小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

『勝手にしやがれ』を観た

2021年01月23日 | 芸術(映画・写真等含)
NHKのBSでゴダールの『勝手にしやがれ』を観た。若い時に観たはずなのだが、印象がほとんど残っていない。いや初めて観たのだ、たぶん。記憶にあるシーンが、宣伝用のスチール写真そのものだ。わからん、老いぼれたな、俺は。 ストーリーは単純で、自動車を盗んだジャンポール・ベルモンドが、バイクで追ってきた警察官を拳銃で殺す。指名手配になるが、恋人未満(愛し合っているが、彼女の方はドライ)のジーン・セバーグ . . . 本文を読む

北欧映画について、断片的に

2020年09月25日 | 芸術(映画・写真等含)
最初、デンマークの作家ユッシ・エーズラ・オールスンの警察小説〈特捜部Q〉シリーズの新作『アサドの祈り』の読後感想について書こうとしていた。 その導入として、北欧の映画にふれる必要があり、何としたことか、こちらの方に比重がかかり、自前の思考分裂がはじまった。この際、結末がどうあれ、北欧映画について書かないと、自分のなかで収まりがつかない。それにはまずベルイマンを語るしかない、ということの前書きであ . . . 本文を読む

映画『プラド美術館』を観た(&リベラ開眼)

2020年08月18日 | 芸術(映画・写真等含)
先日、映画『プラド美術館』を観にいった。有楽町のヒューマン・トラスト・シネマ。夕方に1回限りの吹替え版(今井翼がナレーション)を選ぶ。 2,3か月前に予告編を偶然ネットで観た。映画のナビゲーターが、以前にブログで書いた「リスボンを離れて」の英俳優ジェレミー・アイアンズ。反射的にジョン・ファウルズとD.クローネンバーグを想起させる。自然体の演技で惹きつける渋い俳優だ。 今回は大いに迷った末に、ア . . . 本文を読む

ミシェル・ピコリ追悼

2020年05月19日 | 芸術(映画・写真等含)
フランスの俳優ミシェル・ピコリが昨夜亡くなったという記事を目にした。脳卒中のため死去したという(実際には12日)。家族が18日に仏メディアに明らかにした。 94歳だった。亡母と同齢だったことに、深い感慨を抱かざるを得ない。充分に生きた年齢であろうが、コロナの原因とか云々は判然としない。とにかく、天寿をまっとうされたと信じよう。 ジャン・リュック・ゴダールの「軽蔑」(主演はブリジット・バルドー! . . . 本文を読む

川口勉監督の『彼らの原発』を観る

2020年01月14日 | 芸術(映画・写真等含)
今年初めての、地元の月1原発映画祭に行く。新進気鋭の川口勉が監督、撮影、編集した『彼らの原発』というドキュメンタリー映画だ。 最初、プロフェッショナルとはいえない作りだと思った。構成が粗削りで、カメラワークも熟達さが足りない。観た人はたぶんそう感じるだろう。あるいは監督自身もそう思っていて、映画の完成度に不満をもっているかもしれない。監督の狙いが、なかなか伝わらないドキュメンタリーなのか・・。 . . . 本文を読む

原一男監督の『れいわ一揆』公開迫る

2019年10月06日 | 芸術(映画・写真等含)
日本ドキュメンタリー映画の傑作『ゆきゆきて、神軍』(1987)を観た方は、どれほどいるだろうか? 昭和天皇に対して、首謀者としての戦争責任を迫る。そのことを悲願というか異様に思い込み、実際に皇居でパチンコを撃ちこんだ過激なアナキスト奥崎謙三にとことん追った、衝撃のドキュメンタリー映画だ。(初公開は当時、渋谷桜ケ丘にあったユーロスペース。そこで2回観、その後ビデオで数回観たほど、影響を受けた) . . . 本文を読む

月1原発映画祭で『モルゲン、明日』を観て

2019年09月17日 | 芸術(映画・写真等含)
 一昨日の日曜日、地元の「谷中の家」にて月に1回の映画祭に行ってきた。 はじめに月1原発映画祭の主催者から、運営の変更のお知らせがあった。2012年5月から月に1回のペースで、3.11の原発事故に関する数々のドキュメンタリー映画が上映されてきた。7年を経たいま、上映するにふさわしい作品は減少し、これからは隔月で開催する旨の説明があった。(注1)むろん、フクシマの問題はいまだ終息していな . . . 本文を読む

