小説「新・人間革命」
【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)12月18日(水)より転載】
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若芽49(12/18)
創立者の山本伸一が来賓参加競技に出場しようとグラウンドへ出て行くと、学園の理事や創価大学の中国人留学生らも後に続いた。
競技が始まった。伸一は、児童とおなかでビーチボールを挟み、「ソレッ!」と掛け声をかけて走り始めた。二人は息が合っていた。どんどんスピードを上げ、他の組を大きく引き離して、トップでのゴールインとなった。
しかも、ゴールしたあとも勢いを落とさずに、そのまま保護者席まで走った。父母たちは歓声をあげた。
伸一は、保護者席で言葉を交わした。
「お父さんも、お母さんも、参加できるものには、どんどん参加してください。それが子どもの思い出になっていきます」
競技やゲームに、両親が子どもと一緒に夢中になることができれば、親子の距離は、ぐっと縮まる。
親は、自分でも気づかないうちに、「父の顔」「母の顔」のみで子どもと接してしまう。しかし、家族といっても、その基本になくてはならないのは、ありのままの人間対人間としての信頼関係である。
子どもは、両親が童心に帰って自分をさらけ出し、競技やゲームに熱中する姿を見ることによって、親も自分と同じ存在であることを知る。そして、自分をそのまま表現し、ありのままに生きることを肯定できる考えが培われていく。
保護者席にいた山本伸一の周りに、いつの間にか、子どもたちが集まってきた。三、四歳の子から小学校の高学年ぐらいまでの子ども二、三十人である。創小生の兄弟や姉妹、近隣の人たちの子弟などであろう。
「よーし、みんなで行進だ!」
伸一は、こう言うと、その子どもたちを引き連れ、一緒にグラウンドを歩き始めた。グラウンドは、競技の合間で誰もいなかった。
皆、他校の子どもたちであるが、どの顔も楽しそうに、笑みの花を咲かせている。
「行進は、掛け声が大事だよ。さあ、元気に声を出して! イチ、ニ、イチ、ニ……」
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