上野公園にある「国立国会図書館国際子ども図書館」をご存知だろうか。元帝国図書館で明治期竣工の建物である。名建築もさることながら、子どもの書物のラインナップが素晴らしい。世界中の絵本が見られる他、町の図書館にはない児童本にも出会える。明治期の建築と合わせて、心癒される空間だ。
大学の卒論を書いている時、ほぼ毎月、ここに通い資料を漁った。来る度に発見があり、その膨大な書物を前にして、どこから手をつけていいのか分からず呆然としたこともある。そんな時は館内に併設されているカフェでリフレッシュした。
今回、久しぶりに図書館を訪れた。人影がなく、ひっそりとした館内は寒々しい。コロナ社会はこうした公共サービスにも影響を及ぼしている。
カフェにも足を運んだ。
「カフェ ベル」。
公共サービスのカフェだから、確かに垢抜けない。ただ、その朴訥で質素な雰囲気だからこそ味わえる特別さもある。決してお洒落ではないテーブルだが、建物の中庭を見ながら、落ち着いた気持ちでお茶をいただけるのは、ここだけの特権だ。ともすれば、ここが上野の山であることを忘れてしまうほどである。その中庭は季節によって表情を変える。その移ろう季節を眺めることも楽しみのひとつである。
その「カフェ ベル」で毎回楽しみにしているのが「カレー」。カレーソース自体は朴訥で、特に書き記すトピックはない。けれど、僅か410円で、こんなに豊かな気持ちにさせてくれるカレーはあまりない。
白亜の四角いプレートが美しい。ご飯と福神漬けは荒々しく盛られているが、その向こうに見えるカレーソースの海は穏やかだ。ほぼ凪の状態といっていい。この荒々しい山はともすると上野のお山に見えてきて興味深い。そして、この何気ない盛り方にアートすら感じてしまうのだ。
カレーソースは若干スパイスが効いている。昔、幼き頃の子どもと、ここでカレーをいただいた時、子どもらは「辛い」と言った。確かに、少し辛味があった。それは唐辛子系ではなく、確かにスパイスのもの。子ども図書館でも、単なる甘いカレーに終始する訳ではないと感心したものだ。
多分、上野公園の中でも穴場中の穴場なカフェではないだろうか。
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