金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(伯爵)10

2022-12-04 08:40:47 | Weblog
 アリスが仲間達に告げた。
『決着をつけるわよ』 
 全員異議なし。
一斉に急降下した。
途中、ハッピーが主張した。
『プー、ワイバーンは貰ったっぺー』
 言うなり、より速度を上げて機首をワイバーンに向けた。
敵を間近にして話し合う余地はない。
アリス達は黙認するしかなかった。

 ハッピーがダンジョンスライム魔法を起動した。
エビスの口の、両端の牙が魔力を帯びた。
選択したのは氷槍・アイススピア。
続けざまに四連射。
狙った箇所は後頭部。
 ワイバーンは暗殺者達の相手で、手一杯であった。
何しろ奴等は蛙の様に跳び、斧で一撃を入れて来るのだ。
そのせいで上空の敵を放念していた。
後頭部に激しい衝撃を受けて、それと気付いた。
頑丈な外皮を破って何かが突き刺さった。
そのうちの二つの貫通を認識すると同時に、
ワイバーンは意識を手放した。

 アリス達も負けてはいない。
身体強化済みの暗殺者達を強襲した。
巫の女も覡の男も差別せず、平等に、妖精魔法で一撃。
たまに躱す奴もいるが、それはそれで面白い。
手応えのある奴、大歓迎。
弄ぶ様に手足を削ぎ、仕留めた。
一人として逃さない。

 アリスは真っ先に高々度に上がった。
周辺の探索を行う。
騒ぎに気付いた魔物達がいるが、こちらに接近して来る様子はない。
派手に攻撃魔法が放たれているので、慎重を期しているのだろう。
次々に仲間達が合流して来た。
『暗殺者と聞いたけど、あの程度なの』
『だって所詮、人間でしょう』
『幾ら鍛えても人間は人間よ』
 最後にハッピーが来た。
『ポー、ワイバーンの魔卵、獲ったぞー』

 アリスは新たな指示を出した。
『二人一組になって仕上げるわよ。
始末するのは教団の役職者、巫覡の男女。
全て終えたらお宝物を押収して』
 一人の妖精が疑問を呈した。
『皆殺しじゃなかったの』
『予定変更よ。
幾つかの棟に子供達が収容されてるの。
宗教二世と買われて来た奴隷よ。
未成年ばかり。
そんな子供達の生存の為に、悔しいけど、
役職に就いてない下っ端信者を残すわ』

 アリスを残してハッピーを含めた十機が再び急降下した。
二人一組になって散開した。
各建物の上を周回飛行。
鑑定して、獲物を探した。
見つけると躊躇わない。
攻撃魔法で建物に穴を開け、標的を始末した。
 あちこちの建物に穴が開き、悲鳴が上がる。
臆病な者や姑息な者、先が読める者は、
息を潜めて事態をやり過ごそうとしていたようだ。
それらを仕留めた。
 十機がお宝物の押収に取り掛かった。
各建物を鑑定し、見つけると再び攻撃魔法。
壁に穴を開けて飛び込む。
鍵なんて物は存在しないも同然。
それでも生き残りの為に食料品等々には手を付けない。
せめてもの慈悲だ。

 全てを終えて高々度に再度集合した。
『宗教の書籍も押収したけど、良いのよね』
『妄想や思い込みが詰まった本は押収の対象よ』
『そうよね、神は人の物じゃないわ。
創造主では有るけど、有象無象を相手にするほど暇じゃないわ』
『見た事も会った事もない神の言葉なんて紙の無駄遣いよ』
『そうよ神の無駄遣い、紙の無駄遣い、トイレに流すしかないわ』
『そんな不敬な物をトイレに流さないで。
トイレが怒って詰まるわ』
『火口に投げ込んで、お焚き上げするしかないわね』
『近くの肥溜めに投げ込んだ方が早いわよ』
『それ、腐るのが早そう、良い肥料になるかもね』
『じゃあ、それアンタにお願い。
この書籍の山を持ってって』
『嫌よ、面倒、私が腐るわ』
 ハッピーが解決策を述べた。
『ピー、それなら僕が貰うよ』
『あっ、そうか、スライムなら何でも溶かせるのよね』
『ピーンポンだっぺー』

 アリスは肝心な事を尋ねた。
『ところでお酒は』
 妖精は飲食を必要としないが、美味い物には目がない。
ちょっと嗜む。
たぶん、ちょっとだ。
『厨房から持って来たわ』
『私はドワーフの工房からね』
『錬金工房からもね』
『薬師工房からもよ』
 意外とあった。
厨房やドワーフの工房は貯蔵していただけで、
製造は錬金工房や薬師工房だろう。

 ハッピーが自己申告した。
『プー、麻薬や毒薬、麻痺薬なんかは僕が。
欲しい人は言って。
無料で譲って上げるっぺー』
 誰も手を挙げない。

 アリスが話題を変えた。
次の標的だ。
『この教団のお仕置きはここまで、良いわね。
企みの裏にはイドリス北条伯爵の関係者がいたそうよ
そのイドリス北条伯爵のお仕置きに向かうわ、良いわね』
『おう』『おう』『お仕置きよ』血気盛ん。
 応じてから一人が尋ねた。
『ところで、どこの人』
『東で反乱が起きているでしょう。
その首謀者の一人よ』
 別の一人。
『東は木曽までは行った事あるけど、その先は初めてよ。
アリス、アンタ道案内できるの』
 アリスが自信たっぷりに答えた。
『エビスには【地図、ナビ】が搭載されてるから大丈夫。
初めての場所は最初は白紙だけど、行く事によって追加されるの。
だから迷う事なんてないわ』

 アリスの言葉を信じてエビス飛行隊は一路、東に向かった。
その途中、妖精の一人が、領都・ブルンムーンを基点にしない、
と安全策を提案した。
木曽の領都だ。
アリスに否はない。
即採用。
木曽を目指した。
アリスは心が広いのだ。

 上空から見下ろすブルンムーンは賑わっていた。
特に門を出入りするキャラバンの多さには目を瞠った。
それだけ木曽の売り、魔物の部位や加工品が好まれているという証だ。
街中を行く者達の醸し出す空気を軽やか。
先の騒ぎが無かったかのようだ。
満足してアリスは飛行隊に号令を掛けた。
『さあ、行くわよ、全力よ』

 先頭を交代しながら全力で飛ばした。
方位は東北。
動力源である魔水晶が心地よいサウンドを奏で、空気を切り裂いた。
その動力源は二つ。
一つはキングワイバーンの魔卵を錬金して精製した魔水晶。
もう一つはクイーンワイバーンの魔卵を、同じく魔水晶とした物。
片方が高熱を帯びるや、もう片方が交替して主動力となる安全設計。
速度を緩める必要は一切なかった。

 どこまで来たのか分からないが、適当な所から高度を下げた。
見つけた村や町を探知と鑑定で調べる為だ。
それで位置を特定し、修正しながらイドリス伯爵の領地を目指した。

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