて、ホテルに戻るかと、とぼとぼと帰路を歩いていると、青葉通りに差し掛かったところで、屋台の店に出くわした。
「ほぅ、なんと珍しい」と思い、ほろ酔いの勢いでビニールをめくってみた。
すると裸電球に照られて何人かの客と目が合うと、彼らは「どうぞ、ぞうど」と私に声をかけてくれ、席まで用意してくれたのだった。

10人も座れば、いっぱいになってしまうほどの小さな屋台。
広さは3畳もない。
だが、驚くほどこの空間が機能的なのである。

お客はわたしを含めて8人。
屋台と聞くと一瞬、オヤジたちの巣窟というイメージが頭をよぎるだろう。だが、この「丸美屋」は違っていた。
40歳代後半と思しき夫婦がいたが、わたしを含めて30歳代が2人、20歳代の男性と、女性3人組も確実に20歳代である。
この後、数人の女性が来店するのだが、この方々も皆20歳代に見える。

店のオヤジさんはもう60歳を過ぎた頃だろうか。
寡黙に仕事をこなしている。
だが、このオヤジさんがこの若い女性たちに大変な支持を得ているようなのである。
若い女性たちもオヤジさんの名前を呼びつつ、いろいろ話しをするのだが、オヤジさんはそれにはあまり多くは答えず、ボソッと小さな声で簡潔に返答するのだった。

わたしは、日本酒の熱燗を頼んだ。
お酒は年季の入った小さなやかんに注がれ、コンロにかけられる。やがて、それが沸騰するとコップに注いで、わたしに手渡してくれた。

わたしの左隣のお客さんは30歳代の女性、その隣に20歳代の男性が座っている。はじめはこの男女は連れなのかと思ったが、そうではなかった。
しばらくすると男性は「じゃ、またどこかで会いましょう」と言って店を出ていった。

隣の女性が語るに「仙台の屋台は既得権なんです」と言う。
女性の説明を要約すると仙台市内の屋台の権利は、その店主にだけ与えられたもので、その店主が廃業した場合、その権利を誰も受け継ぐことはできない。このため、戦後470件あった屋台は今や、この「丸美屋」と「村木屋」の2軒になってしまったという。
オヤジさんの顔を眺めながら、わたしはその話しを聞いた。黙々と働く親父さんはまさに戦後復興の生き証人である。

さて、丸美屋のメニューは看板が「お好み焼き」と「焼きそば」、そして「おでん」である。
おでんは1品100円。そこで、わたしは「ウィンナー」と「大根」、そして「玉子」を頂く。
このおでんがうまかった。
塩味のスープは関東煮とは全く違う味付け。その味はしっかり沁みわたりホクホクである。
おでんはまさに屋台の王様だ。冷えた体ぬい温もりがもどりつつある。

ところで、オヤジさんの前に位置する大きな鉄板。これ1枚で様々なメニューが魔法のように繰り出される。特にお好み焼きは人気メニューのようで、若い女性たちが嬉々とした顔で食べていた。

何杯、お酒をお代わりしたか。
ついつい、隣の女性と話が盛り上がってしまい、図書館司書をしているというその女性と図書館の現状から、電子書籍の話題に至るまで、ついつい語ってしまった。時計を見ると、もう日付がとっくに変わっている。
見ると、オヤジさんも片付けの準備に入っている。

楽しい時間をありがとう。
そして、オヤジさんいつまでもお元気で。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
まだ健在でしたか (aerobear)
2011-02-11 18:06:53
仙台勤務時代に週末よく行きました。
おじさん一代限りで、丸美屋もなくなってしまうとなんだかせつないです。
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気持ち分かります (熊猫刑事)
2011-02-11 21:58:24
aerobearさん、こんばんは。
たった一度しか行っていないわたしですら、オヤジさんがいつまでもご健在であるようにと祈りながら店を後にしました。
本当に若者に支持されていたのですね。
是非、再訪したいです。
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