2019年を「経済」で読み解く 世界中で株価下落のワケ【寄稿・幸福実現党 及川幸久】
2018.12.26(LIVERTY WEB)
《本記事のポイント》
- 世界の主要株式市場で、株価が下落している
- 2019年は、仮想通貨恐慌や、中国と手を結んだ大手銀行による自滅が予測される
- 日本では強烈な円高が起こり得るが、円安で儲ける経済戦略からは卒業すべき
日経平均株価が急落し、約1年3カ月ぶりに2万円台を割り込んだ。国際情勢が大きく揺れ動く現代において、どのように世界経済を読み解くべきだろうか――。幸福実現党外務局長の及川幸久氏による寄稿を掲載する。
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2018年もあと数日という中で、世界の株式市場で株価下落が止まりません。
その背景にあるのは、不安定な世界情勢です。まず、来年3月のイギリスのEU離脱、ブレグジットですが、イギリスとEU間の合意事項がイギリス議会で可決できそうにない状況です。このままいくと「合意なき離脱」、いわゆる"ハードブレグジット"になり、リーマン・ショック級の混乱になると言われています。
EU内では、フランスでの反マクロンデモが止まらないどころか、パリから地方都市に広がろうとしています。
さらに、EUの不安定要素の一つであり、これまでにも何度かIMFの救済を受けてきたイタリア経済も、再び悪化しつつあり、これ以上の救済を受けられるのか定かではありません。
一方、絶好調のアメリカ経済については、来年からリセッションに入るという見方が唐突に浮上し、インフレ懸念で利上げを続けていた「米連邦準備理事会(FRB)」が、来年の利上げをしないという方針修正を示唆しています。
そして、日本ですが、内閣府の発表では「今回の景気回復は、いざなぎ景気を超えた戦後2番目の長さであり、戦後最長をうかがっている」とのことですが、今年7-9月期のGDPはマイナス2.5%という結果になり、株価を押し下げています。
世界の主要市場の雲行きがあやしい中で、来年2019年の大混乱の引き金になりそうな現象がいくつかあります。ここでは、3つ挙げてみます。
仮想通貨バブル崩壊
まず、仮想通貨バブルの崩壊です。
仮想通貨の代表であるビットコインですが、昨年12月をピークに下落し続けています。ビットコインの日本円の価格は、昨年の12月の240万円近くから下がり始めて、11月には40万円台まで急落。約80%の下落です。
そもそも「仮想通貨」とは何でしょうか?
仮想通貨とは、コンピューターネットワーク上の、「暗号の技術」で出来ているバーチャルで実体のない通貨です。日本では「仮想通貨」という名前になっていますが、元の英語ではCrypto currency。「暗号通貨」という意味です。
Suicaのような電子マネーやカードポイントと似ていますが、Suicaは1000円チャージしたら1000円分の価値であるのに対して、仮想通貨は、需要によって価格が変わるのです。FX投資で円の為替レートがあるように、仮想通貨の為替レートがあるのです。
では、なぜ仮想通貨が現れたのでしょうか?
その原因は、今から10年前のリーマン・ショックでした。この時の大混乱で、ドルを基軸通貨とする金融システムが、実は脆弱だったことが暴露され、ドルに代わる「世界統一通貨」のようなものとして、ビットコインが作られたのです。
ところが、既存の金融システム以上に脆弱で、ボラティリティ(価格変動)が激しく、ビットコインを1億円分買ったら10億円になるというような「投機」が起きていました。価格の急落によって投機商品としての価値を失った今、金融業界の中では、ビットコインの役割は終わり、消滅に向かうのではないかという意見も多くなっています。
ただ、ここで気をつけなければならないのは、「仮想通貨バブルの崩壊」が、第二のリーマン・ショックを引き起こすのではないかという懸念です。
リーマン・ショックは、サブプライムローンという実体のないものへの投機が引き金となりました。ここ数年で時代の寵児となっている仮想通貨も、実体のないバーチャルなもの。価値の実体を持たない商品への熱狂は、経済に大きなダメージを残す可能性が高いと言えます。
中国に近いゴールドマンサックスの汚職事件
来年の混乱を引き起こし得る現象として、次に挙げられるのが、ゴールドマンサックスの汚職事件です。
ニューヨーク・ウォール街を代表する投資銀行であるゴールドマンサックスの株価のチャートをご覧ください。
この株価下落の背景には、ある疑惑があります。それは、ゴールドマンサックスが、マレーシアのナジブ前政権が始めた政府系ファンド「1MDB」の汚職事件に関わっているというものです。
