居酒屋さすらい 0826 - ホッピー・ナカ120円の戦略 - 「立ち呑み処 呑む三（のむさん）」（台東区上野）

久しぶりにアメ横立ち飲み屋街に出かけた。

相変わらず、ものすごい人の数。昼夜問わず、酒を飲む人々でごった返している。

「たきおか」に行こうと思って、先を進んでいくと、見かけない店をみつけた。

山手線の外側、「やきとり 文楽」の斜め前。「呑む三」という看板があり、「立ち呑み処」と記されている。
立ち飲み屋が、この激戦区に参入してきたか。「たきおか」と「カドクラ」という両巨頭に加え、コアなファンを持つ「肉の大山」に挑む新店舗。これは面白いことになった。
立ち飲みと書かれているが、歩道にせり出したテーブルには椅子があり、座って飲む御仁がいる。「ははぁ、立ち飲みスタイルと呼ばれる店か」と思い、店内を眺めてみることにした。
近年は立って飲まなくとも「立ち飲み」を標榜する店が少なくない。当初は、立ち飲みだったが、お客の座りたいというニーズに合わせて、椅子を持ち出す、いわゆる「転び」が多かったが、近年は「ちょい飲み」という意味として立ち飲みと言われるようになってきた。
果たして、この店もそうなのか。

店先を覗くと、向かって左側に立ち飲みスペースを設けているのがみえる。どうやら、立ち飲み、座りの共存型の店舗らしい。これも近年の特徴である。両方のニーズに備えるという意味もあるだろうし、スペースの有効利用というケースもあるだろう。共存型が近年のトレンドだ。
とにもかくにも、お店に入ってみることにした。

立ちスペースは６人分くらいだろうか。壁側一列になって、立ちスペースがある。それに比べて、座りスペースは広大だ。3：7くらいで座りの規模が多い。立ち飲みの方がマイノリティである。

生ビールは380円、瓶ビールが420円。
生ビールは「たきおか」に比べ10円ほど安い。その一方、瓶ビールは10円ほど高い。仕入れの関係もあるだろうが、生ビールユーザーを取り込みたい意図が透けて見える。

一方、酎ハイは「たきおか」が320円であるのに対し、「呑む三」は290円で30円ほど安価に設定されている。この違いは大きい。

これがホッピーになると更にお得感が増す。「たきおか」のホッピーセット（黒のみ）は390円だが、ナカは200円と跳ね上がる。一方、「呑む三」のホッピーセットは黒白ともに380円で「たきおか」とのアドバンテージは僅か10円だが、ナカは120円で、グッとお得である。
問題は焼酎の中身である。「呑む三」のホッピーは口が臭くなった。「たきおか」のそれも口がある程度臭くなるが、それほど気になるわけでもない。「呑む三」はどんだけ安価な焼酎を使用しているのか。また、量も若干「呑む三」の方が少ない。「たきおか」は明らかに濃いめであり、おかわりをするに従い、その量も増えてくる。だが、「呑む三」はおかわりし続けても、レギュラー的なボリュームのままだ。
どちらがいいかはもう好き好みの世界である。

ただ、焼酎などなんでもいい、ホッピーでナカ３杯という人ならば、確実に安価に抑えることができる。これで僅かに620円。酒肴はだいたいが300円であり、これを１品食べてもまだ1,000円に届かないという、まさにセンベロのウルトラCが完成する。

さて、「煮込み」である。

「たきおか」は150円。一方、「呑む三」の「牛筋煮込み」は350円。

シロと牛筋で素材の違いはあるものの、ここでは価格差を追求していない。そこに「呑む三」の価格戦略が透けて見える。

要するに、飲み物で競争力を発揮し、集客。肴は敢えて競争しないで、利益を出すという算段なのだろう。

「煮込み」は「たきおか」が白味噌、「呑む三」はしょう油ベース。味は「呑む三」の方がおいしく感じた（それでも、アメ横の煮込みはやきとり「文楽」が最高である）。

 

このように「呑む三」はお得感があり、酒肴もなかなかではある。しかしながら、リピートして行こうという気はならない。やはり、雰囲気なのだろう。リズム感に欠けているのだろう。

致命的だったのは、隣に立つ御仁がオーダーした酒肴をすっかり忘れていたことだ。雰囲気とリズム感が店内に満ち溢れていないのである。

 

翌月、店の前を通り過ぎたら、立ち飲みスペースはなくなっていた。

今や、完全に座りの店に。

早々と転んでしまったのである。