オレたちの「深夜特急」～インド編 マトゥラー 3 ～

ベッドから起き上がり、わたしは買い物に出かけようとした。 蚊取り線香がどうしても必要なのである。チベッタンキャンプで蚊の大群に悩まされ、一睡もできなかったとともに、マラリアの恐怖にもさいなまれた。これからインドを南下していくに従い、蚊取り線香は必須のアイテムといえた。 だが、蚊取り線香の英語が分からない。そもそもインドに蚊取り線香があるとも思えない。 そこで、フロントの男に尋ねてみる。ここはもうゼスチュアである。 右手の指をつまむようにして、「This is a mosquito」と言う。次に左手を煙のように見せて、右手と交じり合わせ、モスキートを墜落させる。そのアイテムがほしいと。 フロントの男はわたしのゼスチュアに関して、首を傾げた。 . . . 本文を読む