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BASEBALL馬鹿 BLOG

オレたちの「深夜特急」~マレーシア編 マラッカ②~

2012-09-26 13:57:39 | オレたちの「深夜特急」
燃えてしまいそうな夕陽だった。
オレンジ色の、線香花火の火球のような鮮烈な光が微かに輪郭をゆらめかしながら、マラッカ海峡に落ちていく。

わたしは桟橋を駆け出してその突端に向かった。
確かに「マラッカ海峡に沈む夕日は大きくて赤い」。
だが、それよりもわたしを感動させたのは、凪いだ海面に夕陽が映り、その青がオレンジと溶けて不思議な風景を作り出している。
なんて、きれいなのだろうか。
わたしは海から吹いてくる黄昏の風に吹かれながら、その幻想的な光景を身じろぎもせずに見ていた。
空の色が刻一刻と変わっていく度に、日々の営みの偉大さに気づく。わたしはただただ流れに任せ、アジアの人波に揉まれながら、何を損したとか、何を得したとかしか考えないまま、バスに揺られてきた。だが、こうして自然の偉大な光景の前に、なんと浅はかな思いを抱いて旅をしてきたのかと愕然とさせられる。

完全に日が沈み、夜の帳がおりても、わたしはまだそこを離れられないでいた。やがて、星が瞬きはじめ、夜の海の音が聞こえてきたころ、わたしはそこを離れ、ビールを飲みに出かけた。

マラッカの街はひっそりとしていたが、時折食堂が開いており、わたしは店を冷やかしながら腰が落ち着けそうな場所を探した。
「Steam Boat」と書かれた店がやけに多く、一体なんだろうと思って観察してみると、それは「海鮮鍋」であることが分かった。
一人で食べる鍋は寂しいが仕方ない。
わたしは店に入り、海鮮鍋を1人前ほど頼んだ。
タイガービールを頼んで、夜風に吹かれながら待っていると、やがて中華系の女の子がくぐもったグラスと共にそれらをテーブルに運んでくる。

瓶ビールのラベルにはゴキブリの羽の様なものがべったりとついてあって、辟易したが、ビールの味は最高だった。
燃えてしまいそうな夕日を見ただけで、ここに来た甲斐があったと思った。
わたしは少し上機嫌でビールを飲み干した。

翌日から、マラッカの天候は悪くなった。
時折、雨が降る天候にわたしは市街に出られず、おおむね近所の大きなショッピングセンターに出向くだけだった。
西洋の薫りが漂う街並みがマラッカのハイライトともいえたが、結局翌日も天気はふるわず、初日に見た夕陽が、最初で最後となった。

その夕陽を脳裏に刻み、3日間を過ごしたマラッカに別れを告げたわたしは、マレーシアの首都、クアラルンプールに向けて出発した。
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夕日 (ふらいんぐふりーまん)
2012-10-01 13:13:04
 俺のマレーシアは、ジョホールバルは数時間で素通り。(国境通過のみ)そしてその後も、列車でクアラルンプール一直線だった。

 マラッカに立ち寄ることもなく、クアラルンプールでも長く滞在することなく、リゾート地パンコールのばばちいハットで、中国正月の中での激しい孤独に嫌というほど打ちのめされ、逃げるようにペナンへと移動し、ここでも寂しくてタイへ結構な勢いで移動するという、駆け足状態だったからなあ・・・。

 そんな訳で感慨深く夕日を見るなんてことはなかったよ。

 パンコールで見た海に沈んでいく夕日。メッチャ寂しい気分になったなあ・・・。

 それにしても、マラッカにも、マレーシア東側のジャングルにも立ち寄ってない俺。この頃、かなり色々と参ってたんだなと思うよ。

 一方師は、マレーシアを楽しんでるね。ゆったりと旅を楽しむ師の姿が目に浮かんでくるようだよ。

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Unknown (熊猫)
2012-10-02 08:20:25
師よ。
いやいや、師の場合、パンコール島が濃いから(笑い)。

シンガポール、マラッカ、KL、結構、近距離だからね。
ついつい、すっ飛ばしたくなるね。

次回、KL編は、大使館に師の手紙を探しにいくよ。
返信する

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