
浜松町にめぼしいカレー屋が少ない。おいしいと感動したのは、以前読者の方から教えていただいた「マサラキッチン」(「カレーさすらひ」未収録)か、喫茶店「カロライナ」のカレー(同)くらい。大門の交差点にあるビルの上階のインド料理店は入る気にならないし。貿易センタービルの地階にある飲食店のカレーはいずれも高いし。唯一、「からころカレー」は安価だが、お店の雰囲気は最悪で、端から行くつもりはない。そうすると残っているのは、讃岐風のうどん屋で「カレーうどん」を食べるくらいか。
平日の14時30分は客もまばらだった。厨房を担当するのはアーリア系の女性。一瞬、インド料理のお店に入ってしまったかと錯覚したくらい。その女性がうどんを湯がいて、お湯をきって、カレーのつゆをかけて、調理をしてくれる。それだけでたちまち、「カレーうどん」に魔法がかけられたかのように、おいしく見えるから不思議だ。
「カレーうどん」、400円。
トレーに乗せて席を探していると、カレーの香りが立ち上ぼり、食欲をそそる。たまらない香りだ。
席に着いて、まずはつゆからいただくと、ちょっととろみがついた和出汁の風味が鼻を抜ける。
うまいよ。断然うまいよ。
うどんの麺ももっちり。
しかし、何故うどんとカレーの相性はいいのだろう。これがラーメンならそうはいかない。蕎麦も然り。うどんだからこそ味わえるカレーとのスペクタクル。
ずずずっとやれば、カレーと絡んだうどんがストンと口に入ってくる。その動作がもはや止まらない。額からは微かに汗が滲み、うどんがなくなっても、つゆを欲して丼を傾ける。無我夢中に、いや一心不乱に「カレーうどん」と格闘した。
「カレーうどん」て、なんだか突然食べたくなるんだよな。