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BASEBALL馬鹿 BLOG

オレたちの「深夜特急」~マレーシア編 ペナン①~

2012-12-26 23:02:58 | オレたちの「深夜特急」
「イエス!ペナン!」。
馬春田の言葉にブラジル人の船乗りも続く。「深夜特急」の「わたし」が香港のゴールデンパレスで出会った馬春田の強烈なインパクトとともに、その言葉は多くの読者の脳裏に刻まれたに違いない。

バターワースは快晴だった。
青い空がどこまでも広がり、やや湿った空気が、わたしに吹き付ける。海の風だった。マラッカとは違う海の風。軽快で楽しくなるような風。

ペナンは目前にあった。マラッカ海峡を挟んで眼前に。
バターワースからペナンのジョージタウンまではフェリーで20分ほどである。

わたしは、この20分ばかりのフェリーの旅を心待ちにしていた。それは、あの香港のスターフェリーの記憶があまりにも鮮烈であったからだ。たかだか7分程度の航海だが、波に揺られ、風に吹かれながら、香港島にひしめくビル群を眺めていると、いかに本当に自分は旅の非日常を歩いていることに気づかされる。わたしだけの時間であることに。

こうして、ジョージタウンへ向かうフェリーに乗ると、あのときと同じ感慨がよみがえってくる。
船の中は地元の人ばかりで、他にバックパッカーは見かけなかった。わたしは、船上のデッキで潮の匂いをかぎ、強い日射しの太陽に灼かれながら微かに見えるペナン島を見た。

クアラルンプールの都会の空気から解放されたわたしは目の前に待ち受けている島の暮らしに思いを馳せた。
少しずつ、その全容を明らかにするジョージタウンには、それほど高い建物がなく、こぢんまりとした街のようだった。

ジョージタウンに泊まってもいいかなと思った。
だが、旅行者がそれほど多くもない片田舎の町に行ってみたいとも考えた。しかし、具体的な宿泊地のアイデアはなく、全ては偶然に身を任せようと思っていた。

やがて、フェリーがジョージタウンの艀に横たえ、20分の航海を終えると、わたしは大きく深呼吸をしてジョージタウンの空気を吸い、外に出ることにした。すると案の定、タクシードライバーやトライショーのおっさんがフェリー乗り場の出口に待ち構えているのを見て、思わずわたしは苦笑をしてしまった。
ちょっと待て。
ここは、一端食堂で心を落ち着けようじゃないか。わたしはシンガポールで得た教訓を反芻した。早口でまくしたてるトライショーのおっさんを押しのけ、わたしは目の前の食堂に入り、腰を下ろした。

「テー・タリ」を飲み、タバコを1本吸って店を出ると一人のタクシードライバーがわたしを待っていた。

「どこへ行くんだ?」
40歳を過ぎたと思われる男は神経質な物言いでわたしに尋ねた。
「ノーアイディア」。
彼を試すようにわたしは聞いた。

「オレの知ってる宿に行かないか?」
タクシードライバーの常套手段は、国境を問わないらしい。

「そこはゆっくり出来るところか?
「あぁ、ビーチがあって、いいところだ」
などと言う。

「一泊いくらの宿なんだい?」
わたしは一応尋ねてみた。
すると、運転手は表情ひとつ変えず「15リンギット」と言う。話しにならない。宿代に400円も払っていられない。

「グッドバイ」と言って、その場を離れると、案の定、彼はついてくる。
「じゃ、こうしよう。その宿まで本来なら8リンギットを頂いているが、フリーでいいよ」。
どうにも胡散臭い話しだ。
「いや、もっと安い宿に泊まるからいいよ」と彼を突き放すと、「OK、分かった」と言って宿代は12リンギットまで下がった。もう少し下がるような気もしたが、タクシーがフリーならそれでいいかなと思い、彼のタクシーに乗せてもらうことにした。

タクシーは海岸沿いの道を進んだ。
その宿にはすぐさま着くものだと思っていたが、10分経っても20分経っても着かない。さすがに、心配になって、わたしはドライバーに聞いた。
「遠いのか?」。
すると、彼ら特有の楽観的な名調子が返ってきた。
「いや、もうすぐだ」。

それから10分程度は走っただろうか。ようやく辿り着いたのは1軒の洋風の民家だった。古い建物だが、豪壮な感じの大きなお屋敷といったあんばいの民家である。
わたしは、この建物に見覚えがあった。
だから、タクシーを降りて、すぐさまちょっとした歓声を漏らした。
その民家は大沢たかおさんが主演したドラマの「深夜特急」で使われたゲストハウスだったからである。


※当コーナーは、親愛なる友人、ふらいんぐふりーまん師と同時進行形式で書き綴っています。並行して語られる物語として鬼飛(おにとび)ブログと合わせて読むと2度おいしいです。
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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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中々 (ふらいんぐふりーまん)
2012-12-28 22:04:32
 面白い体験したなあ・・・。

 まあ、日本人ならその宿に連れていけば喜ぶと知ってて、その運ちゃんはそこに連れて行ったのかなとも思うけど。

 さて、その宿が実際はどんな宿なのか、楽しみだな。



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Unknown (熊猫)
2012-12-29 15:56:13
バトゥフェリンギビーチという場所で、ロケーションが良かった。
思わず長居をしてしまったから、居心地もよかった。

ご飯もおいしかったなぁ。

カメラを盗まれているから、まったく写真がないのが残念だけどね。
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