
雨の夜は映画を観ようというわけで、ココの映画を観ていた。
ココは、愛称で、本名はガブリエル・ボヌール・シャネルだそうだ。
フランス人女性で世界に名が知られているのは、ピアフとココといわれる。
ジャンヌ・ダルクも世界的だ。マリー・アントワネットもそうだが、
20世紀ということになれば、確かにこの二人かもしれない。
ご存じのように、ココ・シャネルは、女性モードの改革者だ。
彼女が世界の女性のファッションに与えた影響は計り知れない。
そうだ、あなたのファッションもシャネルのクリエイティブと無縁ではない。
ただ、ファッションの歴史は軽視されやすい。
知っておくことであなたの心は豊かになる。確かだ。
彼女がパリに、『シャネル・モード」という帽子専門店を開店したのが1910年。
この映画がつくられたのが2009年ということで、ちょうど1世紀前の話ということになる。
ココ・シャネルは、1983年、貧困の中で生れ、孤児院や修道院で育った。
当時、孤児院出身者の女性は、裁縫師になるか娼婦か、そして鉄道員の妻にしかなれなかったという。
この鉄道員の妻というのがよくわからない。鉄道員の社会的地位が低かったのだろう。
この映画ではココは、思慮深く心の奥には自立心を秘めた、人眼には一風変わった女性と描かれている。
彼女の特性は、他の女性にはないもので、様々な男性が彼女に魅かれていく。
彼女は生きていくために、裕福な将校の愛人となり、後にはイギリス人の愛人にもなる。
当時のフランスのファッションは、印象派の絵画に描かれているように、コルセットをつけ、
ドレープのある長いスカートをはき、羽飾りがデコレイトされた帽子をかぶっていた。
ファッションに体型を合わせる。
ウエストサイズは40cm台まで絞られていた。
ココはそのようなファッションを身につけなかった。
髪も短くカットしている。
針子としての技術は身につけていたから、自分が好む帽子や服をつくることができた。
帽子はシンプルな男性用に近い型にする。
その帽子が好評で、パリに出店することができた。
もちろん、資金はパトロンから出ていた。
ファッションはもっと奇抜だった。
ウエストをルーズフィットにした。もちろんコルセットは使わない。
スカート丈は短くなり、自然な女性らしいシルエットになった。
上着は英国男性が着る背広の生地(ツイード)も使った。
タブーとされた黒い色の生地も使った。
男性の服を取り入れたいわゆる中性的モードを彼女自身が着ていた。
私たちが目にするシャネルスーツの原点といってもいいのだろうが、もっとノーマルだ。
今のファッションの原点に位置するように思う。
この映画のタイトルの『ココ・アヴァン・シャネル』は、シャネルになる前のココの話という意味だそうだ。
そして、彼女のすべての源がこの時代にあることがよくわかる。
映画は彼女のショーのシ―ン終わる。すでに今のシャネルに繋がるクチュールショ―である。
史実では1916年、第一次世界大戦の最中だった。
彼女はこの後60年間モードの世界をリードした。
一生涯独身だった。
ファッションに興味のある方。これからファッション界に入ろうとする方には必見の映画だ。
もちろん、20世紀の社会を学ぼうとする人にも。
外では風が強くなってきた。
台風が接近している。