和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

人材城(四十五)小説「新 ・人間革命」

2012年06月01日 17時42分55秒 | 今日の俳句
    小説「新・人間革命」

【「聖教新聞」 2012年 (平成24年)6月1日(金)より転載】

 

人材城45(6/1)

 山本伸一との懇談会に出席した、代表メンバーの報告は続いた。

 熊本県北部の山鹿や、西部の天草、中南部の八代、南端の水俣など、一人ひとりの話に、伸一は、じっくりと耳を傾けていった。

 前年、妻を癌で亡くしたという男子部の本部長の報告もあった。「妻の分まで、一生涯、信心に励み抜いてまいります」との決意を聞くと、伸一は言った。 「その決意が大事だよ。亡くなった奥さんもそれを一番、喜ばれます。私も追善します。

 順風満帆の人生は、それはそれでいいかもしれないが、そんな人生は、ほとんどありません。皆、多かれ少なかれ、なんらかの試練に直面しながら、生きているものなんです。

 何もない人生であれば、ささいな障害にも不幸を感じ、打ちひしがれてしまう。人間が弱くなります。鍛えられません。

 しかし、君のように、若くして最愛の奥さんを亡くしたという人は、強くなります。また、人の苦しみがわかる人になれます。したがって、誰よりも慈愛にあふれたリーダーに育つことができるんです」

 フランスの女性作家ジョルジュ・サンドも、「他人に最も働きかける力があるのは、最も試練にあった人である」(注=2面)と記している。 伸一は、力を込めて言葉をついだ。

 「試練は、自分を磨き、強くしていくための財産だ。心から、そうとらえていくことができれば、大成長できる。しかし、悲しみに負けて、感傷的になれば、足を踏み外し、自堕落になってしまうこともあり得る。今が、人生の正念場だよ。

 君は、一人じゃないんだ。学会があるじゃないか! 同志がいるじゃないか! みんなとスクラムを組んで、強く生きるんだよ。

 奥さんは、君の胸の中にいる。奥さんの分まで信心に励み、奥さんの分まで幸せになっていくんだ。成長を待っているよ」

 強い響きの、温かい声であった。

 青年の目は、生き生きと輝いていった。



※ 小説『新・人間革命』の引用文献
 注、ジョルジュ・サンド著『我が生涯の記』加藤節子訳、水声社

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