『“縁”という深い力』
日ごろ、人々は人間関係の中で生きています。
そうした人と人とのつながりは、個人的な意思でできたものと考えがちですが、幸之助さんはこのように語ります。
「“袖ふり合うも他生の縁”と昔からいわれているように、人と人とのつながりには、やはり個人的な意思を超えた、縁という深い力が働いています。
その力によってお互いが結びつけられていると考えられるのではないでしょうか。」
幸之助さんがそのように思うひとつのきっかけに、自身の結婚がありました。
幸之助さんは大正4年9月、満20歳で妻むめのさんと結婚しました。
当時でも男性の平均的な結婚年齢は27,8歳でしたので、それに比べるとずいぶんと早い結婚でした。
というのが、三男の末っ子だった幸之助さんは、長男、次男とも若くして亡くし、11歳のとき父を、18歳のとき母を亡くし、松下家の位牌をあずかっていました。
その先祖を祀(まつ)ってほしいとの姉の思いで、お見合いを勧めます。
当時のお見合いは、道ですれ違うだけというだけというのが一般的で、緊張して相手をよく見れなかった幸之助さんに、義兄が「決めとけ、決めとけ、悪くないぞ」の言葉に従い、承諾の返事をしました。
「もしあのとき、両親が健在であったら、姉がこの話を持ってきてくれていなかったら、その時期がもう少し早かったら、家内とは結婚していなかったかもしれません。
そう考えると、2人の間には、個人の意思を超えた、何かはかり知れない大きな力が働いていたという気がしてならないのです。
それが“縁”というものなのでしょうが、そこに人生の言うに言われぬ妙味があるように思えます。」
そのような“縁”というものを考えると、私たちは夫婦や職場、隣近所など、人と人とのかかわりを、もっと大事にしていく必要があるのではないかと幸之助さんは言います。
「日ごろ何気なく受けとめているあの人、この人とのつながりも、実は世界の何十億という人の中から、深い縁の力によって選ばれ、結ばれた結果である。
そう考えて、そこに感謝と喜びの心を持ち、そのつながりを大事にしていく。
そういうところから、お互いの心もよりスムーズに通いあって、本当に力強い真の人間関係が育まれてもくるのではないかという気がするのです。」
幸之助さんは“縁”の深さを、このように語ります。
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