居酒屋さすらい 1812 - 時は流れて - 「H川さんとのオンライン飲み会」（自宅）

お盆休み中、元上司のH川さんから、オンライン飲み会の誘いを受けた。フリーになった自分の近況が知りたいらしい。

ズームで行ったオンライン飲み会は約2時間に及び、久しぶりに腹から笑える機会になった。やっぱり人と会って、話しをするのは大切だと思った夜だった。

H川さんと初めて話しをしたのは22年くらい前に遡るか。成増のEテクニクスジャパンの取材に行った折、顔を合わせた。翌年、H川さんは会社を移籍し、周囲を驚かせ、しばらく経ったある日、思いがけない誘いを受けた。

「一緒にやらないか」。

当時の自分も袋小路に入っていた。やり甲斐はあったが、その前年、会社に社長の実兄が入社し副社長に就任した。大手石油会社Eオスを定年退職し、会社に入ってきたのだ。しばらくすると、嫌な噂が流れてきた。経理を担当していた女性が、「副社長には気をつけて」と言い残して退職した。社員数人の会社である。その真意が分からないまま、しばらく経ったある日、副社長の極めてグレーな経理が発覚した。社員には、「もっと稼げ」と煽った副社長が、利益の一部を貪るようなことをしていた。当時、会社のリーダーを仰せつかった自分にとってはあまりに衝撃的な事件だった。自分の心は揺れていた。そんな時、誘ってくれたのが、H川さんだった。二つ返事で承諾した。

H川さんは厳しい人だった。言い換えると、今までの自分の至らなさを糺してくれたともいえる。一緒に仕事をした7年間は正直辛い日々だった。ある日、H川さんが退職することになった。元々、H川さんが誘ってくれた会社、H川が辞めた後も自分がこのまま居ていいのかと自問した。一緒にやめるべきだと思っていたが、結局辞められなかった。そして、その後10年、自分は一人で仕事をすることになったのだ。

H川さんはLチテックという会社に誘われて入ったが、芳しい噂は聞こえてこなかった。2年ほど前、とうとうLチテックに給料の遅配が常態化しているという噂がたった。当時、H川さんに会う度にきいた。「噂は本当ですか」と。彼は、「貯金を切り崩してやっている」と答えた。

それに手をさしのべたのが、上場会社のYセだった。H川さんはグループ会社を含め5,000人の企業に転職したのである。そして自分。H川さんに誘われて入った会社をこの6月に辞めたことは、拙ブログの読者の皆様ならご存知のこと。

文字通り、紆余曲折を続けたH川さんは、今大企業の一員に、そして自分はたった一人の個人事業主。こんな状況を、自分らは20年前に果たして描けていただろうか。

ただ、一つだけ言えるのは、H川さんと過ごしたあの7年間、彼が厳しく、自分に指導してくれたことが、今の自分に繋がっているということ。あの理不尽な厳しさがなかったら、今の自分はなかっただろう。

今はすっかり丸くなったH川さん。彼もこの十数年で、社会の辛酸を舐めたのだろう。2時間のオンライン飲み会は穏やかな笑い溢れる楽しい時間だった。こんな時間を共有できることが、すごく不思議だった。