天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

触発されてできた一句

2023-10-07 13:01:43 | アート

滑莧


太陽は轟音に燃ゆ滑莧 小川軽舟

2023年鷹5月号に「いかに言葉を制御するか」なる岸本尚毅と小川軽舟の対談があり、ここで岸本さんがこの句に注目して以下のように述べている。
岸本:「轟音」という言葉に感心しましたね。ふつう太陽というのは音もなく激しく燃えているものだと捉えると思うんですが、その「音もなく激しく」というところをあえて裏返しにして「轟音」という言葉を使われたところが、腕っぷしが強いなと思います。
「滑莧」に関しては、『朝晩』に「埋め立てて育つ港や滑莧」という作品があって、多分、小川さんにとっては滑莧は自家薬籠中の季語の一つなんだろうなと想像したわけです。
「太陽は轟音に燃ゆ」はとても難しいフレーズですが、そこで、「滑莧」という、とても無造作で、地べた、地面を感じさせるような草を持ってきた。それは自家薬籠中の季語を自分なりにしっかり理解した上で取り合わせて、太陽の轟音という難しいものを受け止めたんだと。
これに応えた小川軽舟のコメントが以下。
小川:「太陽は轟音に燃ゆ」は、太陽は燃えているから「燃ゆ」は言えるとして「轟音に」というところを読者がどう受け止めてくれるかは作った時点では分からなかった。今、それぞれの言葉の働きを分解して読んでいただいて、自分でもやっと分かった気がします。

岸本さんの当を得た句評に対して、鷹主宰の反応が実に謙虚。確かに新しい領域に踏み込んで言葉を使うときそれがうまくいっているのか否かは実作者としては雲を踏むような思いになる。そうした初々しい思いを鷹主宰は隠さず出していて好感を持った。
この句に感銘を受けて小生も太陽を書きたいと思っていて浮かんだのが次の句である。
百日紅疲れを知らぬ日が昇る  わたる 
太陽はなぜ燃え尽きないのかなあ。俺は暑さで汗を流してへとへとだぜ。雨は降らないし明日もまた日が元気で出てくるのか、とうんざりする夏の暑さ、長さであった。それで「疲れを知らぬ日が昇る」は、さっと出た。さて季語はと思い、いったんは「滑莧」を付けようかと心が動いた。が、「滑莧」は岸本さんが言うまでもなく主宰が懐にいれた季語なのである。
プロレス界で大物の得意技は使ってはならぬという暗黙のルールがある。例えば武藤敬司のシャイニング・ウィザードや三沢光晴のエメラルド・フロウジョンなどがそれ。そこそこのレスラーなら誰でもできるが大物の決め技に余人は手を出さぬ。
小生も暗黙のルールを守り、普遍的な季語「百日紅」を置いた。この句に「滑莧」を付けて掟破りで出したとき鷹主宰が拒否したとは思わないが聖域へ踏み込まなかった。それが投句者と選句者とのスリリングな関係といえる。
鷹主宰は小生の太陽にまつわる句は以下のように多々採っているが、「百日紅疲れを知らぬ日が昇る」を特選として最高級の評価をした。

小生のほかの太陽がらみの句。
日の光尖つてきたり蝌蚪に足
天つ日ににこにこ応へ泉なる
雲表に朝日遍しちんぐるま
海の上に剝出しの日や沖縄忌
海の面に夕日膿みをり仏桑華
馬鈴薯の散らばる地平日が沈む


百日紅


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1 コメント

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Unknown (伊勢史朗)
2023-10-12 18:16:39
太陽は轟音に燃ゆ滑莧 小川軽舟

この句を見た時に小川軽舟さんは大きな結社の代表で蛇笏賞も受賞する方なのに肩の力を抜いて作句されるなぁと思いました。俳句の言葉遊びを素直に楽しんでいらっしゃる。だから「轟音」なんて言葉を斡旋できたのでしょう。
それに対して
百日紅疲れを知らぬ日が昇る 天地わたる

は確かに素晴らしい作品だと思います。ただ、軽舟作と比べるとどこか「俳句の為に書いた俳句」という印象が拭えませんでした。もちろん「俳句の為に俳句を書く」という行為は結社に所属している方には大まかに見られる傾向なので天地さんだけがという訳でもないですが。
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