東大話法vs京大話法

後藤健二さんの死を悼むことはできるが、イスラム国（※）について語る資格はわたしにはない。
「イスラム国の衝撃」で巷間を賑わした池内恵（さとる）についても語る資格もない。
彼が池内紀の息子で、天文物理学者の池内了の甥であると知ったのは最近のこと。
なによりも池内恵は、わたしが畏敬する井筒俊彦を読み直すふれこみでイスラム論壇を席巻する勢いの新進の学者だそうな。

読書界、論壇で脚光をあびる彼について、「東大話法」で名をはせた安冨歩が論破している。
（リンクを貼れない。次のアドレスから「東大話法の見本」を参照されたしhttp://anmintei.blog.fc2.com/）
安冨「の著作すべてを読んではないが（初期の満州経済の研究等は入手しづらい）、私は彼をほんものの学者だと思っている。
彼が打ち出した「東大話法」は原発事故を契機にひろまったが、最近どうも下火になりつつある。というのも、東大話法を駆使する人があまりにも多いので、このレトリックの構造が世間に知られると都合が悪いと考えるからであろう。そんな権威づけに便利で、自己保身に万能な「東大話法」の存在さえも抹殺したい方がたくさんいると思われる。

東大の出身者だけでなく、学恩をうけた学者は全国にひろまり、さらにその薫陶をうけた人々は学会のみならず産業界の重鎮となり、知らず知らずに「東大話法」を浸透させた。
つまり大学にいき、多少なりとも人の上に立つような職責を持つ人なら、無意識にでも「東大話法」を使用しているかもしれない。
そういう私も、わたしのもの言いが「上から目線みたい」とか「小難しいこといって煙にまく」とか、家内に指摘されることがある。
つねに「東大話法」を自覚し、自分の話法がそれでないように自己点検をしなくてはならぬ。

さて、その「東大話法」とはいかなるものなのか。安冨教授の大ファンであることに免じていただき、全文をコピペさせていただきます。
また、「東大話法」の向こうを張って、京大の何某が「京大話法」を発表している。その対句もよくできているので同じく全文をコピペする。


東大話法　２０則
　1.自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
2.自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
3.都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。
4.都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す。
5.どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す。
6.自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する。
7.その場で自分が立派な人だと思われることを言う。
8.自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する。
9.「誤解を恐れずに言えば」と言って、嘘をつく。
10.スケープゴートを侮蔑することで、読者・聞き手を恫喝し、迎合的な態度を取らせる。
11.相手の知識が自分より低いと見たら、なりふり構わず、自信満々で難しそうな概念を持ち出す。
12.自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。
13.自分の立場に沿って、都合のよい話を集める。
14.羊頭狗肉。
15.わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する。
16.わけのわからない理屈を使って相手をケムに巻き、自分の主張を正当化する。
17.ああでもない、こうでもない、と自分がいろいろ知っていることを並べて、賢いところを見せる。
18.ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところに突然落とす。
19.全体のバランスを常に考えて発言せよ。
20.「もし◯◯◯であるとしたら、お詫びします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける。

　京大話法　２０則
1　自分の信念しか考えない。
2　自分の信念に都合のよいように相手の話を解釈する。
3　都合の悪いことに思わず喰ってかかる。
4　関係のない話には関心がまるで無い。
5　いいかげんな話をするとき目が泳ぐ。
6　自分の問題をわざわざ晒してネタにする。
7　その場でもっともアホなポジションに立ちたがる。
8　自分が当事者になりたがり、発言者それぞれに憑依してその想いを語ってしまう。
9　「極端な話」と言って、真実をぶちまける。
10　スケープゴートをくすぐることで隙を生み、読者・聞き手に「おもろいひとや」という印象を与える。
11　相手の知識が自分より低いと見たら、頼んでもいないのに懇切丁寧に教えたがる。
12　自分の議論が曖昧だと自分自身が一番良くわかっている。
13　自分の議論に都合の悪い特異点の方についつい心惹かれて話が進まない。
14　竜頭蛇尾。
15　わけのわからない見せかけの自己憐憫によって、あかんたれを演出する。
16　わけのわからない奇声を発して相手を驚かせ、場をリセットする。
17　あれもダメ、これもダメ、と言うが気になるのでチェックはしている。
18　あれもいい、これもいい、と言って周囲の反応を見るが結論は最初から決まっている。
19　常にバランスブレイカー。
20　「すまん。謝る」で全部済まされると思っているのでよく謝る。

　※東大教授　安冨歩は奇行で知られるが真っ当な人である。
　ビデオニュース登場のとき
　最近の教授


※2015.2.15 この日より「イスラム国」という呼称は使わないことにする。ＩＳＩＬか、ＩＳＩＳか、それとも別のなにか。