東電に11億円の賠償命令 16万人以上の生活を奪った政治家の責任を問う
2018.02.08(liverty web)
《本記事のポイント》
- 福島原発事故による避難生活をめぐり、東電に約11億円の賠償命令
- 当時の菅政権は、避難が必要ない16万人以上を強制退去させた
- 誤った判断をした政治家は、11億円以上の責任を感じているか
東京電力に約11億円の賠償支払いが命じられた。
2011年の福島第一原発の事故による周辺住民の避難において、ふるさとの暮らしを奪われて精神的苦痛を受けたなどとして、避難指示区域となった福島県南相馬市小高区の元住民ら321人が東電に総額約110億円の賠償を要求。2014年12月に提訴されたこの訴訟について東京地裁は今月7日、訴えの一部を認め、原告318人に対して1人当たり330万円、総額約11億円の支払いを命じた。
一律「20キロ圏内」に合理性はあったのか
一連の原発事故をめぐって、東電だけに責任を負わせるような状況が続いているが、本当にそれでいいのだろうか。
事故直後、当時の民主党の菅直人政権は、福島第一原発から半径20キロ圏内の人々に避難指示を出し、強制的に退去させた。
実は、この20キロ圏内のほとんどの地域は、年間の被爆線量が20ミリシーベルト以下で、東京などと変わらない低い線量の地域もあった。にもかかわらず、菅政権は事故から1カ月以上経って、改めて20キロ圏内を「警戒区域」とし、立ち入りを禁じた。これにより、住民は住み慣れたふるさとから引き離された。
地元の復興の取り組みに力を入れる、NPO法人「つながっぺ南相馬」の理事長・今野由喜氏は、本誌2014年4月号の取材に対して、「同心円状にコンパスで線を引いただけでしょ? なんら合理性がありませんよ」と語っていた。
人体に害を与えない「20ミリシーベルト」で避難
さらに、菅政権は原発から20キロ圏外で年間20ミリシーベルトを超える恐れのある地域を「計画的避難区域」に指定し、人が住めない地域とした。
しかし、この「年間線量20ミリシーベルト」という数値も、人体に害を与えないレベルだ。
国立がん研究所によれば、一度に1000~2000ミリシーベルトを被ばくした時の発がんリスクは、「習慣的に喫煙や大量飲酒をする」人と同程度、500ミリシーベルトを一度に浴びたときの発がんリスクは、「運動不足」の人程度に過ぎない。また、100ミリシーベルト以下では、発がんリスクを検出するのが極めて難しいという。
誤った判断をした政治家は、11億円以上の「責任」を感じるべき
「20キロ圏内」や「年間線量20ミリシーベルト」など、本来、避難が必要のない数値により、ピーク時には16万人以上が避難を余儀なくされた。震災から7年近く経つ今なお、県外に避難している福島県民は3万4千人以上いる(1月16日時点)。
当時、政権の中枢を担っていた菅首相や枝野幸男官房長官、細野豪志環境相は、現在、立憲民主党や希望の党の議員として政治家を続けている。もしかすると、彼らにとって震災はすでに遠い記憶なのかもしれないが、誤った判断によって数多くの不幸を生み出した責任は、改めて問われるべきだろう。
11億円の賠償金を支払うのは東電だが、それとは比べ物にならない程の重い責任が、政治家の判断にかかっていたということを、忘れてはならない。
(片岡眞有子)
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