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岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

【ハンセン病】これから学んでいく道筋

2008-07-20 15:00:13 | ハンセン病
長島への初回の旅は終わった。
6月の下旬に訪問したのだから、1か月前だった。
それから、何冊かの本を読んだ。
読まなければならない本の多さに驚いた。
そして、「ハンセン病」が教えてくれる世界の広さにも。
「ハンセン病」問題は、大きな山脈にたとえられよう。
いくつも頂上があり、その頂上にたどり着く道もいくつもある。
道に迷わないわけがない。
道を迷えば足元を見ていた視線を、上を向ければよい。
そこにある星を目指せばいい。
それは当事者の方の声である。

「ハンセン病」について書かれた本の多さにも関わらず、
私たちが「ハンセン病」について理解できているかといえば
なんとも心もとない。
それは、やはり私たちの関心の外にある問題なのだろう。

絶対隔離されて以降、当事者の方に会う機会はほとんどなくなっている。
これも隔離の弊害である。

長島愛生園の初代園長である光田健輔は、ハンセン病患者の楽土を作ろうと
島の開拓を始めた。
かって、ハワイや南米、そして満州へ渡った開拓者団の指導者と同様に熱意をもって始めた。
療養所建設も、ハンセン病患者による過酷な開拓物語なのだ。
療養所建設を、明治以降の開拓史の中に位置づけることもできるはずだ。
そのように考えれば、新たな頂があるように思える。

日本国や日本人による樂土づくりの多くは失敗したが、
ハワイや南米は成功し、多くの子孫が現地で活躍している。
子孫が代々受け継いでいくさまざまな遺産がそこにある。

ハンセン病療養所には、子孫がいない。
隔離され、子孫を絶やされたからである。
このような療養所建設しかなかったのか。
そうではない。
世界には、ハンセン病患者の子孫が増えている島がある。
根絶やしではない政策もあるのだ。
では日本はなぜ、人権無視の隔離政策しかとることができなかったのか。
世界の国々が隔離政策から、転換を始めてもなお日本が隔離政策を続けてしまった
背景はなにか。
政治はなにをしていたのか。
国民は目を覆っていたのではないか。

ここでも、日本人である私自身に向き合わなくてはならないのだろう。

写真は、岡山県立図書館に掲示された長島の空撮。手前に邑久長島大橋、
そして邑久光明園、左上に愛生園が見える。
この図書館では、6月に「ハンセン病」コーナーを期間設置していた。


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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「旅」はこれから (bonn1979)
2008-07-21 11:18:01
岡山は
留岡幸助と石井十次がいるだけでも
社会福祉の歴史にとっての重要なところ
と思いますが

このたびの
長島愛生園の「初回の旅」を拝読し
この一つのテーマを
たどること
それと自分の歴史と生活を結びつけることが
他人事ではない
と思うことができました。

鹿児島にも
鹿屋と奄美に療養所があった。
(かって勤務した)群馬にも関係がある。
全生園は清瀬の大学のすぐ近くにあった。
長島には、老年学の先輩森幹郎が若い頃勤務していた。(先生と直接話したことはないのですが。著作を見て私淑していた)

そして
何よりも
まだ「らい予防法」という題名の法律があったころ
私は、それを所管する「防疫課」の法規係にいたのです。(入省4年目。上司も部下もいない係り)
貴ブログの訪問記を身近に読ませていただいた原点はこの点にあります。
すでに改正された伝染病予防法や予防接種法、性病予防法などを所管していました。

課長も局長も技官(医師)という技術行政の中での法律の専門家としての責任が(いくら若いとはいえ)あったわけです。

貴ブログの訪問記をきっかけに
ばらばらだったハンセン病に関する知識といまこれを考える意義がはっきりしました。

大上段からの「福祉哲学」ではなく
このよう個別課題を掘り下げる作業が(今の)私には必要です。
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強力な味方を得た思いです。 (岩清水)
2008-07-21 21:36:41
そうですか。
驚きました。
1960年代の厚生省のことですね。
いろいろご教授いただければと思います。

この時代に岡山県で「朝日訴訟」もありました。光田健輔は64年に亡くなっています。
bonn79さんが厚生省に勤めておられる頃、
私は岡山の高校で、ハンセン病の話を
聞いていたことになります。
私は1968年に高校を卒業しています。
(年齢のことはブログには書いていないのです
が、ハンセン病を学ぶ場合には同時代性が
重要と思いますので)

群馬の草津療養所の特殊監房のことも知りたいと思っています。
奄美和光園、鹿児島星塚敬愛園と鹿児島県も
ハンセン病に大きな係わりがありますね。

私にとって、人生の課題ととらえています。
これからもよろしくお願いします。


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