前回の(その1)では「素顔の私」をとりあげましたが、今回は「Mr.メトロポリス」です。
このアルバムは、純子さんが日本ポップス界で旋風を巻き起こした後に出されたアルバムで、「みずいろの雨」の大ヒット後、アーチストとしてのその後を占う意味で、重要な作品だったと思います。(もちろん、当時LPレコードを買った、高校生の私には、そんなことは思いもよらず、ただただ純子さんの歌が聴きたかっただけでしたが・・・。)
シングルカットされた曲は「ポーラースター」のみ。純子さんファンなら言わずもがなかもしれませんが、アルバム全体に流れを感じる、素晴らしい作品です。
冒頭の表題曲「Mr.メトロポリス」は、静と動をうまく組み合わせた名曲です。2曲目の小曲「小さな頃」で気持ちを静めたところで、これまた名曲の「Deja Vu」~「ポーラースター」への流れは絶品です。特に、私は個人的に「ポーラースター」が大好きなので、このあたりは大盛り上がりです。その後、美しいバラード「グッバイ美しい日々」でA面終了となります。(もちろん、CDでは次の曲に続いていきますが、レコード時代はここで一息入るわけです。)
B面は「ワンダフルシティ」の軽快なリズムから始まります。この曲は音もなかなか凝っていて、やはり名曲です。かと思ったら、次の「冬」はムード歌謡かと思わせるようなメロウなメロディーと、純子さんのしっとりした唄に酔わせられます。
で、ここからこのアルバムのクライマックスに入っていくわけですが、まずは「サンディエゴ・サンセット」で、ポップな気分にさせておいて、次の「シルエット」で一転、超スローなテンポで純子さんのハイトーンヴォイスをじっくり聴かせてくれます。ここで、かなりうっとりしてしまうのですが、最後は、一緒に歌ってしめましょう、とでもいうような「Another Day,Another Me」で締めるわけですが、この曲がなんともいいんです。この曲は、純子さんの多くの曲で編曲をしている瀬尾一三さんの曲なんですが、この素晴らしいアルバムの最後を飾るにはもってこいの、ノリノリの曲で、リピートのところでは合唱したくなるような曲です。先に出た「コッキーポップ」シリーズのDVDでは、学生風の若者と一緒に合唱してましたし、コンサートでも、ここは「皆さん一緒に!」みたいな感じだったんだろうなあ、と想像されます。
トータル45分間、純子さんの魅力ぎっしりのアルバムです。
今回のCD再発が決まるまで、このCDの中古での価格は、1万円近いものでしたが、もし、永遠に再発されなかったとすれば、それくらいの価値はありかなあ、という気もします。
そういう意味では、今般、夢のような再発プロジェクトの恩恵に預かり、このアルバムをCDで聴けることに、感謝の気持ちでいっぱいです。
と同時に、この機に、一人でも多くの人が八神純子というアーチストの音楽を聴いて、好きになってもらえればいいなあ、というのが、一オールドファン(と言っても、最近のファンはいないかもしれませんが)の希望です。