カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

船戸与一 『砂のクロニクル』 新潮文庫

2015-10-13 17:32:02 | 本日の抜粋
平和というものはありがたい、ナンマンダム。
腑抜けだと罵られようと、日々、生活のことだけを考えるのが人間の本態だ。
人間以外の生き物を見よ!
それで、いいのだ。

戦後70年、徳さんたち日本人の多くは戦争なるものを知らない。
人間の記憶というものが何歳頃から成立するのか知らないし、人によって違うのだろうから、5歳位からとして75歳以上の人しか戦争の記憶がないということになる。
高齢化社会で75歳以上の人はまだまだ多く存命だが、戦争時の話を積極的にしてくれる人は稀だ。
徳さんも父母から戦争時の話を聴いた記憶がない。

で、日本人のほとんどは戦争の実態をほとんど知らないことになる。
数少ない資料と数少ない証言者の言葉を頼りに想像するしかない。
そう、日本人の戦争感は現実性に乏しい。

でも、徳さんたちは身近に平和というものがある、ナンマンダム。
そんな地平から世界にものを言っていいのか?

日本と真逆の位置に置かれている地域が世界には多々ある。
生まれ落ちた時から、彼、彼女の世界は戦争まみれ、という世界が。
生まれ落ちた時から死が身近である世界が。
物心着いた時には、親しい人の何人かが殺されている世界が。
憎しみや、怨念が渦巻くのが当然の世界が。
しかも、時の世俗権力がそれを巧妙に利用する世界が。

今、現時点でこのような風景が宇宙的規模で増殖中である。
勿論、かつて見た光景の亜種ではあるのだが。


解決法なんて見つからない!

でも、消え入りそうな炎はチラチラと揺らめきを絶やさない。
中村哲しかり。
国境なき医師団しかり。
ある種のNPOしかり。
日本の憲法9条しかり。

筋金入りの硬派、船戸与一、に対抗して途轍もない軟派からの提言でした。

  *****
「どうして武器商人になった?」
「少なくとも、おまえがゲリラになったような理由じゃねえ。札束が欲しかったことは確かだが、しかし、ただそれだけでもない。見えない糸に操られるように、おれは武器商人になった」
「恥じているのか、商売を?」
「ばかなことを言わんでくれ。おれは武器を商ってきたせいで、世界の裏っ側に隠されているいろんなものが見えてきたんだ。まっとうな稼業で暮らしてりゃ、ほんとうのことは何も知らずにただ老いていくだけなんだ。後悔したことなんか一度もねえよ」
*****

ああ!この小説の最終場面は圧巻でござった、、、、。



本日のおまけ

船戸与一が作家デビューする前に豊浦志朗というペンネームで書いたルポタージュ『硬派と宿命』について、〝松岡正剛の千夜千冊〟というブログから。

1925年と1930年にクルド人は武装蜂起したが、トルコ軍によって容赦なく鎮圧されて、アララット山麓が血で染まった。その後、1946年にイラン西部のクルド人の聖地マハバードで、かれらの手によってクルディスタン共和国という“幻の共和国”が樹立された。まさに希望の国だった。けれども、これはたった11カ月でイラン軍に倒壊され、指導者は公開処刑された。
 クルド人への弾圧は続く。1988年、ハラブジャブ地方で毒ガスによる住民虐殺がおこった。死者5000人、負傷者10000人にのぼった。これはイタリア軍によるものだった。ごく最近ではサダム・フセインによるクルド地域の弾圧がある。クルド人の難民はこれで引き金をひかれたわけである。


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