宮崎郁子と、エゴン・シーレとの間

2019年06月27日 | 芸術(映画・写真等含)
  ▲少年のようなシーレ? 宮崎郁子さんという人形作家を知った。最近ではエゴン・シーレばかり作っていて、その繊細でリアルの塑像を観たときは目に焼きついた。 彫刻ではなく、「石塑、綿布、アクリル、発泡スチロール」と図録には記載されていた。その図録だが、いろいろ調べて岡山県の個人の方が扱っていて、郵送してもらったのだ。 宮崎さんの作品は、昨年シーレ生誕の地ウィーンが展覧会が催され . . . 本文を読む

駒込の「ときの忘れもの」にて

2019年06月05日 | 芸術(映画・写真等含)
なぜ、そこに行ったのか。それを書くと長くなるので省く。一端を書くとなれば、柄澤齊の師匠にあたる日和崎尊夫の作品(※追記)を観ることができるかもしれないと思ったこと。 もうひとつ、そのギャラリーで舟越桂の弟、直木の展示会カタログが入手できるはずだと推測した。結論をいえば、これは叶ったが、日和崎のものは無理だった。 ただし驚くべき邂逅があった。「葉栗剛展」を偶然にも鑑賞できたこと。木彫作品の最新作 . . . 本文を読む

銀座にて、画廊めぐり

2019年04月13日 | 芸術(映画・写真等含)
時里二郎の詩集『石目』の装丁をした柄澤齊の個展が開かれているので、銀座に行ってきた。ついでにというわけではないが、建石修志の新作展も銀座の島田画廊でやっていたので合せて鑑賞した。 柄澤齊の作品世界および美術技法については、時里二郎のブログ『森のことば、ことばの森』に詳しく、詩論のように格調高い文章だ。是非ともそちらに・・。⇒https://loggia52.exblog.jp/2754 . . . 本文を読む

イケムラレイコを観る

2019年03月14日 | 芸術(映画・写真等含)
  どちらでもありどちらでもないという両極に触れながら揺れるという生存というすがたに秘める洞窟彫刻というのは本当はあてはまらないある塊を削っていくのではない内に空を秘めながら彫塑するのはやわらかさから発展するぐにゃぐにゃした土はからだをみずからつくろうとする土を使って造られるものには霊を吹きこむことができるようだ レイコ・イケムラ(「自己問答」より、部分) ▲リーフレットよ . . . 本文を読む

名画座にいく

2018年11月08日 | 芸術(映画・写真等含)
ウン十年ぶりに早稲田松竹にいく。学生時代、毎週というわけにはいかなかったが、2,3週に1度くらいのペースでよく行った映画館だった。当時は名画座の冠はなく、公開されてしばらく経った高評価の映画を2本上映していた。 よく行った名画座といえば、池袋の文芸坐、板橋の人生座、渋谷の全線座だった。次に、飯田橋のギンレイ、自由が丘の?(忘れた)、馬場ではパール座が名画座として有名だった。ほとんどが2本立で、日 . . . 本文を読む

フジタをすごく好きになった

2018年10月06日 | 芸術(映画・写真等含)
  東京都美術館の『没後50年 藤田嗣治展』に行ってから、もうだいぶ経った。今日、明日で終わるころだ。いろいろ書いたのだが、まともな文章にならない。で、切り口をかえて、シンプルに書くことにする。 フジタという画家を、小生は好きでも嫌いでもなかった。今回の初期から晩年までの、フジタの画業を代表する絵画ではないが、とても好きになった画が何点かある。 ▲1936年 四谷左門町の日本家 . . . 本文を読む

ピカソのラス・メニーナス(侍女たち)

2018年08月27日 | 芸術(映画・写真等含)
  昨夜、NHK日曜美術館で「ベラスケスのラス・メニーナス」を観た。今年の4月頃に放映し、その再放送とのこと。どうして観なかったのか記憶にない。  司会が小野正嗣・高橋美鈴さんに変わって、どうも前向きに観る気が失せたのか。別に何が悪いというのでもなく、これという理由もない。相性が合わないぐらいの感じ。 しかし、テーマがベラスケスなら見逃すことはなかったはずだが・・。まあ、 . . . 本文を読む

『沖縄スパイ戦史』を観た

2018年07月31日 | 芸術(映画・写真等含)
  ▲午前中ならば、監督二人とゲスト森達也のトークショーがあった。8月2日まで。⇒https://www.mmjp.or.jp/pole2/ 女性二人のジャーナリストが監督したドキュメンタリー映画である。題名に「スパイ戦史」とあるように、これまでの沖縄戦に関する知見にはなかった、諜報機関「陸軍中野学校」が関与した沖縄戦の裏面史が明かされる。 映画のパンフレットにこう書 . . . 本文を読む