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居酒屋さすらい 0788 - ウナギの真髄 - 「カブト」(新宿区西新宿)

2014-10-06 22:53:44 | 居酒屋さすらい ◆東京都内

「ぼるが」を出ると、突然Uちーさんは「カブト」に行こうと言い出した。

あのしょんべん横町の店である。

南側の入口からしょん便横丁を入り、少し行くと道はクランクになる。そのクランクの原因となっているのが「カブト」だ。

しかし、このクランクは不思議だ。

戦後の闇市を起源とする、このしょん便横町と昭和28年創業の「カブト」。このクランクにはどのようなドラマがあったのだろうか。

 

ともあれ、このクランクに沿って歩くことなく、我々は突き当りをそのまま店内へと突進する。

紺に染められた暖簾をくぐり、そうしてカウンターの席にすっぽり納まった。

今まで何気なくこの店の前を通っていたが、この日初めて「カブト」がウナギの店であることを知る。

席に着くなり、おばちゃんが我々にこう言った。

「一通りでいい?」

何を言われているか理解できない我々は、ほぼ同時に「え?」と聞き返した。

「ウナギの串を一通りよ」。

言葉の意味は分からないが、とにかくすごい自信だ。と思いつつ、とりあえず、それでいいだろうという結論に至った。

 

ウナギは蒲焼と肝焼きしか知らない。たまに背骨の煎餅が出てくるところもあるが、この「カブト」では捨てる部位がないらしい。

例えば、「えり」。これは頭の部分。そして「せびれ」に「はらびれ」「しっぽ」ときて、「肝」に「レバー」。そしてようやく「蒲焼」である。

これらを余すことなく、串焼きにしているのだから、目から鱗だ。

 

飲み物は酒に焼酎、ビールと一通り揃っている。

ビールはすでに散々飲んできたし、ウナギの脂に酒は合わないから、ここは焼酎を一杯。

そうすると、例の小さなコップと皿が出てきて、大衆酒場によくあるなみなみとその液体を注ぎ、受け皿に少しこぼれる注ぎ方を、さも簡単そうにお店のお兄ちゃんは厨房の向こうからやってくれるのだった。

お!冷やのストレート。さすが酎は「キンミヤ」。

そのグラスに口をつけると、まるでそれが合図だったかのように、目の前に串焼きが登場する。

その都度、お店のおばちゃんが「えり焼きね」とか「尻尾ね」などと、まるでフレンチのコースのように、部位を紹介してくれるのだ。

 

しかし、全ての部位が食べられるウナギには恐れ入る。

「まるます家」も成田の「川豊」も、こんな食べ方では出してくれない。ということは、普通であれば、これらは捨てられているのだろう。

ところがどうだろう。この一見ゲテモノのような部位は見事においしい。

脂はあるが、全然しつこくないのだ。

 

そしてストレートで飲むキンミヤが実にまたうまい。口に残った脂分をきれいに清めてくれる。日本酒ならこうもいかないだろう。

さて、おばちゃんの言う「一通り」も「これが最後ね」という局面に差し掛かったころ、客の大半はもうほとんどが店から消えていた。時刻はまだ20時45分である。

そうして、5分もしないうちに残りの客も波がひくようにきれいにいなくなった。客は我々だけなのである。

 

最後の「蒲焼」があまりにもおいしくて、チビチビ食べていると、店の古時計が21時を指し、我々は「看板です」との声とともに、これまた波が引くように店から出されてしまった。

合計7本のウナギの串焼き。

こんな食べ方があったのだとただただ茫然と立ち尽くす。

本当においしかったのだ。

一通り食べても僅か1,540円。

まさにこれは江戸っ子の知恵というものではないだろうか。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これはいい (ふらいんぐふりーまん)
2014-10-08 13:47:03

この店はいい。間違いなく、いいと思う。
行ってみてえよ。

返信する
Unknown (熊猫)
2014-10-08 16:13:39
ウナギも高値になっているから、時が経てば経つほど、難しくなるぞ。

だから、来年は東京に来てくれ、師よ。
返信する

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