金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)6

2023-12-31 11:00:24 | Weblog
 王妃様が顔を上げられた。
気持ちを切り替えられたのだろう。
俺は立ち上がって弔意を表そうとした。
俺が口を開くより早く、王妃様に手で制された。
「気持ちは受け取るわ。
それよりも本題に入るわよ。
・・・。
問題は因幡の葬儀に誰を送るかよ。
私は宮廷を留守に出来ない。
政務から目を離すのが不安なのよ。
だから代理を送るしかないの。
ところが生憎、人がいないの。
それなりの人物がね。
王兄も王弟も反乱の真っ最中。
それに近い王族の者達もそう。
人材が払拭しているの。
・・・。
それで結局、私が向かうしかないのよ。
そこでダンタルニャンには、留守の間イヴを頼みたいの。
早くて十日、遅くても一ㇳ月で戻るつもりよ。
お願い、受けてくれるわよね」
 一ㇳ月なんて今更だ。
その予定で皆が動いていた。
近衛も、うちの者達も。

「子守は引き受けますが、政務は無理ですよ」
 王妃様が笑顔を浮かべられた。
「心配しないで、それは分かっているわ。
佐々木侯爵と細川子爵が表の仕事を代行してくれるわ。
だからダンタルニャンにはイヴに専念して欲しいの」
「承知はしますが、私は後宮に入れません。
その辺りはどうします」
「そこは大丈夫。
イヴを貴方達と同じ北館に移すわ。
既に部屋は用意したの、そうよねエリス」
 エリスが一歩前に出た。
「はい、同じ階に用意済みです。
お付きの侍女の方々や、メイドの方々が両隣になります」
「そういう事よ、ダンタルニャン」
「それであればお任せください。
しっかりお守りします」

 王妃様は俺からエリス中尉に視線を転じられた。
「ダンタルニャンには了承して貰えたわ。
エリス、分かっているわよね
貴女は北館の警備に専念するのよ。
その人員の手配は出来たの」
「はい、当初予定通りの騎士八十名を確保しました」
 王妃様はエリスに頷き、佐々木侯爵と細川子爵を交互に見遣られた。
「イヴの方はこれで万全です。
後は表の仕事です。
侯爵殿には評定衆と国軍の押さえをお頼みします。
子爵殿には政務の代理と近衛の押さえをお頼みします。
この振り分けに問題はないですわよね」
 二人は示し合わせたかの様に首を縦にした。
「「承知しました」」
 事前に深い所まで打ち合わせていたようだ。
どうやら、この場は俺の了承と、顔合わせが目的であったらしい。

 俺はカトリーヌを見遣った、
彼女の役目を聞いていない。
俺の目色からそれを読み取ったのだろう。
カトリーヌが俺を見返した。
「伯爵様、私は王妃様と共に因幡へ向かいます。
ですから留守をお願いしますね」
「承知しました」

 因幡へ向かうのは翌早朝と聞いた。
その夜は早く寝た。
そして朝早く起きた。
ところが俺より先に動いている者達がいた。
エリスと彼女の指揮下の騎士達だ。
何やら忙しく動き回っていた。
イヴ様を迎え入れる準備か。
 それを他所に俺は身支度を終え、王宮本館へ向かった。
勿論、うちの者達を引き連れてだ。
執事のスチュアート、メイド長のドリスとメイドのジューン。
護衛のユアン、ジュード、オーランド。

 王妃様の出立なので各所に立哨が置かれ、巡回がいた。
それより多いのは見送りの者達だ。
王宮勤めの文武官ばかりでなく、官庁勤めの者達も早起きして、
見送りに来ていた。
お陰で近衛は忙しい。
人出で混乱せぬ様に規制を行っていた。
事前の許可を受けていない者は、玄関や馬車寄せに近付けさせない。
 俺は身分をひけらかすのは好みではない。
黙って規制外から見送る事にした。
それにジューンが疑問を持ったらしい。
「伯爵様、前へ出ないのですか」
「僕は控え目なんだけど、知らなかったの」
「ええ、知りませんでした。
これまで嫌になるくらい目立ってましたから」
 隣のドリスとスチュアートが笑いを漏らした。

 王宮本館の玄関辺りが騒がしくなった。
警備の近衛兵がきびきびと走り回り、玄関前に馬車一輌を迎え入れた。
王妃専用車だ。
同時に馬車寄せにも四輌を止めた。
これらが因幡行きの車輌なのだろう。
 玄関前が騒がしくなった。
近衛兵の先導で大勢が出て来た。
中に佐々木侯爵や細川子爵の顔もあった。
二人は衣服が目立つので直ぐに分かった。
 ところで、王妃様はどこ、カトリーヌ殿はどこ、どこだと探した。
ああ、少し遅れて出て来た黒山の人だかりの中か。
それは近衛兵の隊列だった。
馬車に近付くと隊列が二つに割れ、中から女性騎士二人が進み出た。
昨日、王妃様御一行様は行軍隊列で因幡へ向かうと聞いた。
遠目にだがその女性騎士二人が王妃様とカトリーヌなのだろう。
佐々木侯爵と細川子爵が二人に歩み寄った。
丁寧に話し掛けた。

 玄関前を発した王妃専用車に、馬車寄せの四輌が続いた。
それを見送る俺の勘が・・・、勘が俄か騒いだ。
違和感が・・・。
それは・・・、どこに違和感を覚えたのだろう。
あっ、あれか。
王妃様は馬車に乗り込む際、通常は細川子爵にエスコートをさせる。
次点はカトリーヌ殿だ。
ところが今回はエスコートがなかった。
・・・。
導き出された答えは・・・。

 俺は鑑定を起動した。
エリアを広げて王妃専用車を追跡した。
間に合った。
エリアから外れる前に全員を鑑定できた。
馭者も含め、全員女性騎士だった。
肝心の王妃様もカトリーヌ殿も乗車していない。
 イリュージョンか。
乗ったと見せかけて反対側から抜け出た、あるいは床から。
しかしあんなに大勢が見守る中でのイリュージョン、成立しない。
それにだ、そもそも意味はあるのか。
 消えた二人はどこに、どんな手段で、してその理由は。
・・・。
侯爵、子爵、近衛の三者はグルだと推測できる。
となると当初から、出立段階からの影武者起用。
それ相応の理由があるのだろう。
それは・・・。

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