YOUNG MARBLE GIANTS「COLOSSAL YOUTH」(1980+α)
また、趣味の世界へ入ってしまった。ヤングマーブルジャイアンツ(以下、YMGと呼ぶ)。
いわゆるニューウェイブという、1980年代にイギリスを中心に広がったムーブメントの音楽に多少興味があれば、聞いたことのあるバンド名だろうが、一般の英米ポップミュージックファンには、「何、それ?」ということだろう。
いや、音楽を聴けばさらに「何、それ?」×2となることであろう。わかりやすく言えば、YMGの音楽には「色」がないのである。まさに、このジャケットどおりなのである。いわば、ジャケットが気になって聴いてみたら、ジャケットどおりの音楽だった、ということになるのである。
単調なメロディ、ドラム抜きの構成(代わりにリズムマシーンが鳴っている)で、静かに奏でられるギターとでしゃばったベース。そして最も印象的なのがオルガンの音。ヴォーカルは、歌っているというより、曲をバックに朗読してるのか?という感じ。
確かに、ポスト・パンク、ニューウェイブ・ムーブメントにおいては、いろんなスタイルがあった。アコースティックあり、耽美派あり、ノイズ系あり、フォーク系ありと。
で、このYMGは、後のネオ・アコースティックの系譜の萌芽とも言われている。
なぜか?それは聴いてみればわかるのだが、録音媒体を通じて聴いても、あたかも目の前で生で演奏し、歌っているのではないかと思わせる音であり、まさに生音的(=アコースティック)なのである。先ほども言ったが、単調なメロディで、いわゆる「サビ」という部分がない。しかし、そんな薄っぺらな音でありながら、いや、そうだからこそ、曲を聴きながら、何か思索に入ってしまいそうな、そんなインスピレーションを受けてしまう、そんな音楽なのである。
このYMGは、結果的には実験的ユニットのような形で、この1枚のアルバムを残して解散してしまう。が、ヴォーカルのアリソン・スタットンはその後も「WEEKENND」「DEVINE & STATTON」という風に形を変えながらも、その存在感のあるつぶやき風ヴォーカルを聴かせてくれ、私もずっとその音楽を追っかけていた。年月が経っても、思い出しては彼女の歌を聴いていた、という感じであった。
私の好きな八神純子さんとは、完璧に対象的なヴォーカリストなのだが、アリソンの場合は、あくまでもアコースティック・ミュージックにこだわった、そのこだわりに引き寄せられてしまったというのが、実際のところであろう。
私が、ネオ・アコースティック系音楽にはまってしまう、決定打を打ったのが、このYMGだったのである。