天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

中山七里 『特殊清掃人』

2024-08-11 05:16:46 | 
    
     2022年/朝日新聞社刊


題名に惹かれて手に取った。読書メーターからShihoTasakiさん、みどりさんのコメントを引く。
【ShihoTasaki】
その名の通り、特殊な清掃を請負う清掃人が死の真相を解明していく話。いわゆる事故物件と言われる、殺人、自殺、自然死などの遺体があった部屋の壮絶な状態の描写がささる。死臭や蛆虫、染みこんだ体液、病原体……無理すぎる。 話には聞いたことがあっても、具体的に仕事内容を垣間見ると想像を絶する大変な仕事だ。オムニバス形式だが、読み応えがあって面白い作品だった。
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オムニバス形式で
① 30代独身女性
② 40代ベンチャー企業家
③ 20代無職男性
 ④ 80代資産家
の4人の死亡の事例が展開する。

【みどり】
何日も放置された腐乱死体の後の描写が、年齢、性別さまざまに関わらず、同じように、溶けてバラバラになり、液体が漏れ出して、まわりに染み込んでいく。 大自然にあれば土に返って行くところが、人間というものは自然から相反したところに生きるが故、こんなにも死して周りを汚す。死体を食べてくれるのは蛆と細菌なんだな。それを片付けてくれる、清掃業者さんに尊敬の念。五百旗頭さんの、理想の上司っぷりが爽やかで良いバランス。 
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五百旗頭(いがらき)は元警察官。みどりさんが彼を「理想の上司っぷりが爽やか」と評するように、部下への言葉かけには深みがあり、作品を分厚くしている。
農家で育った小生は肥溜めをよく見たし、そこへ運悪く落ちた人を見たこともある。糞尿には無数の白い蛆が湧いて汚さの極致のように思っていた。が、この作品を読むと人の体が分解してゆくときの糞尿などまだまし、という気がした。
40代ベンチャー企業家の男が風呂で死んで加熱されてシチューになった、という表現は簡潔にして凄みがある。刑事小説のようにどんでん返しがあるわけではないが、遺体が腐敗してどうにもならぬように染み込んでくる内容。抜群におもしろい。

コメント
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