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「スマイルください」♪

2010-11-18 19:33:45 | 徳育

「スマイルください」♪


「じゃあ、7時にシネコンの入り口でな」

「うん、わかった」

友紀は大学の2年生。

授業の合間を縫って、びっしりとバイトを入れている。

両親ともに健在で、自宅から通っている。

苦学生というわけではないが、学費くらいは自分で稼ごうと決めていた。

家庭教師と、ファーストフードの店員。

一週間があっと言う間に過ぎていく。

でも、カレシの正也との時間だけは、できるだけ取るようにしている。

付き合うようなって一年半。

たまたま入学してすぐの教養科目の授業で、席が隣になったのがきっかけだった。

3回目の授業で、「付き合ってくれない?」と言われた。

「なぜ?」と聞いた。

そんな問いをするのもおかしなものだ。

しかし、正也は真面目に答えた。

「うん、笑顔がステキだから!」

あまりキザな台詞で笑ってしまった。

すると、「ほら、その笑顔」と言われた。

友紀は、顔が真っ赤になったのを覚えている。

高校時代の女友達からは「おくて」とバカにされるが、正也が始めてのカレシだった。

それまで、「付き合う」って、どんな感じか想像が付かなかった。ドキドキした。

そして、この一年半でわかったこと。

「男って、甘えん坊なんだ」ということだった。

こちらがバイトで忙しいのに、「今度いつデートできる?」と聞いてくる。

別に離れ離れに暮らしているわけじゃない。

選択科目を入れても、授業の三分の二は一緒に受けている。

週に二回は学食でランチもする。

なのに、「ディズニーランドに行こう」とか「海までドライブしよう」としつこい。

最初は、マザコンか?!と思った。

でも、友達に聞くと、それが普通らしい。というよりも、「友紀のほうが、あっさりして男っぽいんじゃないの?」と言われてしまった。

(たまには付き合ってやるか・・・)

ということで、友紀はバイトが早く引ける今晩、正也と一緒に映画を観に行ってやることにした。

午後4時20分。

店が駅前にあることから、このくらいの時間になると、店内は制服の学生でいっぱいになる。

レジで笑顔を作る。

もう慣れてしまった。

どんなに疲れていても笑顔でいられる自信があった。

(あと少しで上がれる)

そう思った瞬間だった。

「ちょっとアナタ!中身が違うじゃないの!!」

「え?」

「え!?じゃないのよ。私はテリヤキを頼んだのよ。なのにコレ、普通のバーガーじゃないの」

五歳くらいの男の子を連れた母親だった。

「申し訳ございません」

母親は、食べかけのハンバーガーを友紀の前に差し出して見せた。

たしかに、これはテリヤキバーガーではない。

「ちゃんと私は、テ・リ・ヤ・キッて頼んだはずよ!」

「申し訳ございません。すぐに、お取替えさせていただきます」

「取り替えれば済むってものじゃないのよ」

「・・・」

友紀はパッと記憶をたどった。

たしかに、この女性は普通のハンバーガーを頼んだはずだ。

(間違いない)

でも、けっして言い返さないこと。

これが店のマニュアルだった。

ここで、「言った、言わない」と議論しても仕方がない。

とにかく、何かあったら「謝れ」と教えられている。

「本当に申し訳ございません」

「この子をこれから塾に連れて行かなくちゃならないのよ。今から注文しなおしていたら、間に合わないじゃないの!」

「はい、最優先でお作りいたしますので」

「時間がないのよ、もういいわ、できたらテイクアウトにしてちょうだい」

「はい、テリヤキバーガーですね。今すぐご用意します」

女性は、プイッと顔を外に向け、子供のいる席に戻った。

友紀が奥に「急ぎでテリヤキ一つお願いしま~す!」と呼びかけた。

キッチンから、すぐに小声で、「これ先に持っていってよ」という返事。

他のお客様の注文で作っていたものに違いない。

(助かった)

ホッとして、差し出された包みを手にした瞬間だった。

レジの近くのテーブルに座っていた中年のサラリーマンらしき男性が大声で叫んだ。

「おいおい、それ俺のテリヤキじゃないのか?」

「・・・」

「なんで、このオバサンのために俺が待たされなきゃならんだよ」

口調はビジネスマンらしく落ち着いてはいたが、目つきは怒りに満ちていた。

「いいえ・・・」

当たっているだけに、返す言葉がなかった。

騒ぎを耳にして店長がレジの外へ飛び出してきた。

「何よ、私が悪いって言うの?」

「うるさい、ババア~。いちゃもん付けて。俺は聞いてたゾ。お前はテリヤキなんて注文してなかったゾ!もうボケてんのか」

「何よ、アンタ!」

店内は騒然とした。

「ここは僕に任せて、次のお待ちのお客様をお願い」

と言う店長に促されて、友紀はレジの仕事に戻った。

何度も怒鳴られ、怯えで身体が震えた。

涙がとめどもなく流れてきた。

涙を見せないようにと、下を向きつつ一人、二人・・・。

注文をこなすが、まだ涙が止まらない。

そして、三人目のお客さん・・・。

「スマイルください」

「え?」

「だから、スマイルください。そこに書いてあるでしょ」

とメニューの「スマイル〇円」を指差した。

顔を上げると、そこには笑顔の正也がいた。

友紀は、なんとも器用に、涙を流しながら最高の笑顔を作った。







今日の言葉

2010-11-18 08:19:35 | 
『今、結果がでないのは、もっといい方法があるから。』


『今、結果がでないのは、過去のやり方でやっているから。』

福島先生







昨日 真木さんが 送ってきてくださった
ダブル・レインボー


空を見上げる

これって 大事なことですよね。

雨の日の 贈り物