名古屋・名駅街暮らし

足の向くまま気の向くままに、季節の移ろいや暮らしのあれこれを綴ります。

恵比寿之湯と丹生川ダム

2011年04月06日 | セカンドルーム

 

久しぶりに高山市丹生川町の恵比寿之湯へ行ってきた。
この温泉は、丹生川ダムの工事中に掘り当てた源泉を麓の折敷地(おしきじ)まで引き、管理組合を作って運営している。
眼下に荒城川の清流が流れ、周りを山に囲まれた小さな温泉施設は、作りも質素で鄙びた湯治場の雰囲気が漂う。
茶褐色の温泉は、神経痛、関節痛、慢性消化器病などに効能があり、地元の人たちには人気がある。
丹生川ダムは、神通川水系の荒城川最上流にあり、来年の完成を目指して、急ピッチで工事が進められている。


完成目前のダムは、麓からも巨大な堰堤や、付け替え道路が望めるまでに進んでいるが、1975年の着工以来、既に40年近くの歳月が流れている。
一旦着工したダム工事は止まらない、と言われた伝説が崩れつつある中で、無事に日の目を見るのは珍しいケースかもしれない。
理由の一つに、最近完成した総貯水量6億6000万トンの徳山ダムの100分の1以下の規模で、世間の注目を浴びなかったことが理由の一つと思われる。
この多目的ダムの建設目的は、当初計画から変わったと思われるが、現在は下記3点が記されている。
1.荒城川流域を水害から守る
2.既得取水の安定化と河川環境の保全
3.水道用水に利用する
1は、この流域で大きな水害は起きていないし、わざわざダムを作る理由にならない。
2は、主に農業用水を想定しているが、この地域は水が豊富である上、耕作面積は減少傾向  で将来とも水の需要は増えない。環境保全は自然に流れる川を維持することである     3は、現状で十分間に合っているし、過疎化が進み需要は減少傾向にある。
など、建設目的が現状からずれていることは、素人目でも分かる。
 
数年の工期で完成する規模のダム工事が、なぜ37年も掛かったのか不思議でならないし、流域で暮らす人たちは、ダムの完成で幸せになれるのだろうかとも考えてしまう。
水没する集落には、惟高親王の末裔と云われる木地師の子孫たちが住み、縄文土器も出土している。
春の新緑や秋の紅葉の美しい木地屋渓谷も間もなくダムの底に沈み、代わって巨大なコンクリート塊が出現する。
丹生川ダムは、開発優先の時代に工事が始まり、紆余曲折を経て自然環境優先の時代に完成する。
豊かな自然を失った代償が、荒城川最上流の小さな温泉場だけでなく、地元の人たちにもっと大きな幸せをもたらすことを期待したい。
 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする