建築設計家根性

築３０年近くになる新宿の施療室があるマンションは、当時、最先端のビジネスマン向けのものだった。
ロビーにはテレビ受像機が６台置かれ、最先端の世界情勢、経済情勢が読み取れる、なんてふれこみだった。
現在は、たった一台の受像機がＮＨＫから流れてくる画像を、誰も見てないのに流している。
(ざまあ見ろって心持だ)

徳さん自身は、こんな所で仕事をする気はなかった。
郊外か場末で、小屋のようなものの中で小さな道場風にやれればな、と思っていた。

でも、浮世の義理というのもある。
この場所の話を持ってきたのは、死んだ親父だ。
大学中退後２０年間の互いの齟齬を噛みしめた後の結論だった。

で、このマンションのこの写真。
一階の遊び場である。

敷地にロの字型で建てられ、ロの字の内側の面積が異常に広い。
出来るだけ多くの部屋を確保する一つのやり方だ。
一つ一つの部屋は狭くても構わない。
その方が収益が上がる。
バブル絶頂期の思想丸出しだ、、、。

そして、このマンション中央には無駄な大きな空間が出来ている。

一階のフロアーは真ん中にステンレスの奇妙なモニュメントが置かれ、床はしゃれたタイルで覆われている。
このマンションを設計した人の自慢の顔が想像できる。

ところが、設計士が指定したタイルの素材が最悪。
見てくれは良いが、雨の日に弱い。
水に濡れると極端に滑りやすくなるのだ。
その事を知っている徳さんは、雨の日はヨチヨチ歩き。

知らぬ人は、当然スッテンコロリ！
先日は、新患さんが膝を血まみれにしていらした。

建築設計士さん！
見てくれのデザインに溺れないで！
利用者の利便性を第一に考えて！

そうそう、巷では代々木競技場の建て替えが問題になっている、、、。


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