
師走の土曜日出勤。すぐ終わるだろうとタカをくくっていた仕事は18時頃ようやく終わった。
精神的にも身体的にも、この頃が一番辛かった。
仕事が佳境を迎え、締め切りの重圧に酒量が増えた。6日間続けての外飲み。さすがに、昨夜の金曜日は体が重くて、コンビニ弁当を家で平らげた。そう、家には妻も娘もいない。それが、またわたしの心を空虚なものにしているようだ。
会社を出て、JR線の高架沿いを歩く。
仕事は、まだ終わっていないが、一通りのめどは付けた。
どうせ、ウチに帰っても出迎えてくれる人もいないひとり身、今晩は立ち飲み屋にでも寄っていこうか。
行くお店は決まっていた。
アメ横脇、「肉の大山」である。
読んで字の如く、お肉屋、もっと厳密に言えば肉の卸問屋さんなのだが、そのメニューが焼き鳥からステーキまで幅広い。特にわたしは、この店の「豚の角煮」をお奨めしたい(『居酒屋放浪記NO.0003』を参照のこと)。とにかく、肉料理のことならお任せあれ、という店なのだ。
そしてこの店、何を隠そうか、店の入り口には立ち飲みスペースを設けており、とにかくもういつも賑わっているのである。
JR御徒町駅を通り過ぎると、目の前はもうアメ屋横丁。
年末の土曜日は多くの人でごった返している。
生鮮品がとにかく安い。毎年、お正月の準備などで、年末最後の週末には約50万人超が、アメ横を訪れる。
小生も、幼少の頃、母の手に連れられて、年末のアメ横に買出しに来たもんだ。
バラックで建てられたオンボロの店といい、魚屋独特のダミ声を発するおっさん。押し合いへし合いの民衆。小さいわたしの記憶には何か空恐ろしい恐怖感ばかりがやたらと残っている。
「市民マーケットの象徴『アメ横』は闇市の発展形態」(『東京裏路地《懐》職紀行』ブラボー川上、藤木TDC著=ちくま文庫)
という胡散臭さは、今もなお色褪せることない。
更に上野駅方面に、アメ横を分け入っていくと人がどんどん増えていく。どこからか音楽が聞こえ、電車のレールのリズムとパチンコ店の大音響などが入り混じって、ごった煮のような通りは喧騒に包まれる。
すると、またしても繁華な十字路に出た。
そうここは、前回の「立ち飲みラリー」の終着点、「立飲み たきおか」(『居酒屋放浪記NO.0102』)のある通りである。
実は、今日行こうとしている「肉の大山」は「立飲み たきおか」の斜め前に位置しているのだ。その距離僅か5m。「立ち飲みラリー」史上、最短の移動距離である。
そもそも、これまでの「立ち飲みラリー」では、1駅1店という形で、立ち飲み屋さんにお邪魔してきた。それが、もう御徒町~上野間で、すでに3店目のである。
山手線の所要時間で1分にも満たない駅間で、これだけの立ち飲み屋が軒を連ねているのだ。
さて、「肉の大山」である。
今晩も店先は、ぼうぼうと焼き鳥を焼く白煙が脂の滴り落ちる音と共に辺りを包んでいる。立ち飲みスペースは、その焼き鳥を焼くブースの脇に、長さ3mほどのカウンターによって設けられている。
もちろん、屋外だ。
ここは、立ち飲み屋、というより、立ち飲みするスペースを店側が提供してくれている、といったほうが正確であろう。
ともあれ、店頭の立ち飲みカウンターに居場所を確保して、わたしは焼き鳥ブースに生ビールとコロッケを注文した。
生ビールは、ちゃんとしたジョッキに注がれる正真正銘のビール。380円也。
そして、あつあつのコロッケが1個50円。
お金を払い、ジョッキとコロッケを受け取って自陣へ。
そして、おもむろにコロッケにかぶりつく。
ホクホクのコロッケが口の中でほぐれると、おぉ!あっちっち。
そして、ジョッキを口に運ぶのである。
その昔、「ブロイ」という発泡酒があった。
そのCMの中で、俳優の椎名桔平さんと石田ゆり子さんが、コロッケを頬張りながら、発泡酒を飲んでいた。そのうまそうなことっていったら、もう。
素朴だが、実は最良のビールのお供。それがコロッケではないか。
僅か430円で味わえる最高の贅沢ガ、ここにはあるナリ(コロ助風に)。(『キテレツ大百科』=藤子・F・不二雄原作)
周囲を見渡すと、おっさんばかりの客層ではない。
20代前半の2人組が、やはりジョッキを片手にコロッケにかぶりついている。或いは、一人で焼き鳥だけを貪る若い女性もいる。やはり、料理はアツアツが最高なのである。
コロッケを食べ終わって、まだ少し物足りない。
わたしは、生ビールのお代わりとともに、ハムカツ(70円)を注文した。
ハムカツもコロッケに負けず劣らずパリっと香ばしかった。
サクサクに揚げた衣は、こんがり狐色。
カウンターに備えられているソースをかけて、またしても貪る。
ジワーっと口の中でハムの脂が溶けていく。
いやはや何てウマイんだろう。
滞在時間、僅か20分。
使ったお金、880円。
だが、気分はもう王侯のようである。
精神的にも身体的にも、この頃が一番辛かった。
