「習近平に逮捕状を請求できる」と世界市民裁判所が認定 法的拘束力はないが、中国の弾圧に苦しむ人々の救済に向けて意義ある一歩
2024.07.19(liverty web)
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今回の「民衆法廷」の様子(画像は世界市民裁判所のYouTubeよりキャプチャ)。
オランダ・ハーグに拠点を置く世界市民裁判所は12日、「民衆法廷」を開き、中国の習近平国家主席に対して「チベットにおける人道に対する罪」「新疆ウイグル自治区におけるウイグル人に対する大量虐殺(ジェノサイド)」の罪」で有罪と認定し、逮捕状を発行した。
民衆法廷とは、非政府組織(NGO)や市民団体などが行う模擬裁判のこと。今回、主体となった世界市民裁判所は「準司法機関」という位置づけのため、判決や逮捕状に法的拘束力はないが、弁護士などの法律の専門家が、国際法や、収容所の生存者など被害者の証言に基づいて審理し、「習近平氏に逮捕状を請求できる十分な法的根拠がある」と結論付けたことは大きな意義がある。
習政権のチベット・ウイグルでの残虐行為は「人道に対する罪」
本法廷は、戦争犯罪問題担当の元米国特使のスティーブン・ラップ氏、南アフリカ憲法裁判所元判事のザック・ヤクーブ氏、スリランカの弁護士で国際法の専門家のバヴァニ・フォンセカ氏などが担当し、4日にわたり習氏の容疑を審理した。
検察側は、習政権がチベットで広範にわたり数多くの寺院を破壊し、100万人以上のチベットの子供たちを強制移住させる「植民地的寄宿学校」で、チベットの言語や伝統を排除する同化政策を行っていると指摘。法廷はこうした「児童の強制送還」「投獄」「迫害」などが人道に対する罪に当たるとして、2~4の罪状を認定した。
ウイグルについては、大量の拘留キャンプが地域全体に設置され、そこで人々が目隠し・殴打され、食事や睡眠さえも奪われるなどのひどい拷問を受け、強制不妊手術まで行われている実態が紹介される。こうして「ジェノサイド」「拷問」「強姦や不妊手術」「強制労働」など、人道に対する罪を含む5~12の罪状を認定した。
このような実態は、数多くの当時者らによる証言から明らかにされていった。あるチベット僧侶はチベットから強制的に追放された経緯を語り、中国当局に少なくとも3回は投獄された経験を持つ映画製作者は、チベットの言語と文化を完全に根絶しようとする習政権の取り組みを強調したという。強制収容所から生存したウイグル人女性は、鎖でベッドに繋がれ拷問を受けたことを詳細に証言した(7月15日付米ラジオ・フリー・アジア)。
なお、中国の「台湾侵略容疑」については「国際法の定義ではまだ侵略行為は行われていない」としながらも、台湾の国家としての自決権を肯定し、中国の軍事的エスカレーションは不当であり、今後の動向次第では違法になる可能性があるとした。
これら一連の証拠・証言に基づき、裁判所は「習氏のような高位の指導者を訴追するのは複雑な問題が伴うが、国際法上、容疑を認めざるを得ない」と結論付け、国際社会に判決を支持するよう求めた。
偽の裁判停止命令など数々の妨害工作
今回の法廷を開くにあたり、市民裁判所や関係者は多くの妨害を受けた。あるウイグル人活動家は証言の2日前、メッセージアプリ「テレグラム」を通じて中国警察から連絡があったと述べている。警察は活動家の兄に対しても、法廷に出席しないよう伝える音声メッセージを残させたという。
また、あるイギリスの法律事務所からは「このイベントはいかなる司法当局からも認可されていない違法な裁判を行っている」として裁判の停止を命令する書簡が届いた。だが、その書簡の送り主の弁護士は実在しなかった。そのほか、ボランティアを装ったスパイが、他のボランティアやスタッフに対してこの仕事を辞めるようそそのかしたという。
世界は中国の非道な人権侵害を許してはならない
今回の判決は法的強制力がないとはいえ、模擬裁判という形で国際法と被害者の証言に基づいて、専門家が審理した結果、習氏に対して逮捕状を請求できると結論付けたことは大きい。これは、仮に国際司法裁判所などが徹底的に習氏を訴追すれば、逮捕状を請求することも可能であると言える。
中国をめぐる民衆法廷はこれまでも行われてきた。2021年には、イギリス人弁護士が率いる独立民衆法廷「ウイグル法廷」が、「中国がウイグル人らに対してジェノサイドを行っており、その責任は習氏をはじめ中国共産党の高官にある」と認定。この時、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「政府から独立した準司法機関がこうした判断を下したのは初めて」であり、「この結論は歴史的だ」と評価している(2021年12月13日付WSJ日本語版)。
今回、さらに踏み込んで習氏は「犯罪者である」という結論を下し、「逮捕状」をも発行したことは、一歩前進だと言えるだろう。
世界市民裁判所をめぐっては、23年2月にロシアのプーチン大統領をウクライナへの「侵略罪」で起訴し、逮捕を要請、その1カ月後に国際刑事裁判所が実際に逮捕状を発行した、という経緯もある。内容そのものについては議論の余地はあるが、一定の影響力を有していることは確かだ。むしろ、ウクライナでの虐殺が定かでないロシアと比べ、習氏率いる中国共産党によるウイグルでの虐殺行為は多くの証拠・証言によって明らかになっている。にもかかわらず、習氏に対し未だ法的措置が取られていないというのは筋が通らない。
国際社会はこれまで何度も、習政権の人権弾圧を非難してきているが、具体的な対抗措置は取れておらず、弾圧を食い止めることもできていない。政治的・経済的なつながりを放棄しきれない国も多い。
だが今回、民衆法廷が逮捕状を発行したことは画期的な"判例"である。今こそ国際社会は、習政権の残虐行為を止めるべく徹底的に追及し、チベットやウイグルの苦しむ人々に救いの手を差し伸べるべきだ。これ以上、中国の非道な人権侵害を放置してはならない。
【関連書籍】
『習近平守護霊 ウイグル弾圧を語る』
大川隆法著 幸福の科学出版
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