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目をつむって立ってごらん、と東雲さんが言う。
「おまえは、高い所につるされているんだよ。頭の天辺から紐もみたいなもので、天に真っ直ぐ吊るされている。足のずっと下のほうには地面がある」
東雲さんの声は呪文のようだ。たちまちイチの体はどことも知れない広い、何もない、虚空とでもいうような所に吊るされていた。
「どうだい、背骨が一本、正しく通った感じだろう?その真っ直ぐを、体に覚え込ませておおき。座ってるときも、寝ているときも、歩いても、しゃがんでも、体をどんな形に動かしても、その真っ直ぐが一本、体に通っているんだよ。ゆるっと自然に真っ直ぐなのさ」
村田喜代子 『ゆうじょこう』より 新潮社
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明治時代の遊郭を扱った小説で、カイロの先生顔負けの、あるべき背骨のあり方の講義を聞くことになるとは思わなかった。
これは、遊郭に売られた主人公、小鹿が花魁の東雲から、プロとしての性技の基本を教わる場面である。
表現は違っても、日頃、徳さんが患者さんに対して説明する、正しい背骨のあり方とほぼ同調する。
この中で重要なのは、上から引っ張られている感覚と、ゆるっと、という感覚である。
もしかして徳さんは、知らず知らずに患者さんに性教育をしてたのか?、、、。
この小説は凄い!
題材からすると、湿り気を予測するのだが、予想に反してからっとしている。
主人公小鹿を介して硫黄島という離島の感性が本島(俺達ってこと)を圧倒している。
島言葉で書かれた小鹿日記が珠玉の極みである。
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じょりはくの わすれて
いぬ、ねこだと 言われました
あたいの おとさん かかさん
しまでは はだしで あるいている
あたいは ここで じょうり はいてる
じょうりを はいたら にんげん でしょか
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