仕事が佳境を迎え、締め切りの重圧に酒量が増えた。6日間続けての外飲み。さすがに、昨夜の金曜日は体が重くて、コンビニ弁当を家で平らげた。そう、家には妻も娘もいない。それが、またわたしの心を空虚なものにしているようだ。
会社を出て、JR線の高架沿いを歩く。
仕事は、まだ終わっていないが、一通りのめどは付けた。
どうせ、ウチに帰っても出迎えてくれる人もいないひとり身、今晩は立ち飲み屋にでも寄っていこうか。
行くお店は決まっていた。
アメ横脇、「肉の大山」である。
読んで字の如く、お肉屋、もっと厳密に言えば肉の卸問屋さんなのだが、そのメニューが焼き鳥からステーキまで幅広い。特にわたしは、この店の「豚の角煮」をお奨めしたい(『居酒屋放浪記NO.0003』を参照のこと)。とにかく、肉料理のことならお任せあれ、という店なのだ。
そしてこの店、何を隠そうか、店の入り口には立ち飲みスペースを設けており、とにかくもういつも賑わっているのである。
JR御徒町駅を通り過ぎると、目の前はもうアメ屋横丁。
年末の土曜日は多くの人でごった返している。
生鮮品がとにかく安い。毎年、お正月の準備などで、年末最後の週末には約50万人超が、アメ横を訪れる。
小生も、幼少の頃、母の手に連れられて、年末のアメ横に買出しに来たもんだ。
バラックで建てられたオンボロの店といい、魚屋独特のダミ声を発するおっさん。押し合いへし合いの民衆。小さいわたしの記憶には何か空恐ろしい恐怖感ばかりがやたらと残っている。
「市民マーケットの象徴『アメ横』は闇市の発展形態」(『東京裏路地《懐》職紀行』ブラボー川上、藤木TDC著=ちくま文庫)
という胡散臭さは、今もなお色褪せることない。
更に上野駅方面に、アメ横を分け入っていくと人がどんどん増えていく。どこからか音楽が聞こえ、電車のレールのリズムとパチンコ店の大音響などが入り混じって、ごった煮のような通りは喧騒に包まれる。
すると、またしても繁華な十字路に出た。
そうここは、前回の「立ち飲みラリー」の終着点、「立飲み たきおか」(『居酒屋放浪記NO.0102』)のある通りである。
実は、今日行こうとしている「肉の大山」は「立飲み たきおか」の斜め前に位置しているのだ。その距離僅か5m。「立ち飲みラリー」史上、最短の移動距離である。
そもそも、これまでの「立ち飲みラリー」では、1駅1店という形で、立ち飲み屋さんにお邪魔してきた。それが、もう御徒町~上野間で、すでに3店目のである。
山手線の所要時間で1分にも満たない駅間で、これだけの立ち飲み屋が軒を連ねているのだ。
さて、「肉の大山」である。
今晩も店先は、ぼうぼうと焼き鳥を焼く白煙が脂の滴り落ちる音と共に辺りを包んでいる。立ち飲みスペースは、その焼き鳥を焼くブースの脇に、長さ3mほどのカウンターによって設けられている。
もちろん、屋外だ。
ここは、立ち飲み屋、というより、立ち飲みするスペースを店側が提供してくれている、といったほうが正確であろう。
ともあれ、店頭の立ち飲みカウンターに居場所を確保して、わたしは焼き鳥ブースに生ビールとコロッケを注文した。
生ビールは、ちゃんとしたジョッキに注がれる正真正銘のビール。380円也。
そして、あつあつのコロッケが1個50円。
お金を払い、ジョッキとコロッケを受け取って自陣へ。
そして、おもむろにコロッケにかぶりつく。
ホクホクのコロッケが口の中でほぐれると、おぉ!あっちっち。
そして、ジョッキを口に運ぶのである。
その昔、「ブロイ」という発泡酒があった。
そのCMの中で、俳優の椎名桔平さんと石田ゆり子さんが、コロッケを頬張りながら、発泡酒を飲んでいた。そのうまそうなことっていったら、もう。
素朴だが、実は最良のビールのお供。それがコロッケではないか。
僅か430円で味わえる最高の贅沢ガ、ここにはあるナリ(コロ助風に)。(『キテレツ大百科』=藤子・F・不二雄原作)
周囲を見渡すと、おっさんばかりの客層ではない。
20代前半の2人組が、やはりジョッキを片手にコロッケにかぶりついている。或いは、一人で焼き鳥だけを貪る若い女性もいる。やはり、料理はアツアツが最高なのである。
コロッケを食べ終わって、まだ少し物足りない。
わたしは、生ビールのお代わりとともに、ハムカツ(70円)を注文した。
ハムカツもコロッケに負けず劣らずパリっと香ばしかった。
サクサクに揚げた衣は、こんがり狐色。
カウンターに備えられているソースをかけて、またしても貪る。
ジワーっと口の中でハムの脂が溶けていく。
いやはや何てウマイんだろう。
滞在時間、僅か20分。
使ったお金、880円。
だが、気分はもう王侯のようである。
立ち飲みのスペースがある店だね。
小腹が空いたら、寄っていく、そんなスタンスがぴったりです。
「手ぶらでジャンパー」
うんうん。
いい表現です。
絶妙!