和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

力走/五十九〈小説「新・人間革命」〉

2016年06月02日 05時19分51秒 | 今日の俳句
力走  五十九/法悟空 内田健一郎 画 (5816)

 時代の激流は、万次郎を歴史の表舞台に押し上げていった。時代が彼の力を必要としていたのだ。
 土佐で万次郎は士分を与えられ、藩校「教授館」で教えることになった。岩崎弥太郎や後藤象二郎も、彼に影響を受けている。さらに、江戸に呼ばれ、軍艦教授所の教授を務める一方、翻訳なども行っている。
 だが、そんな万次郎に、嫉妬する者も後を絶たなかった。彼が、自分たちにはない優れた能力、技量をもっていることは、皆、わかっていた。それでも、武士ではない、半農半漁の貧しい家の子が重用されていったことへの、感情的な反発があったのであろう。
 自分に力もなく、立身出世や保身に執着する者ほど、胸中で妬みの炎を燃やす。大業を成そうとする英傑は、嫉妬の礫を覚悟しなければならない。
 人間は、ひとたび嫉妬に心が冒されると、憎悪が燃え上がり、全体の目的や理想を成就することを忘れ、その人物を攻撃、排斥することが目的となってしまう。そして、さまざまな理由を探し、奸策を用いて、追い落としに躍起となる。
 国に限らず、いかなる組織、団体にあっても、前進、発展を阻むものは、人間の心に巣くう、この嫉妬の心である。
 万次郎は、スパイ疑惑をかけられたりもしたが、日米和親条約の締結にも尽力した。日米修好通商条約の批准書交換に際しては、遣米使節団の一員となり、咸臨丸で渡米し、通訳などとして活躍する。明治に入ると、政府から開成学校(東京大学の前身)の英語教授に任命されている。
 山本伸一は、万次郎の生涯に思いを馳せながら、同行の幹部に語った。
 「万次郎は周囲の嫉妬に苦心したが、信心の世界にあっても同様だよ。魔は、広宣流布を阻むために、外からだけでなく、学会の中でも、互いの嫉妬心を駆り立て、団結させまいとする。大事なことは、その心を超克する、人間革命の戦いだ」

 小説『新・人間革命』語句の解説
 ◎岩崎弥太郎など/岩崎弥太郎(一八三五~八五年)は、土佐出身の実業家で三菱財閥の創始者。後藤象二郎(一八三八~九七年)は、土佐藩士、政治家。大政奉還運動を推進し、後に、逓信・農商務大臣を務める。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)6月2日より転載】




☆彡------☆★☆★☆*------彡☆o☆:*:.♪☆★☆*------☆彡

最新の画像もっと見る

コメントを投稿