ナジブ政権は中国との関係が深く、このファンドにも中国の融資が流用された可能性があると指摘されています。中国とズブズブだった前政権を破って首相に返り咲いたマハティール氏は、一転して反中路線。中国政府との関係を見直しています。その一環として「1MDB」の実態解明や責任追及を続けており、汚職に関わったとされるゴールドマンサックスに対しても、ファンドの手数料返済を要求しているのです。
マレーシア政府が、ウォール街の大手投資銀行に強気で迫れるのは、バックにトランプ政権がついているからです。
トランプ政権は中国と貿易戦争を行っている最中です。その中国と長年組んで、大儲けをしてきたのが、ウォール街であり、その中核がゴールドマンサックスです。今、市場では、ゴールドマンサックスの倒産すら噂されています。トランプ政権は、たとえアメリカを代表する金融機関であっても、中国に関係した違反は徹底的に正す姿勢だということです。
ドイツ銀行と中国の怪しい関係
もう一つ、ヨーロッパでは、ドイツ最大手の金融機関、ドイツ銀行の倒産がささやかれています。
ドイツ銀行の株価は、以下のチャートのように、すでに10ユーロを切って、売り叩かれています。
ドイツ銀行の株価暴落の原因も中国です。
昨年、中国の大企業である海航集団が、ドイツ銀行の筆頭株主になりました。海航集団は、莫大な資金力で世界の企業を次々と買収している、中国共産党系の複合企業です。
その海航集団が最大株主となったドイツ銀行は、ここ数年経営危機がささやかれていました。そんな中で、ドイツ銀行とデンマークの最大手銀行が関係した「マネーロンダリング(資金洗浄)」事件が勃発したのです。
マネーロンダリングとは、簡単に言えば、金融機関が扱えない不法なお金を、法の網の目をくぐって、まともなお金に変えるという犯罪行為です。
ドイツ銀行は、経営が苦しい中で、それに手を出した可能性があるというのです。その額が、実に2,340億ドル(約26兆円)。それも、ドイツ銀行のアメリカの支店を通してマネーロンダリングを行ったので、トランプ政権が捜査に入っています。もしかすると、ドイツ銀行は、アメリカ市場から締め出され、ドルという基軸通貨を扱えなくなるかもしれないという懸念も浮上しています。
巨大な金融機関であっても、株価が10ユーロを下回ったということは異常であり、市場からの退場を意味しています。株価下落に加えて、ドルが扱えなくなれば、銀行としての存続も危ういでしょう。
日米貿易協議による「超円高」
年末にネガティブな話ばかりになってしまいましたが、ネガティブついでにもう一つ、来年1月から「日米貿易協議」を引き金に「円高」が予想されています。
トランプ政権は、対中国と全く同じように、日本に対しても、アメリカから儲けている貿易黒字を減らすことを強く求めています。日本に対する赤字額は、688億ドル(約7兆7千億円)という巨額なものです。
トランプ政権のムニューシン財務長官は、先月、アメリカの貿易赤字をなくすためには、為替レートの変更もあり得ることを明言しました。
先週は、アメリカ側の交渉担当の「米国通商代表部(USTR)」が、1月からの日米交渉の項目に、為替を入れることを発表しました。
関税をかけても、輸出を増やしても、貿易赤字を減らせない場合、最後の手段となるのは為替レートの大幅変更です。日米貿易の場合は、「ドル安・円高」になるということです。それも、「超円高」が予想されます。
安倍政権が最も恐れているのが、この円高です。円高はすなわち株価下落を意味するからです。リーマン・ショックの直後にも、1ドル=100円割れの円高が起きました。
「輸出で稼ぐ」経済から「円高でアジア経済を助ける」経済へ
近年、日本だけでなく、中国も、韓国も、EUも、自国通貨を弱くして、輸出で稼ぐ経済に依存してきました。
しかし、円安を利用して輸出で稼ぐというのは、発展途上国の発想です。
私は、日本はそろそろ先進国の意識を持って、強い円によって途上国のモノを買い、経済発展を助けるべきではないかと思うのです。
円高のメリットは、石油や天然ガスをはじめ海外からの輸入品が安くなることです。また、アジア諸国の製品を買い、アジア市場を発展させることで、日本は世界に良い影響を与えることができます。
2019年に、トランプ政権の厳しい姿勢によって日本は円高に追い込まれるかもしれません。しかし、それは決して悪いことではなく、強い円で世界のリーダーシップをとるきっかけになるかもしれません。
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筆者
及川 幸久
(おいかわ・ゆきひさ) 1960年生まれ。上智大学文学部、国際基督教大学行政大学院修了。米メリルリンチ社、英投資顧問会社勤務を経て幸福の科学に出家。2012年より幸福実現党外務局長を務める。YouTubeに「及川幸久のトランプ・チャンネル」、Twitterでは「トランプ和訳解説@及川幸久」を開設し、トランプ情報を伝えている。著書に『あなたも使いこなせる トランプ流 勝利の方程式 ―考え方には力がある―』がある。